SECメンバーが「米国株式相場のクラッシュ」を厭わない規制導入を提唱した

投資ブログへのリンク

SECメンバーが「米国株式相場のクラッシュ」を厭わない規制導入を提唱した

2018/06/15

 

【2018/06/13 ブルームバーグ】FANG内部者による株売却、上期に50億ドル超えか-6年ぶり高水準

 

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)をはじめとする米テクノロジー大手企業の内部者は、ここ6年で最も速いペースで株式を売却し、好調な株式相場から利益を得ている。

 

ブルームバーグのデータによると、「FANG」と略称されるフェイスブックとアマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグル親会社アルファベットの4社の上級幹部と取締役は、今年に入り45億8000万ドル(約5060億円)相当の株式を売却。このままいけば1-6月(上期)では50億ドルを超え、フェイスブックの上場で内部者による株売却が143億ドルに押し上げられた2012年上期以来の高水準となる。

 

ザッカ-バーグ氏は慈善活動に資金を提供する取り組みの一環として、今年に入り28億4000万ドルの株式を売却。FANG全社の株価は年初来でS&P500種株価指数を上回る値上がりとなっている。

 

 自社株買いが支える米国株式相場。SECのコミッショナーの一人が自社株買い発表を利用してボロ儲けするインサイダー取引に規制を掛けるべきだと言い出した。どういう意味かわかりますか?

 

インサイダーによる自社株売りが常態化してきた

 現在の米国株式市場は、インサイダーたちによるヘブンと化しています。

 

 米国の証券規制当局SECのコミッショナーの一人であるロバート・ジャクソン・ジュニア氏が、最近米国株式市場の自社株買いに関する分析結果を公表しました。
【2018/06/10 Zero Hedge】SEC Commissioner Blasts Insiders For Quietly Selling Into Stock Buybacks, Demands Rule Review

 

 2017年初~今年第1四半期までの、米国385の企業の自社株買いに関する調査です。

 

 ジャクソン・ジュニア氏の調査結果は大きく次の2つです。

 

  1. 自社株買いの発表直後、インサイダーたちによる自社株売却数が通常の2倍になる
  2. 自社株買い発表後30日間の当該企業の株式パフォーマンスは、株式市場全体のパフォーマンスを上回る

 

 この2つから容易に得られる一つの結論は「米国企業のインサイダー(CEO等)は、自社株買いを利用して多額の個人的利益を得てきた」ということです。

 

 

 株数に着目すれば、自社株買いの発表直後、インサイダーたちによる自社株売却数が通常の2倍になるとのことです。

 

 インサイダーたちによる自社株売却「額」に着目すると、自社株買い発表前の一日のインサイダー売却平均額は10万ドルですが、自社株買い発表後は一日平均売却額が50万ドルとのこと。

 

 自社株買い発表後、インサイダーたちは自社株買い発表前の5倍の額の自社株を売却しているのです。

 

 その結果、インサイダーたちの自社株買い発表後の売却総額は、自社株買い発表前よりも7500万ドル多いとのことです。

 

 自社株買い発表前のその企業の株式パフォーマンスは、株式市場全体よりも平均1.4%マイナスのパフォーマンスでした。

 

 しかし自社株買い発表後になると、パフォーマンスは逆転します。株式市場全体よりも平均2.5%のプラスのパフォーマンスだったのです。

 

 つまり、自社株買い発表前後で、その企業の株価パフォーマンスは株式全体よりも4%近く良くなるわけです。

 

 こうした、「自社株買い発表後に自社株のパフォーマンスが市場全体よりも良くなる」という、ここ最近の株式相場の性質を利用して、インサイダーたちは確実に個人的利益を得ることができたのです。

 

 調査対象の1/3近くの企業は、少なくとも一人のインサイダーが自社株買い発表後10日以内に自社株を売却してきたとのこと。

 

 自社株買いの発表を決めるのはインサイダーたちですから、事実上インサイダーは株価操作を通じて確実なリターンを得てきたのです。

 

