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トランプ政権は米ドル・米国債に対する大胆な政策を画策しているかもしれない

2017/01/24

 

 トランプ氏が米国大統領に就任しましたね。就任演説を聞いたり、ホワイトハウスのウェブサイトにあげられているトランプの政策などを見たりしましたが、その中で考えたことをメモしておきます。

 

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 トランプ大統領の政策で特に考えないといけないのは、やはり米国の経済面と財政面でしょう。

 

 まず経済面ですが、こちらは米国内での企業活動を優遇するような税制改革、規制緩和によって米国の雇用を生み出すと同時に、いままで垂れ流していた貿易赤字のトレンドを逆転させて貿易赤字の縮小、ないし黒字への反転を目指しているとみて間違いないでしょう。

 

 すでにトランプ大統領はTPP離脱の大統領令に署名し、今後はカナダ・メキシコとNAFTAに関する再交渉をする予定で、早速貿易問題に着手していきます。

 

 またイギリスのメイ首相とも首脳会談をする予定で、貿易に関する非公式の話し合いをするものと見られます(ただEUがイギリスに対して、貿易協定に関する公式の交渉はEUに加盟している間はできないぞと釘を刺しているので、こちらは短期間では上手く行かない)。

 

 いずれも米国との貿易で利益を得てきた国々ですから、トランプも強気で米国に有利な交渉を進めることでしょう。トランプ政権は国境税という、米国からの輸出を優遇し米国への輸入にペナルティを課す税制の導入も検討していますから、国境税を盾に取りながら交渉を有利に進めるものと思われます。

 

 本丸は中国です。こちらはまだ具体的な交渉等は決まっていませんが、おそらく今年中に中国との通商交渉は間違いなくありますから、どうなるか見ものです。

 

 続いて財政面です。こちらは20兆ドルもの巨額の政府債務を抱えており、さらにいままで米ドルの価値を維持するのに大きな役割を担ってきたグローバルカジノ経済とペトロダラーシステムのどちらも終わりに近づいていることから、財政面を何とか改善しないと米ドルの信用を維持し続けることは困難でしょう。

 

 ただ現在の流れを見ていると、財政赤字の垂れ流しが今後も続きそうな気配です。有利な貿易交渉や規制緩和を通じた税収の増加は減税政策により打ち消されますし、レパトリ減税による収入も10年間で1兆ドル規模の大規模インフラ投資によって消えるでしょう。

 

 さらに財政支出の75%を占める社会保障費と軍事費も大きく減る見込みはあまりなさそうです。

 

 社会保障面ではオバマケアの廃止に向けてのプロセスを開始する大統領令に署名しましたが、トランプはオバマケアのすべてを廃止するとは言っておらず、どれだけの歳出削減につながるかはわかりません。今後の社会保障政策が具体的にどのようなものなのかも不透明で、短期で解決できる問題ではないようです(→関連ソース)。

 

 今後も高齢者の増加趨勢に変わりはないので、社会保障費は今後も増え続けることが予想されます。

 

 一方軍事費も増えそうです。トランプは現在の6,190億ドルの軍事予算から800億ドルも増えるような予算案を計画しているそうです。主に米軍強化に使われるみたいですが、その他にも退役軍人への保障を手厚くするための予算も盛り込まれているはずです。具体的な予算案は2月に出てくるようです(→関連ソース)。

 

 さらに今年はロシアなどと連携しながらIS打倒を本格化させそうですから、軍事費が増えるのは仕方ないでしょう。トランプはNATOは時代遅れだとか、ロシアとの間で核軍縮することも考えていると発言していることから、とっととIS打倒などを行って、駐留米軍を引き返したいと考えているものと思われますが、そこで浮いたカネは国防強化や退役軍人への手厚い保障に充てるみたいです。

 

 大統領就任演説でもホワイトハウスのウェブサイトでも、国防の強化と退役軍人へのリスペクトが強くにじんでいましたから、例え世界の警察としての役目から撤退したとしても軍事費はあまり減らなさそうですし、結局増えるかもしれませんね。

 

 こうしたことから、このままいくとアメリカの財政事情はさらに悪化することが予想されます。何かしらのウルトラCでもないかぎりは...

 

トランプ政権は米ドル・米国債に対する大胆な政策を画策しているかもしれない

 ここからは個人的な考えが特に色濃く出ていますのでご注意ください。

 

 個人的に、もしかしたらトランプ政権は為替や米国債に関する何らかの秘策があるのではないかと思っています。

 

 そう考える一番の理由は、トランプ氏の経済・貿易政策がいままでの30年前後の米ドルの流れを逆転させるポテンシャルがあり、その過程で米国債にも大きな影響が及ぶと考えられるからです。

 

 1980年代以降、アメリカはバンバン国債を発行して米ドルを主に中国といった新興国に流し込み、それをもとに新興国は輸出で米ドルを稼ぎ、稼いだ米ドルを米国債に投資してきたわけです。これにより米国は貿易赤字、経常赤字を垂れ流しているにも関わらず、米ドルがあまり弱くならないまま新興国は貿易による経済発展の果実を得てきました。

 

 しかしいまからトランプがやりたいことは貿易赤字の流れを食い止めて反転させることです。アメリカの製造業を復活させる意気込み、二国間協定締結に向けた動き、規制緩和、減税、国境税...これらはすべて米国内生産や輸出を奨励したり、米国への輸入にペナルティを設けるものです。よって米国にドルが流れる方向にマネーは動いていきます。これはドル高にもつながります。

 

 そうなるとここ30年前後の中で増えてきた米国債は果たしてどうなるのでしょうか?

