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COVID-19が石油需給に与える影響を考える

2020/03/10

 

 石油市場に激震が走りました。

 

 新型コロナウイルスの影響による石油需要の減少を埋め合わせるための、OPECプラスによる日量150万バレルの追加減産提案を、ロシアは拒否しました。

 

 これにより、新型コロナウイルスの影響による石油需要の減少を埋め合わせることができないだけでなく、2017年から3年以上続いてきた協調減産が今月末の期限をもって終了し、OPECプラスの全ての国は4月1日から減産の義務がなくなります。

 

 さらにその後、サウジアラビアが石油値下げ競争を仕掛けることを表明しました。ロシアのロスネフチも4月から増産に踏み切ることを明らかにしました。イラクやクウェート、UAEなど他のOPEC加盟国も、サウジに追随する可能性があります。

 

 現在OPECプラスは日量210万バレルの協調減産をしており、これが遵守されており、石油値下げ競争が始まれば、4月1日以降に供給量が日量210万バレル以上増えるおそれがあります。そのため原油価格は大暴落しました。

 

 昨日は一時石油先物が約3分の1下落し、1991年の湾岸戦争以来の最大の下落となり、価格も2003年以来の安値水準になりました(その後やや反発しました)。

 

画像ソース: Zero Hedge

 

 新型コロナウイルス感染拡大懸念+石油値下げ競争勃発から、世界株も大きく下落し、米国株式市場では2013年に導入されて以来初めてサーキットブレーカーが発動し取引が15分間停止しました。ダウ平均は2013ドル安と過去最高の下げ幅を記録しました。

 

 S&P500は2月19日に記録した過去最高値からの下落率は19%に近く、下落弱気相場入りが目前に迫っています。

 

 

 今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大と中東リスクを踏まえて、原油価格急落が続く石油市場について再び考えたいと思います。

 

[アボマガお試し版 No.112]COVID-19が石油需給に与える影響を考えるの記事(一部)です。2020/03/10に配信したものです。

 

sky

 

COVID-19拡大による石油需要大幅減はいつまで続くか

 中国ではCOVID-19の拡大で、少なくとも2月まで産業活動は停滞してきました。

 

 下図はNASAの衛星写真が撮影した。今年1月1日-20日までと2月10日-25日までに中国で排出された二酸化窒素の濃度を示した図です。

 

 2月は燃料、自動車、発電所、建設機械の燃焼等で放出される二酸化窒素が中国全土にわたってほとんど見られず、産業活動が停滞してきたことが鮮明にわかります。

 

画像ソース: BUSINESS INSIDER

 

 現場の出稼ぎ労働者である農民工はいまだに春節における帰省先の地方にとどまり、現場の労働力も足りていません。中国全土の主要インフラ工事の再開率は2月末時点で50%に達していません。

 

 最も感染拡大が深刻となった湖北省での企業活動の再開は早くても今月11日と言われています。

 

 少なくとも今月中の企業活動の本格的な再開は難しそうな中国ですが、COVID-19の封じ込めには成功しつつあるようです。

 

 中国では政府による感染拡大の封じ込め策の強化や、路上や公共交通機関等に設置された監視カメラなどから集めた膨大なビッグデータを活用したウイルスの追跡、治療、予防により、2月20日ごろから感染者数の拡大ペースは著しく鈍化しました。

 

画像ソース: BBC

 

 

 COVID-19の拡大に対する懸念は、中国から世界へとシフトしています。

 

 今月2日、WHOは新型コロナウイルスの感染拡大で、韓国、イタリア、イラン、日本を「最大の懸念」と述べました。このなかに中国は含まれていません。

 

 中国は感染封じ込め策により全国的に感染件数の伸びが著しく弱まってきた一方、中国国外のCOVID-19の患者数増加ペースが中国を急激に上回り、中国国外の感染件数の大半がこの4カ国に集中しているためです。

 

 世界の感染者数について、韓国の勢いの伸びは少しずつ弱まっている一方で、イタリアで感染が本格化し感染者数は韓国を抜いて中国に次いで2番目となり、移動制限を全土に拡大しました。

 

 イランの伸びが強く、フランス、スペイン、ドイツ、など欧州各国で伸びが強まっています。米国も伸びています。今後数週間は欧米の感染拡大が本格化しそうです。

 

 日本の感染者数の増加ペースはWHOが最大の懸念と評した割には弱いものとなっていますが、これは検査を受けられず統計上カウントされていない感染者が多いためとみられています。

 

画像ソース: worldometer

 

 総感染者数のチャートをみると、2月半ばごろから中国での感染者数の伸び鈍化で総感染者数の伸びも鈍化しましたが、2月終わりごろからは中国以外の感染者数の伸びが強まり、総感染者数が再び右肩上がりとなっています。

 

※最新の数字は下のリンク先からご覧ください

画像ソース: HGIS Lab

 

 現在の指数関数的上昇ペースが続けば、今月中には中国の感染者数を中国以外の感染者数の合計が上回り、10万人を超えていきそうです。

 

