消えかかるドル高材料、近づく金購入「ラストチャンス」
2018/09/21
4月以降の下落がひとまず止まった金価格。投資家や投機家が暴れてくれたおかげで金価格が下がる材料が大きく減った。不安定な米国株式相場が近々大幅調整してくれれば、金価格下落をもたらすドル高材料がほとんど消え去る。後ろに控えるのはドル安材料ばかり、金購入の「ラストチャンス」は確実に近づいている。
[金のメルマガ No.8]消えかかるドル高材料、近づく金購入「ラストチャンス」
の記事(一部)です。
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金価格の下落は投資家・投機家が暴れていただけである
まずは最近の金価格についてです。
金価格は4月以降、米ドル高新興国通貨安とともに大きく下落し、4月17日の1オンス1350ドルから現在まで10%以上値下がりしました。
Fedの金融引き締め、レパトリ減税による米多国籍企業の米国への資金還流の動き、米国の金融・財政政策の影響が新興国市場に波及したこと、そして米中貿易摩擦の過熱への懸念の高まりが米ドル高を招き、金価格の下落につながったのです。
しかし8月15日以降は停滞気味です。8月の終わりから米中貿易戦争の追加関税第3弾、第4弾の発動の可能性がメディアで報道され、9月17日にトランプ政権は中国製品への2000億ドル規模の追加関税(第3弾)を24日に発動することを決定しましたが、金価格の動きは鈍いままです。
金価格と反対の動きをする米ドル指数を見ると、8月14日の96.73をピークに下げており、9月17日現在で94.5です。17日は中国への追加関税第3弾が発表されたにも関わらず、米ドル指数は下げました。
実は4月以降から今日まで、ユーロドル先物が米ドル指数の動きと並行して動いてきました。8月24日までは売りが続いたものの、その後はやや買いが増えているのです。投機家によるユーロドル先物売りが米ドル高を生み出した犯人の一人のようです。
こうしてみると米中貿易戦争の過熱は金価格や米ドルの動きとあまり関係ないのかもしれません。先物のポジションがほとんど消えたために、最近は金価格や米ドルの動きが落ち着いているようです。
現在の金相場は2つの点でいつもと様子が違います。
一つは米国金先物(NY金)の大口投機玉が2001年12月以来、約16年8ヶ月ぶりに売り越しとなったことです。
2002年以降は世界的に金投資環境が大きく拡大した期間であり、その期間中は今日まで、一度もNY金の大口投機玉が売り越しとなることはありませんでした。つまり現在のNY金の大口投機玉の売り越し状況は、歴史的な状況と言えます。
赤線がNY金の大口投機玉。2001年12月以降、今年8月までずっと買い越し状況が続いていた。
画像ソース: Seeking Alpha
もう一つは人民元建て金価格の変動がほぼなくなっていることです。中国は宝飾品と金融商品を合わせた金需要が世界最大の国であり、ロシアとともにドル離れも進める国とあり、人民元金価格の動向は気になるところです。
その人民元建て金価格、2016年から変動が年々小さくなり、今年2月頃からほとんど変動しなくなっているのです。人民元金価格はダラダラ下げを続けていますが、不気味な値動きはまるで「死んだふり」をしているようです。
画像ソース: GoldBroker
ドル建てや円建て金価格のように大きな変動で下落すると、購入を控えてしまいがちです。しかし中国人が見ている金価格はダラダラ下がっているので買いチャンスと思う人が多いようです。
画像ソース: KITCO
今年4月-6月の中国の金宝飾品および金投資需要は、前年同期比でそれぞれ6%、11%上がりました。一方で欧米や日本の投資家に需要のある金ETFの需要は、前年比46%のマイナスです。
見ている金価格チャートの違いが、先進国の投資家には金売却のサインと映る一方、中国人投資家には買いのサインだと映っているのです。
画像ソース: World Gold Council
金価格がもう一段下がる可能性
異様な状況の金相場ですが、今後金価格はどのように動くのでしょうか。
私はトレーダーではないので短期的な値動きについては正直よくわかりませんし、あまり興味がありません。
しかし、金価格がもう一段下がる可能性があると思っています。
それは、米国相場の不安定化によりドル高がもう一段進む可能性です。
…
米国株式相場を牽引してきたハイテク株に対する市場心理が不安定化しており、政治リスクのさらなる高まりと共に大幅調整する可能性は無視できなくなっています。
また米国債券のイールドカーブがゼロ付近にあり、今後のFedの利上げもあり逆イールド(2年債利回り>10年債利回り)に向かっています。2000年、2007年をみると、水色のイールドカーブが逆イールドとなり、その後イールドカーブが急増しています。同時に赤色のS&P500指数が暴落を始めています。
逆イールドになれば、「長期米国債→短期米国債」にお金が流れるだけでなく、米国株や新興国金融商品などのリスク資産から短期米国債へと資金が流れやすくなるためです。
逆イールド化は米国株の大幅調整の前兆なのです。
水色線