 しかし残念かな、こうした自社株買い発表を利用したインサイダーたちによる悪質な価格操作・取引は、米国の証券に関する法律で現状違法とはならないようです。

アルゴリズム取引がインサイダーたちのボロ儲けを支えるのか

 インサイダーたちによる悪質な株式取引が跋扈するのは、「自社株買い前後で株価が上昇する環境」があってこそです。

 

 何故こうした環境がつくられたのか...思いつくのはアルゴリズム取引の隆盛です。

 

 最近も記事に書いたように、現在、世界の金融市場ではアルゴリズム取引(高頻度取引)と呼ばれる、コンピュータを利用したミリ秒単位で頻繁に売買を繰り返して利ざやを稼ぐ取引が主流になっています。リーマン・ショック後から本格化してきました。

 

 株式市場、米国市場では取引の2/3がアルゴリズム取引であり、特にアルゴリズム取引が盛んです。

 

世界金融市場のアルゴリズム取引シェアの推移

画像ソース:Zero Hedge

 

 他方で、リーマン・ショック後は「ショート・ボラティリティ取引」も盛んに行われてきました。短期的な「VIX指数の下げ」「株価の上昇」という変化を嗅ぎ取って利ざやを稼ぐ取引だと考えればよいと思います。

 

 リーマンショック以降、米国をはじめとした中央銀行の量的緩和・低金利政策もあり、ショート・ボラティリティ取引が盛んになりました。

 

 ボラティリティ利回りは先進国の長期国債運用リターンと遜色ない、場合によっては上回る環境となってしまい、それが今日まで10年近く続いてしまいました。これは歴史上初の出来事です。

 

VIXショートと長期国債利回りの推移

 

 このように、アルゴリズム取引とショート・ボラティリティ取引が並行して盛んになったのが、リーマン・ショック後から現在までの10年です。

 

 つまり、「機械によるショート・ボラティリティ戦略をもとにした高頻度取引が、現在までの米国株式市場を支えてきた」と推測することができるわけです。

 

 こうした取引を支えてきたのが、企業による自社株買いでした。2009年以降、米国株上昇の要因の3割は自社株買いによるものでした。

 

 さらに重要なのは、企業の自社株買い禁止期間が過ぎた直後にVIX指数が複数日連続で下落する傾向があったことです。ショート・ボラティリティ取引により、企業の自社株買いに合わせて株式購入をしていたと言われています。
【Artemis Capital Management】Volatility and the Alchemy Risk

 

 よって、実は「機械によるショート・ボラティリティ戦略をもとにした高頻度取引が、インサイダーを儲けさせてきた」可能性があるのです。

 

 「自社株買いの発表→アルゴリズム取引による買い発生→株価吊り上げ→インサイダーたちによる売り」という構図が、現在の米国株式市場の背後で働いているのかもしれません。

 

SECによる規制は、米国株式相場のクラッシュを確実にする

 SECのジャクソン・ジュニア氏は、自身の米国自社株買いに関する調査結果から、インサイダーたちが自社株買い発表のタイミングで保有株式を売却することを許す現在の法律を見直す必要があると訴えています。

 

 SECとしての公式見解ではなく、あくまでジャクソン・ジュニア氏の個人的な見解ですが、SECのメンバーから自社株買いのタイミングでのインサイダー取引に関する法律にメスを入れる必要性があるとの見解が出たのは、看過できません。

 

 2009年以降、米国株上昇の要因の3割は自社株買いによるものだったわけです。

 

 そして自社株買いがあったからこそ、アルゴリズム取引が盛んになる、つまり「米国株式市場の流動性が維持されてきた」わけです。

 

 ジャクソン・ジュニア氏の発言は「米国株式市場のクラッシュを容認してでも、証券取引規制を強めるべきだ」という含意があると我々は受け止めなければなりません。

 

米国の自社株買い、ショート・ボラティリティ・トレード市場規模

ジャクソン・ジュニア氏の発言は、米国株式市場の流動性を支えるこのピラミッドの崩壊も辞さないことを示唆する

 

 

 米国株式市場の将来の崩壊が確実なことを裏付ける、また新たな材料が出てきてしまいました。

 

 それがいつ起こるかはわかりませんが、そう遠くないうちに起こることを前提に考えて下さい。

 

