ピーポじゃないよ!ヴィーヴォだよ!_2
2018/10/16
ブラジルの通信最大手のヴィーヴォの話の続きです。
前回はヴィーヴォの業績について話しました。固定線事業が伸び悩むもののモバイル事業では今後数年は売上げを伸ばせそうだと述べました。
今回はブラジルテレコム市場について話し、その後でヴィーヴォへの投資の注意点について話します。
の記事(一部)です。投資は自己責任で行って下さい。
記事全文をご覧になりたい方は「アボマガ」にご登録下さい。当記事のブログ公開日から早めにアボマガにご登録されると、期間限定サービスとして全文がメール配信されます。
伸び代が十分あるブラジルテレコム市場
ブラジルのテレコム市場について少し見ていきます。まずは一番重要なモバイル契約者数についてです。
ブラジルのモバイル通信契約数は2008年以来大きく伸びてきましたが、2015年に伸びがほぼ止まりました。2016時点のモバイル通信契約数は延べ1億8300万人ほどで、下図を見る限り伸び代はなさそうです。
ヴィーヴォは2008年以降営業キャッシュフローを大きく増やしてきましたが、モバイル通信契約者獲得で簡単に収益を伸ばすことができたためです。今後は収益を増やすには1人あたり毎月の利用料(ARPU)を増やすしかありません。
移動通信システムはこれまで2G、3Gが主体でしたが、2013年に4Gが登場して4Gがシェアを伸ばし、2017年にシェアでトップに躍り出ました。しかし2Gと3Gの合計には及んでおらず、まだまだ4Gへの移行の余地は残されています。2020年でも4Gのシェアは6割にも満たない見通しです。
よって、ブラジルのテレコム企業は4Gへの契約者数を増やし、データ通信量を増やして稼ぐことが鍵です。
ヴィーヴォは既存顧客の4Gへの移行がスムーズに進んでいるだけでなく、4Gエリアの広さや高速性で顧客満足度も非常に高いですから、他社の顧客を奪って成長する余地も残っています。
顧客を増やして業績を伸ばすことが簡単ではなくなっているブラジルのモバイル事業環境において、ヴィーヴォは非常に良い位置にいることになります。
固定線に目を向けると、ブラジルは100人のうちたった13人程度しか接続していません。中国やロシアにも大きく遅れをとっており、世界平均よりも少ないです。
理由としては、ブラジル人のコンピュータスキル不足、インターネット接続機器が高価であること、ブロードバンドインフラの普及が遅れていることがあげられます。
100万人を超える人口の都市ではブロードバンドは普及していますが、ブラジルの5570の都市のうちたった300都市、全体の5%しかありません。
よって固定線市場の伸びは今後も緩やかになりそうです。しかし長期的にはブラジルもICTサービスの普及やそれに伴うスキルの増加、接続機器の価格低下、ブロードバンドの普及も進むでしょうから、ブラジルの固定線ビジネスは長期で上向くでしょう。
このように、モバイルでも固定線でも、ブラジルは今後中長期的に市場が拡大する余地が十分残されています。
さらにブラジル政府も、ブラジルのICT分野強化に前向きのようです。"Brasil Eficiente"(「効率的なブラジル」という意味)というプログラムを掲げ、ICTを利用した行政(市民管理、租税など)、社会保障、教育、経済の強化を目指しています。
ブラジルは資源国としてこれまで経済を成長させてきましたが、資源の主要輸出先である中国では固定資産投資の減少傾向が止まりません。
中国が労働人口の減少と「投資→消費」への経済の転換が進む中で、中国の資源輸入がいままでのように伸びることは考えにくいです。
ブラジルも経済成長のためには資源依存をさらに減らし、他国と同じようにAIやビッグデータ分析等を利活用して、生産性の高い経済を構築する必要に迫られています。
ブラジル政府の計画がスムーズに進むとは思いません。とはいえ、ブラジル政府がICT普及に前向きであることは確かですので、テレコム企業はブラジル政府の協力も得ながら事業を拡大できるのだろうと思います。
総じて、長期的にはブラジルのテレコム業界も大きく成長していくことでしょう。
ヴィーヴォの課題
ヴィーヴォのビジネス面とブラジルのテレコム市場についてみてきました。ブラジルテレコム市場の最大の契約者数を誇り、高速回線の整備で顧客満足度を高め、今後のブラジルテレコム市場の成長余地も十分あり、ヴィーヴォの将来は明るいように見えます。
ヴィーヴォは債務も減らしており、半年で借入は20億レヤル減少しました。4G、4G+、光ファイバー、その他ICTインフラに現在でも設備投資しているなかで、上手く財務を改善できています。
こうしてみるとヴィーヴォは長期投資対象として良さそうにも見えます。
しかしヴィーヴォは本格的に事業をスリム化する必要があります。
(いろいろと省略...)