画像ソース: VISUAL CAPITALIST
よって、現在はもう一段ドル高が進む可能性があります。米国株が大幅調整すれば、米国債に資金が流入するだけでなく、レバレッジを掛けている投資家が借入返済のために米ドル確保に迫られ、米ドル需給がますます逼迫するためです。
米ドル需給が逼迫して再びドル高が進めば、米ドルと反対方向に動くドル建て金価格ももう一段下げることでしょう。
米国相場の大幅調整はドル高材料を喰い尽す
もし近々米国相場の調整が起これば、それが最後の金価格の調整となる可能性があります。
これまでの米ドル高の背景にはFedの金融政策、レパトリ減税、米中貿易戦争が考えられました。
このうち米中貿易戦争については、背後に投機筋の先物取引があり、ユーロ先物にしろ金先物にしろポジションを使い果たしてしまい、米ドル高につながらなくなっています。
Fedの金融引き締め(今後の利上げや量的引き締め)やECBの金融緩和政策縮小・終了の流れにあることは投資家や市場関係者もわかっていることですから、米国株が大幅調整となれば、今後の金融政策の影響も米国株や米ドルに過剰気味に織り込まれるでしょう。
また新興国等からの資金退避の流れも加速するでしょうから、次の米国相場の大幅調整はほとんどのドル高材料を使い果たすでしょう。
一つ見通せないのはレパトリ減税です。米多国籍企業の海外留保利益は2.7兆ドル程度であり、このうち3056億ドルが今年1-3月に米国に還流したと言われています。
【2018/09/16 WSJ】Trump Promised a Rush of Repatriated Cash, But Company Responses Are Modest
(省略)
このシナリオを考えると、あまりレパトリ減税の為替への影響は考えなくても良いのかもしれません。何故なら「米ドル安」のときに「米国への還流が起こる(米ドル高につながる)」ことで、両者が相殺されて為替変動が小さくなると考えられるためです。
このように考えていくと、米国相場の大幅調整という金融ショックが起こり少し時間が経てば、今後のドル高材料がほぼなくなると考えられるのです。
あとはドル安材料ばかりが控える
「[アボマガ No.13]トランプが「本当にやろうとしていること」を考える_1」で、ドル安政策がトランプが本当にやりたい政策の一つであると書きました。
その根拠として、政界や産業界に、「為替条項」を求める声が多いことを述べました。他国による競争的通貨切り下げを禁止し、米国からの輸出が有利となるドル安の状況をつくりやすくすることには、賛成の声が多いのです。
トランプは政界や産業界の要望どおり、韓国とのFTA見直しやメキシコとのNAFTA再交渉で為替条項を導入しました。
米国はこれまで、通貨安誘導を封じる為替条項を他国との通商協定に盛り込んだことはありませんでした。
従来までの常識、慣例を打ち破ってまで、トランプ政権はドル安に追い風となる為替条項の導入を勝ち取ってきたのです。
日本、EUとの通商交渉、さらには中国とも、トランプ政権は為替条項の盛り込みを強く押しつけてくるでしょう。
この話は、私の妄想ではありません。こちらの日経の記事一本を読めばわかることです。
【2018/09/05 日本経済新聞】米・メキシコ、NAFTA巡る合意に「為替条項」 通貨安けん制
現在の相場を見るだけではまったくわかりませんが、上の流れをみれば、トランプが将来のドル安のための外堀を着々と埋めていることがはっきりとわかります。
為替条項という今後のドル安への基盤が出来上がるなかで、他にもドル安への流れがてんこ盛りです。
ロシア、中国、イラン、トルコのドル離れへの動きは強まっています。
米国が仕掛ける経済制裁や追加関税から逃れるために、ドル離れを進め非ドル経済圏を構築する動きが止まらないのです。
米国相場が大幅調整となれば一時的にドル高が進むでしょうが、トランプは求心力確保のためにFedに金融緩和策を要求するかもしれません。
そうなれば、ドル高はそう長くは続かずにドル安になります。
そして、QAnon信奉者の動きが止まらなくなれば、間違いなくドル安が進み、止まらなくなります。
以上見てきたように、次の米国相場の調整さえ起これば、ドル安の材料ばかりが控えているのです。
特に「為替条項」と「世界のドル離れ」の動きはすでに顕在化しており、これらの勢いは少しずつ強まっていますので、そう遠くない将来(何年後か)にドル安という形で反映される可能性は決して低くはありません。
…
こうした流れから、今後金価格が下がる要素は限定的であり、中長期的に金価格が大きく上昇する材料ばかりが控えるのです。
今後もし、米国相場の調整でも起こって金価格がもう一段下落し、金先物の売りポジションも膨らめば、ゴールド購入のまたとない機会の到来です。
おそらくこれが、金を安値で購入できるラストチャンスです。
私が利用しているブリオンボールト。資産防衛に有効とされる海外のゴールドをネットで簡単に購入できます。金の購入・保有を怠り金価格上昇の波に乗り遅れても、私は知りません。
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