 

 石油について、当初は中国のCOVID-19拡大に伴う石油需要減が最大の焦点でしたが、中国での感染拡大が収束に向かうなか、感染拡大が強まる中国以外の石油需要を考える必要があります。

 

 ...(省略。アボマガ・エッセンシャルご登録者限定)

 

COVID-19拡大は石油供給にも影響を与える

 一方でCOVID-19の拡大は、石油消費国のみならず産油国にも影響を及ぼします。イランがまさにそうです。

 

 イタリア以外でも欧州で感染拡大している現状を見れば、中東全域でも感染拡大する可能性は否定できません。

 

 産油国は中東地域に集中していますから、同地域で感染拡大が深刻化すれば石油供給量はガクッと減ってしまっても不思議ではありません。

 

 ただいまのところは、イラク、UAE、サウジアラビア等で感染者が出ているものの、現在数は少ないです。

 

※最新の数字は下のリンク先からご覧ください

画像ソース: HGIS Lab

 

 もしCOVID-19が中東でそこまで感染拡大せず、石油生産に影響を及ぼさない場合に何が起こると考えられるでしょうか。

 

 現在、COVID-19の拡大に伴う原油価格の暴落が続いていますから、サウジアラビアを中心とした財務状況の悪い中東の国々が財務的・精神的に追い詰められていき、地政学リスクが急増することも考えられます。

 

 OPECプラスの減産合意が終了するわけですから、尚更です。

 

 ここまでの内容を3月7日に書いたのですが、翌8日にサウジが「石油戦争」を仕掛けるとの報道が出ました。中東の地政学リスクが現実化する可能性が急速に高まったのではないでしょうか。

 

サウジアラビアが仕掛けた「石油戦争」(ただし敗北濃厚)

 さて、サウジアラビアについてです。

 

[2020/03/07 日本経済新聞]サウジ、前皇太子ら有力王族拘束 反逆罪の疑い 強硬路線にリスク

 

 サウジアラビア当局は6日、サルマン国王の弟のアハマド王子、おいのムハンマド・ビン・ナエフ前皇太子ら有力王子を拘束した。欧米メディアが報じた。潜在的な政敵の排除により、サルマン国王の息子であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子への権力集中が一段と進みそうだ。サウジ国内では皇太子の強硬な政治手法に一部で不満が高まっており、サウジ情勢の不透明感が増す可能性もある。

 

[2020/03/08 ブルームバーグ]サウジ最大1200万バレルに増産と関係者-値下げで「価格戦争」突入も

 

 石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」が減産強化で合意に至らなかったことを受け、サウジアラビアは日量1000万バレルを十分上回る増産を4月に計画している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 

 関係者が匿名を条件に語ったところでは、サウジ当局者は一部の市場参加者に対し、必要な場合には大幅な増産が可能であり、過去最大の日量1200万バレルまで増やすこともできると非公式に述べたという。

 

 サウジの考えをよく知る関係者によれば、同国はまず4月に現行の日量約970万バレルから1000万バレルを超える水準まで増産する可能性が高い。

 

 一方、サウジの国営石油会社サウジアラムコが4月積みの極東と米国、欧州向け代表油種の公式販売価格(OSP)について、少なくとも過去20年で最大の値下げに踏み切ることも7日分かった。同国産原油の販売を可能な限り増やし、シェアを奪う狙いがありそうだ。

 

 ブルームバーグが内容を確認した発表資料のコピーによれば、アジア向けOSPをバレル当たり4-6ドル、米国向けは同7ドル引き下げる。

 

 サウジアラムコは昨年12月11日にサウジ証券取引所に新規上場しましたが、それからほどなくして株価は下落しはじめました。低い配当利回りや、政府が依然として経営権を握っていること、石油価格への厳しい見通しなどのためです。

 

 追い打ちをかけるようにコロナショック後の原油価格の急落も加わり、現在は下げ止まらない展開となっています。

 

画像ソース: Zero Hedge

 

 サウジアラビアは協調減産で原油価格を維持しているあいだに、サウジアラムコの残りのIPOを済ませて、脱石油経済構築のための資金をできる限り多く獲得することを望んでいましたが、今回のOPECプラスの減産合意決裂で、この計画がパーとなりました。

 

 このまま原油価格が低迷すれば、脱石油経済の構築ができないままサウジの財政赤字が増え続け、国家そのものが潰れてしまいます。

 

 サウジアラムコの株価持ち直しとサウジ財政崩壊の先送りのための最終手段として、石油の値下げ競争を仕掛け、生産コストの高い世界中のライバルの石油会社を潰して供給不足による原油価格上昇をもくろんでいるわけです。

 

 合わせて、脱石油経済構築の最高責任者であるムハンマド皇太子(MbS)が責任を問われて権力の座を奪われないように、敵対する王族らを拘束して独裁を強めたと考えられます。

 

 事情は何にせよ、今回のサウジアラビアの決断は「すべての産油国(ロシア・米国含む)への宣戦布告」と同義です。

 

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