さらに、ヴィーヴォの収益はすべてレアルなので、ドル高レアル安が進むとドル建てでは減配となります。
為替変動は一時的要因なのであまり気にしすぎるのも良くはありませんが、2019年までFedの金融引き締めが続きそうで米国の金利も上昇傾向なので、まだまだドル高レアル安が進みやすい状況と考えられます。
よって、もう1-2四半期期ほど、ドル高レアル安がもう少し進むのを待ってからヴィーヴォの購入を考えるのは一つの考えです。
ただ、ヴィーヴォは時折新株発行することがリスクとして常に付きまとうことは覚えておいてください。
米国証券口座で長期投資。日本よりも圧倒的に安い手数料で世界中の株式に投資できます。最近、Firstradeの取引手数料が完全無料となりました。
関連ページ
- ハイパーインフレ、基軸通貨の崩壊が株式に与える影響
- COVID-19ワクチンの早期普及と量的緩和の拡大・拡充を期待する強欲な市場
- 「ピークオイル」は需要減ではなく老朽化・投資不足による供給減を指すことになる
- 市場は「Going To トラブル」?
- 機会を掴むには準備が肝心
- 「世界大恐慌×株高」というシナリオ
- 相場の終焉間際:コロナ禍で暇を持て余した素人投機家が市場に参入
- 米上場廃止?中国株ADRの行方
- 経済V字回復は厳しいが、金価格はV字回復
- 超高配当利回りとなった石油メジャー株
- 株価暴落時に守るべきたった一つのルール
- COVID-19が石油需給に与える影響を考える
- 2020年、ドットコムバブル崩壊前後との類似点
- アボマガで紹介した2銘柄のレビュー
- アボマガで紹介している銘柄
- 「長期配当再投資+貴金属投資のハイブリッド戦略」
- 何故、金強気相場はこれから本気出すのか:マイナス金利、為替ヘッジ
- ターニング・ポイント
- ホルムズ海峡封鎖?短期的なエネルギー価格見通し
- 2019年、来るか、金融ショック
- バブル崩壊は自分で気づく必要があるもの・輝きを増すゴールド
- 鮮明さ増す高インフレの流れ
- 有事の金
- 低リスク高リターンが見込める石油銘柄
- 見えない爆弾だらけの原油市場。目先にとらわれてはならぬ
- 備えあれば憂いなし
- アルゴリズム取引の本格的な暴走までそう遠くはない?
- 中期的安定性の高い石油銘柄
- 原油価格は本当に、気分屋で困りますね(笑)
- 金価格は底打ち反転?不透明な将来への保険としてのゴールドの価値は増すばかり
- ピーポじゃないよ!ヴィーヴォだよ!_2
- ピーポじゃないよ!ヴィーヴォだよ!
- 割安なタバコ銘柄を探す
- ESG投資:社会問題を相場吊り上げに利用する
- 日銀量的金融緩和はすでに瀕死、その先に待ち受ける「超円安」
- 「超円高」に期待しすぎてはいけない
- 消えかかるドル高材料、近づく金購入「ラストチャンス」
- 悪材料まみれになってきたテンセント_2
- 悪材料まみれになってきたテンセント_1
- 知ると知らずで大違い、配当再投資の隠れた特徴
- 配当再投資:雪だるま式に資産を殖やし残りの人生を謳歌する投資手法
- 人民元がゴールドにペッグしている??
- 「金価格の歴史的上昇トレンド」が新興国から始まる
- 米中貿易戦争勃発で米国株も怪しくなってきた。笑うのはロシア?
- SECメンバーが「米国株式相場のクラッシュ」を厭わない規制導入を提唱した
- 米国政府の税収の1/4、1/3が利払いで消える日
- 金価格の伸び悩みはレパトリ減税の影響?
- [2018/05/23]フラッシュクラッシュ時代、逆指値売り注文は自殺行為
- [2018/05/16]新興国市場に赤信号点灯、世界金融危機の幕開け?
