機会を掴むには準備が肝心
2020/08/24
今回は再び世界株が大幅調整局面に入ったときの銘柄を購入する視点について述べた記事です。
3月のコロナショックで魅力的な銘柄を掴めた人もいれば、掴めなかった方もいたことでしょう。
掴めなかった方々は、次の株価暴落期には絶対に積極的に買ってやろうと意気込んでおられるかもしれません。
しかし、こうした意気込みだけでは、いざ株価が暴落したとき、市場や経済、金融に関する悲惨な状況が連日メディアで報道されるなかで、気持ちが弱気に支配され、投資に踏み切れない可能性が高いです。
株価暴落時に積極的に買いを入れるには、銘柄のファンダメンタルズ、投資指標など、客観的なデータに基づいた、買いに関する判断材料をあらかじめ用意し、準備しておくことが大切です。
株価の値動きとは関係のない客観的・合理的な買いの判断材料をあらかじめ用意しておけば、状況の変化で心が大きく揺れ動いて感情的な投資判断に走るという過ちを防ぎながら、株安の機会をとらえやすくなるでしょう。
記事の前半では、バブル崩壊期に各ファクターのリターンがどのようなものであったのかに触れ、バブル崩壊期にどのような考えのもとで投資していけばよいのかを見ていきます。
記事の後半では、前半の内容を応用し、アボマガでこれまで紹介してきた全銘柄をどのようなイメージを持って投資しても良いのか考えます。いま投資しても良い銘柄もいくつかピックアップしました。
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バブル崩壊期の各ファクターのリターン
まずはバブル崩壊期に各ファクターのリターンがどのようなものであったのかを調べていきます。
目的は以下です。
- バブル崩壊期にどのような銘柄は早めに投資しても比較的低リスクで済むのか、どの銘柄はある程度株価が下がるまで手を出すのを控えるべきかを理解する
- この理解のもと、株価暴落期にできる限りポートフォリオへのダメージを減らしながら、皆さまに一世一代の投資チャンスを掴んでいただきたい
ファクターは「クオリティ」「バリュー」「小型」「モメンタム」「低ボラティリティ」「高配当」の6つです。ご存知の方も多いでしょうが、大雑把に言えば次の銘柄群を指します。
- クオリティ:収益性の高さ、負債の少なさ、景気変動による業績変動の少なさに優れる銘柄群
- バリュー:割安な銘柄群
- 小型:時価総額が小さな銘柄群
- モメンタム:強気相場でリターンが大きな銘柄群
- 低ボラティリティ:株価変動が小さな銘柄群
- 高配当:高配当利回りな銘柄群
それでは調査開始です。
下図はバブルの崩壊~回復局面における各ファクターの前年比リターンを示したものです。上が米国株、下が世界株です。
緑色はその年に他のファクターと比べてリターンが優れていること、赤色は相対的に悪いことを意味します。主観的に色付けしている面があるのでご注意ください。
全体的にみてわかるのは、低ボラティリティ株は他のファクターと比べて、バブル崩壊期における下落率が比較的小さく済むことです。
一方でバリュー株、小型株、高配当株、モメンタム株はバブル崩壊期に大きく下落する傾向があります。
特に下落傾向が大きいのはバリュー株と小型株で、2002年の米国株、2008年の米国株・世界株で大きく値下がりしました。2007年には米国バリュー株は-14%と一人負けしています。
クオリティ株のバブル崩壊期の下落幅は低ボラティリティ株とその他ファクターとの中間にあります。
また下落した後は、下落幅が大きいほど反騰が大きくなる傾向にあります。ただし強気相場でリターンが大きくなるモメンタム株は、2008-09年のように大幅下落後も回復が鈍い場合があります。
クオリティ株が低ボラティリティ株とその他ファクターとの中間に位置することは、各ファクターのリターンの相関関係を見ることでより一層理解できます。
下図のように、クオリティは低ボラティリティと相関が最も強く、高配当、バリューとも結構大きなな相関があります。
逆に低ボラティリティにとって、クオリティは唯一相関が強いファクターとなっています。
クオリティは収益性の大きさや負債の少なさが評価要因であり、これらに優れる企業は景気後退や金融危機による業績の悪化を最小限に抑えやすくなります。これが好感され、危機時の株価変動も相対的に小さくなります。
クオリティは、低ボラティリティを満たすための重要な要素であり、「低ボラティリティのサブセット」とみなすこともできるでしょう。
今度は株価がピークアウトし始めた頃に投資した場合の累積リターンについてみていきます。
下図は米国株と世界株の、株価がピークアウトし始めた頃から次の株価のピーク年までの累積リターンと、2001-19年までの累積リターンを示したものです。
「2001-2007」というのは、2000年末に「100」だけ投資したときに、2007年末に投資額がいくらになったかを示しています。その他も同様です。
2001-2019までの長期で見ると、リターンの順序は次のようになっています。
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以上から少なくとも次のことが言えそうです。
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近々、バリュー株の時代が訪れる?