 (そもそも、インサイダーたちがグレーな行為を冒してでも自社株を売却するということは、現在の自社株の株価が自社の経営状況と比較して過大評価されている、いずれ大きな下方調整が起こると認識していることを意味します)

 

 SECの動向は今後も気にしていかないといけません。

 

私が利用しているブリオンボールト。資産防衛に有効とされる海外のゴールドをネットで簡単に購入できます。金融危機にもハイパーインフレにも強い資産を少しでも持っておくと安心です。

 

 →将来に備えたい方は関連記事一覧へ
 →いますぐ備えたい方:口座開設はこちらから-コストが安く済むスポット取引コースが人気です

 

米国証券口座で長期投資。日本よりも圧倒的に安い手数料で世界中の株式に投資できます。

 

 →初めての方はこちら
 →Firstradeの口座開設方法
 →Sogotradeの口座開設方法

アボマガリンク


アボマガ・エッセンシャル(有料)の登録フォームこちら


アボマガお試し版(無料)の登録フォーム


このエントリーをはてなブックマークに追加   
 

関連ページ

ハイパーインフレ、基軸通貨の崩壊が株式に与える影響
COVID-19ワクチンの早期普及と量的緩和の拡大・拡充を期待する強欲な市場
「ピークオイル」は需要減ではなく老朽化・投資不足による供給減を指すことになる
市場は「Going To トラブル」?
機会を掴むには準備が肝心
「世界大恐慌×株高」というシナリオ
相場の終焉間際:コロナ禍で暇を持て余した素人投機家が市場に参入
米上場廃止?中国株ADRの行方
経済V字回復は厳しいが、金価格はV字回復
超高配当利回りとなった石油メジャー株
株価暴落時に守るべきたった一つのルール
COVID-19が石油需給に与える影響を考える
2020年、ドットコムバブル崩壊前後との類似点
アボマガで紹介した2銘柄のレビュー
アボマガで紹介している銘柄
「長期配当再投資+貴金属投資のハイブリッド戦略」
何故、金強気相場はこれから本気出すのか:マイナス金利、為替ヘッジ
ターニング・ポイント
ホルムズ海峡封鎖?短期的なエネルギー価格見通し
2019年、来るか、金融ショック
バブル崩壊は自分で気づく必要があるもの・輝きを増すゴールド
鮮明さ増す高インフレの流れ
有事の金
低リスク高リターンが見込める石油銘柄
見えない爆弾だらけの原油市場。目先にとらわれてはならぬ
備えあれば憂いなし
アルゴリズム取引の本格的な暴走までそう遠くはない?
中期的安定性の高い石油銘柄
原油価格は本当に、気分屋で困りますね(笑)
金価格は底打ち反転?不透明な将来への保険としてのゴールドの価値は増すばかり
ピーポじゃないよ!ヴィーヴォだよ!_2
ピーポじゃないよ!ヴィーヴォだよ!
割安なタバコ銘柄を探す
ESG投資:社会問題を相場吊り上げに利用する
日銀量的金融緩和はすでに瀕死、その先に待ち受ける「超円安」
「超円高」に期待しすぎてはいけない
消えかかるドル高材料、近づく金購入「ラストチャンス」
悪材料まみれになってきたテンセント_2
悪材料まみれになってきたテンセント_1
知ると知らずで大違い、配当再投資の隠れた特徴
配当再投資:雪だるま式に資産を殖やし残りの人生を謳歌する投資手法
人民元がゴールドにペッグしている??
「金価格の歴史的上昇トレンド」が新興国から始まる
米中貿易戦争勃発で米国株も怪しくなってきた。笑うのはロシア?
SECメンバーが「米国株式相場のクラッシュ」を厭わない規制導入を提唱した
米国政府の税収の1/4、1/3が利払いで消える日
金価格の伸び悩みはレパトリ減税の影響?
[2018/05/23]フラッシュクラッシュ時代、逆指値売り注文は自殺行為
[2018/05/16]新興国市場に赤信号点灯、世界金融危機の幕開け?
[2018/04/24]トランプが税制改革法案に埋め込んだ「マルウェア」
[2018/04/02]米国の自国優先主義は海外の金持ちを惹きつける
[2018/03/31]トランプは円安ドル高を許さない
[2018/03/24]リーマン・ショックから始まった金融市場の「真の終わり」の規模