- [2018/04/24]トランプが税制改革法案に埋め込んだ「マルウェア」
- [2018/04/02]米国の自国優先主義は海外の金持ちを惹きつける
- [2018/03/31]トランプは円安ドル高を許さない
- [2018/03/24]リーマン・ショックから始まった金融市場の「真の終わり」の規模
- [2018/03/17]新時代に向けて世界構造の破壊に本格的に着手し始めた米中
- [2018/03/07]トランプの鉄鋼・アルミニウム輸入関税の真のターゲットはどこだ!?
- [2018/02/28]物流、トランプ、中東、日銀...物価上昇・通貨減価懸念材料ズラリ
- [2018/02/07]2018年2月5日-6日、世界同時株安だと?
- [2018/02/03]144A for life -米国ハイイールド債市場を席巻する破滅的闇証券-
- [2018/02/01]金利上昇が止まらないー草
- [2018/01/24]米国経済が良くなると米国株相場はダメになる
- [2018/01/10]配当再投資のリスク低減効果:私のポートフォリオの結果を材料に
- [2017/12/29]2018年に向けて、金市場の動向をみる
- [2017/12/06]ビットコインバブル→電力消費・発電問題発生→バブル崩壊
- [2017/12/04]『金持ち父さんのこうして金持ちはもっと金持ちになる: 本当のフィナンシャル教育とは何か?』を読んでみた
- [2017/11/27]トランプによる世界金融市場の大粛清がいよいよ始まりそうだ
- [2017/11/23]トランプ税制改革は借り入れ依存企業への死刑宣告
- [2017/11/18]ボラティリティ・ターゲット戦略は株式・債券市場を一瞬で破壊する
- [2017/11/13]債券市場崩壊の初期段階がすでに現在進行中?
- [2017/11/01]IMFは世界の中央銀行として世界を支配したいのか?
- [2017/10/15]トータル・リターン・スワップの出現は第2のAIGショックの発生を暗示する
- [2017/10/03]MiFID2は世界金融危機を拡大させ、大陸欧州を自滅に導く破壊ツール
- [2017/08/26]世界金融市場クラッシュの予兆が見えた
- [2017/09/21]暗号通貨に国債市場、日本円が抱える内憂外患
- [2017/09/13]ドル離れの動きがFedの量的金融緩和政策再開を促す:その2
- [2017/09/12]ドル離れの動きがFedの量的金融緩和政策再開を促す
- [2017/08/24]日銀のETF買いは「貯蓄から投資へ」移行する家計を罠に陥れる
- [2017/08/20]中国のシャドーバンキングスキームの崩壊はすでに始まっている
- [2017/08/16]つみたてNISAのみの利用での長期資産形成は難しい
- [2017/08/02]「金融の神様」がグローバル金融の崩壊を警告し続けている
- [2017/07/26]世界の大揺れが確実に近づいています
- [2017/07/13]「世界金融市場大揺れへのカウントダウン」は、すでに始まっている
- [2017/07/09]相変わらず「自身の出口戦略」にしか興味のない日銀・黒田総裁
- [2017/07/04]「悪徳」銘柄への投資こそ、年金運用には向いている...!?
- [2017/06/29]短期の変動に目を奪われすぎず、本当のリスクに焦点を合わせよう
- [2017/06/18]イエレンさん、本当にバランスシート正常化なんてできるの?
- [2017/05/18]備えはお早めに:ゴールドへの備えに適した期間は着実に減っている
- [2017/05/05]中国金融市況の悪化が米国株式市場の熱狂を生んでいる
- [2017/04/29]中国金融当局のレバレッジ是正勧告は世界市場を溶かすかもしれない
- [2017/03/07]FRBが3月利上げしそうですね。米国経済が回復していないなかで。
- [2017/02/25]インサイダーたちによる爆売りブーム...米国株式市場のバブルの宴のフィナーレが迫っている
- [2017/02/17]米国債しか頼れない日本、アジア国際金市場を着実に発展させている中国
- [2017/01/24]トランプ政権は米ドル・米国債に対する大胆な政策を画策しているかもしれない
- [2016/11/15]トランプの当選が市場に与える影響
- [2016/11/05]今後世界の株価が大きく下がることは時間の問題
- [2016/10/18]官製相場にかなり近づいた国債市場:日銀の八方美人的な振る舞いに潜む「テーパリング」への道