アボマガでは割安で高配当利回りな銘柄に投資し、配当再投資を繰り返すことで、大きな配当収入を得ることを目標としてきました。
利益を内部留保し将来の成長のために再投資をするよりも、株主還元の方が合理的と判断する企業が配当金を支払うため、必然的に大型株が多くなりやすくなります。
先ほどの分析で、バリュー株と高配当株がバブル崩壊期に大きな下落を伴うことを知り、驚いた方もいらっしゃるかもしれません。
ここで気を付けないといけないのは、バリュー株と高配当株に含まれやすい銘柄群にセクターの偏りがあると考えられることです。
今回の分析で利用したInvescoのレポートで、バリュー株はP/Bレシオ(株価純資産倍率)の割安さで上位20%にある銘柄と定義されています。
P/Bレシオは、エネルギー、素材、金融・不動産、ユーティリティという資本集約型産業が低い一方で、非耐久消費財、ヘルスケアは高い傾向にあります。
つまりここでのバリュー株は、ユーティリティを除き景気変動を受けやすい産業が多く含まれていると考えられます。高配当銘柄についても、株価が下がるほど配当利回りが高まるため、バリュー株と同様に景気変動を受けやすい銘柄が多く含まれていると思われます。
ソース: Siblis Research
特に2007-08年はサブプライムローン危機に端を発した金融危機で銀行株が暴落したことが、バリュー株のパフォーマンスを大きく悪くしました。
ここで視点を変えて、バリュー株が現在どの立ち位置に入るのかを、グロース株との比較で調べてみます。
下図は米国大型株のグロースとバリューの株価比率(グロース株価÷バリュー株価)です。上にいくほどグロース株が相対的に高いリターン、下に行くほどバリュー株が相対的に高いリターンであることを示します。
重要なことは、グロース株とバリュー株の力関係にはサイクルがあることです。
ドットコムバブル期にグロース株が大きくアウトパフォームしましたが、バブル崩壊後は反転し、バリュー株が急速にグロース株をアウトパフォームしていきました。2005-06年ごろに過去40年でバリュー株の評価がピークに達しています。
その反動で、サブプライムローン危機から現在までグロース株がアウトパフォームしてきました。
上で触れた、サブプライムローン危機から現在にかけてバリュー株が他のファクターと比べてリターンが小さい理由は、2001-07年にバリュー株が過大評価された反動というわけです。
このサイクルを見る限り、次のバブル崩壊後は再びバリュー株が復権しそうです。
画像ソース: Longtermtrends
より長期で「グロース株÷バリュー株」の推移をみると、新たな見方が得られます。
・・・
そのため、次のバブル崩壊期には割安・高配当株に積極的に手を出していただきたいと思っています。配当再投資でじぶん年金をつくるうえで、割安で高配当株に投資することは必須であると考えます。
株価暴落期にチャンスを掴むために持っておくと良い投資イメージ
配当再投資では株価が下落するほど再投資できる株数が高まり、複利効果が強まるため、株安は良いことだというのは、アボマガ読者にとって常識でしょう。
しかし株価が大きく下落する前に購入するよりも、ある程度下落したときに投資して再投資したほうが、同じ金額でより多くの株を買えるため、当然将来の資産価値・受取配当金は大きくなります。
前回の号外で、株価は平均への回帰という法則に基づき、本源的価値を上下に変動しながら推移するとのイメージ図を載せました。
これをベースに考えると、緑で囲んだ部分、本源的価値を下回り始めてから大底に達する少し前までの期間に、バリュー株や高配当株に投資するのがベストです。
重要なことは、同じバリュー株・高配当株でも、こうした積極的な買いタイミングが生じるタイミングや、投資タイミングごとのリスク・リターンは銘柄の特徴ごとに異なることです。
・・・
以上のことから、今後のバブル崩壊期には、次のような考えのもとで投資されると良いのではないでしょうか。
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