 

 いま、新興国の中には通貨安や対外債務の増加に苦しんでいる国が結構あります。下図を見るとトルコやマレーシアなんかは外貨準備と比較して対外短期債務がかなり大きい水準になっており、すでに危険な非常にあることがわかります(下図は世界銀行のデータを利用して個人的に計算したデータを利用しています)。

 

新興国の対外短期債務-外貨準備高比

ソース:世界銀行

 

 ただでさえトランプの経済・通商政策はドル高・新興国通貨安期待を市場に与えるにも関わらず、さらにこれからどんどん新興国から米ドルが逃げていく趨勢になると見込まれるわけです。こうなった場合、対外債務、どうやって返済するんでしょうか?

 

 そうなれば当然、米国債の投げ売りなんかにも発展しかねないわけです。

 

 すでに通貨急落や巨額の民間債務で苦しんでいる中国や、財政赤字が増加しそうなサウジアラビアでは米国債を売却し始めていますよね。中国やサウジでさえ米国債を売却し始めているわけですから、これが新興国に波及していくリスクは無視できないでしょう。

 

 こうした米国債・米ドルの信用に関わる問題の将来の顕在化が予想される中で、トランプはこうした問題を放っておくでしょうか?

 

 トランプは貿易で利益を得たいわけです。しかし決済通貨の米ドルの信用がなくなって、誰も米ドルを受け取らないような状況になってしまえば、貿易でカネを稼ぐための大きな障害となってしまいます。ですから米ドルを決済通貨として今後も利用できるような環境を整備する必要があるでしょう。

 

 トランプ政権は今後各国と二国間交渉を行い、二国間貿易協定につながるものと思われますが、ここで貿易決済に関する話も出てくるんじゃないでしょうか。例えば二国間貿易での決済通貨の取り決め、貿易に利用する為替レートの設定、さらには貿易決済を通じて米国債をアメリカに引き渡す取り決めなどなど...

 

 (米国債をアメリカに引き渡すというのは、イエレン議長が居なくなった後にFRBに量的金融緩和を再開させれば、海外から回収した米国債から米ドルを生み出してアメリカ経済に供給することが出来るようになり、トランプのインフラ政策とも親和性があるので可能性としてないとは言い切れないと思っています)

 

 二国間協定でなくとも、トランプの経済政策やアメリカの財政事情、さらには過去の歴史のパターン(世界恐慌のときの金本位制離脱、ニクソンショック、プラザ合意など)を勘案すれば、米ドルや米国債をめぐる大きな動きが待ち構えているという可能性は排除できないのです。

 

 トランプ政権が米ドルや米国債の問題に着手するのではないかと匂わせる動きはすでにあります(以下は憶測度が極めて高いのでご注意を)。

 

 例えばトランプ陣営は中国を為替操作している国だと糾弾しており、関税といった輸出入に関する有利な取り決めに導く狙いがあると言われていますが、それだけではなく為替や米国債に関する話もするんじゃないですか?だってアメリカと中国は経済に関してコインの表と裏の関係ですから、為替とか米国債の問題を何とかしないと米ドル・米国債の信用にとんでもない影響を与え兼ねませんよ。

 

 またトランプや財務長官のムニューチン氏が、米ドルが高すぎるとか長期では米ドル高が重要だけれども短期ではドル高は経済に悪影響を与えるとかなんとか、為替相場を刺激する発言してますよね。これ、現在の市場心理を確認して米ドル・米国債に関する戦略の修正でもしたいんじゃないですか。

 

 別の視点では最近、オバマ時代にホワイトハウスの経済顧問を務めた経験のあるジャレッド・バーンスタイン氏が、トランプの経済政策を批判することでメディアによく取り上げられています

 

 バーンスタイン氏、2014年にアメリカの貿易赤字問題等について発言しており、その原因としてアメリカに対する貿易輸出国が稼いだドルを米国債に投資する一方、貿易輸出国が自国の消費を抑えて貯蓄に回すよう奨励することで自国通貨高を抑制してきたことを挙げています。これはトランプ陣営の問題認識と同様です。

 

 よってバーンスタイン氏の最近の言動は、トランプ陣営に食い込んで貿易赤字解決のための影響力を行使したいのだと思われます。バーンスタイン氏が提案してきた解決策は米ドルを外貨準備資産としての地位から離れさせることです。

 

 さらに安倍首相がトランプ大統領と2月に首脳会談するという話がありますが、アメリカ側からの要請で麻生財務大臣も呼ばれるそうではないですか。これ、米国の最大の債権国である日本に対して、米ドル・米国債に関する何かしらいままでとは異なる役割を持たせようとしているんじゃないでしょうか。

 

 単に米国債を買えとかそんな単純な話ではなく、トランプ陣営はすでに米ドルや米国債に関する何かしらの戦略があって、その戦略遂行のために日本を利用しようとしているんじゃないでしょうか。そこまでしないと、既に米ドル信用維持に貢献してきた日本の財務省の長を呼び寄せることなんてしないと思いますが...

 

**********

 

 今後は米ドルや米国債の行方がどうなるのかにも注目しながら、世界のニュースを見ていくと意外な発見があるかもしれません。

 

【追記:2017/01/27】
 早速出てきましたね。トランプ大統領が通商協定に為替条項を設けるとかなんとか...

 

 →【2017/01/27 日本経済新聞】トランプ氏「通貨安誘導を制限」 通商協定に為替条項

 

 具体的にはどうなるのかわかりませんので、いろいろニュースを追うことにしましょう。おそらく短中期的に米ドル安につながる政策になるだろうとは思いますが。

 

 それと、今後二国間協定を結ばない国に対してトランプは米ドルや米国債をどうするのか?この点にも着目すると面白いかもしれません。

 

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