[2018/03/17]新時代に向けて世界構造の破壊に本格的に着手し始めた米中
[2018/03/07]トランプの鉄鋼・アルミニウム輸入関税の真のターゲットはどこだ!?
[2018/02/28]物流、トランプ、中東、日銀...物価上昇・通貨減価懸念材料ズラリ
[2018/02/07]2018年2月5日-6日、世界同時株安だと?
[2018/02/03]144A for life -米国ハイイールド債市場を席巻する破滅的闇証券-
[2018/02/01]金利上昇が止まらないー草
[2018/01/24]米国経済が良くなると米国株相場はダメになる
[2018/01/10]配当再投資のリスク低減効果:私のポートフォリオの結果を材料に
[2017/12/29]2018年に向けて、金市場の動向をみる
[2017/12/06]ビットコインバブル→電力消費・発電問題発生→バブル崩壊
[2017/12/04]『金持ち父さんのこうして金持ちはもっと金持ちになる: 本当のフィナンシャル教育とは何か?』を読んでみた
[2017/11/27]トランプによる世界金融市場の大粛清がいよいよ始まりそうだ
[2017/11/23]トランプ税制改革は借り入れ依存企業への死刑宣告
[2017/11/18]ボラティリティ・ターゲット戦略は株式・債券市場を一瞬で破壊する
[2017/11/13]債券市場崩壊の初期段階がすでに現在進行中?
[2017/11/01]IMFは世界の中央銀行として世界を支配したいのか?
[2017/10/15]トータル・リターン・スワップの出現は第2のAIGショックの発生を暗示する
[2017/10/03]MiFID2は世界金融危機を拡大させ、大陸欧州を自滅に導く破壊ツール
[2017/08/26]世界金融市場クラッシュの予兆が見えた
[2017/09/21]暗号通貨に国債市場、日本円が抱える内憂外患
[2017/09/13]ドル離れの動きがFedの量的金融緩和政策再開を促す:その2
[2017/09/12]ドル離れの動きがFedの量的金融緩和政策再開を促す
[2017/08/24]日銀のETF買いは「貯蓄から投資へ」移行する家計を罠に陥れる
[2017/08/20]中国のシャドーバンキングスキームの崩壊はすでに始まっている
[2017/08/16]つみたてNISAのみの利用での長期資産形成は難しい
[2017/08/02]「金融の神様」がグローバル金融の崩壊を警告し続けている
[2017/07/26]世界の大揺れが確実に近づいています
[2017/07/13]「世界金融市場大揺れへのカウントダウン」は、すでに始まっている
[2017/07/09]相変わらず「自身の出口戦略」にしか興味のない日銀・黒田総裁
[2017/07/04]「悪徳」銘柄への投資こそ、年金運用には向いている...!?
[2017/06/29]短期の変動に目を奪われすぎず、本当のリスクに焦点を合わせよう
[2017/06/18]イエレンさん、本当にバランスシート正常化なんてできるの?
[2017/05/18]備えはお早めに:ゴールドへの備えに適した期間は着実に減っている
[2017/05/05]中国金融市況の悪化が米国株式市場の熱狂を生んでいる
[2017/04/29]中国金融当局のレバレッジ是正勧告は世界市場を溶かすかもしれない
[2017/03/07]FRBが3月利上げしそうですね。米国経済が回復していないなかで。
[2017/02/25]インサイダーたちによる爆売りブーム...米国株式市場のバブルの宴のフィナーレが迫っている
[2017/02/17]米国債しか頼れない日本、アジア国際金市場を着実に発展させている中国
[2017/01/24]トランプ政権は米ドル・米国債に対する大胆な政策を画策しているかもしれない
[2016/11/15]トランプの当選が市場に与える影響
[2016/11/05]今後世界の株価が大きく下がることは時間の問題
[2016/10/18]官製相場にかなり近づいた国債市場:日銀の八方美人的な振る舞いに潜む「テーパリング」への道

▲記事本文の終わりへ戻る▲

▲このページの先頭へ戻る▲