2018年のある時点から、日本の海外送金環境がやや厳しくなっている可能性

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日本の海外送金環境、悪化しています

2018/09/20
(最終更新日:2019/08/19)

 

 2018年半ばごろから、日本における海外送金環境が悪化しているようです。

 

 今日まで約20件、お問い合わせされた方々から海外送金の成功・失敗事例のご報告を受けてきました。

 

 お問い合わせ内容や個人的な調査により、現時点での海外送金環境や海外送金を成功させるためのポイントは以下となります。

 

  • 2018年以降の日本の海外送金環境は、以前に比べてほぼ間違いなく悪化している。この環境は少なくとも2019年末~東京五輪後まで続きそう。最悪、東京五輪後にさらに環境が悪化する可能性がある
  • 金融庁による不正海外送金対策強化が関連していると思われる。これは邦銀による国際送金業務の国際的な信用回復・維持が目的であるが、最悪の場合事実上の資本移動規制に発展する可能性も否定できない
  • 海外送金するためには、送金元・送金先の名義が自分であることが非常に重要。これを満たさない送金(例えばFirstradeへの送金など)は失敗する確率が結構高い
  • 送金元・送金先の名義が自分であっても、銀行側の送金前審査強化のために必ずしも送金できるとはかぎらない
  • 安心して海外送金するためには「自分名義の海外銀行口座を保有する」かつ「審査や送金手続きが不当に厳しすぎない海外送金サービスを提供する、日本の銀行口座や海外送金用口座を保有する」ことが重要

 

 海外送金を成功させるためには、次の2つの口座を持つことが重要です。

 

  • 自分名義の海外銀行口座
  • 日本の海外送金用口座

 

[自分名義の海外銀行口座]
例:米国のユニオンバンク。日本で口座開設可能。口座開設方法はこちら)

 

[日本の海外送金用口座]
以下をご覧ください。

 

[極めて重要: 2019/08/19]

 私の元へ送られてきた複数件のご報告により、2018年半ばごろから現在にかけて、日本における海外送金環境が厳しくなっているようです。

 

 背景等につきましては、以下のリンク先をご覧ください。
 →詳細はこちら

 

 当サイトではこれまで、主に手数料面に着目して海外送金におすすめの日本の銀行口座や送金用口座を紹介してきました。

 

 しかし現在は手数料云々以前に、そもそも海外送金できるのか、できたとしても追加書類の提出などの面倒な手続きを要するのか否かという面が、適切な海外送金用口座選択で最重要ポイントとなっています。

 

 以下、これまで私が受けてきた複数件の海外送金の成功・失敗事例をもとに、当サイトで紹介してきた口座について、現在もおすすめできる口座、おすすめできない口座を分類しています。

 

[おすすめできる口座]
トランスファーワイズ

 

  • 2019年でも送金に成功したという報告を複数件受けてきました
  • 口座開設や本人確認手続き、送金手続き等が、邦銀と比べ容易で、初心者に最もおすすめです。1回100万円以下の送金であれば、邦銀よりも安い手数料で済みやすいです
  • 自分名義の海外銀行口座の保有は必須です!ユニオンバンク等の銀行口座を必ず開設してください。

 

→トランスファーワイズの口座開設方法はこちらから

 

SMBC信託銀行(プレスティア)

 

  • 2019年7月時点でも送金に成功したという報告を受けました。100万円超の比較的高額送金であり、Firstradeへの送金です
  • Firstrade等、銀行口座以外に送金する場合に、どうしても海外銀行口座を開設できない方でも、海外送金できる可能性があります
  • 歴史的に海外送金サービスが強かった、シティバンクのリテールバンク部門を買収・統合したものであり、他行と比べて海外送金サービスの信頼性は高いと考えられます
  • 預金残高が50万円未満の場合など、口座維持手数料が掛かる場合がある点にはご注意ください

 

[おすすめできない口座]
ソニー銀行

 

  • 2018年秋ごろから、Firstradeへの送金に失敗したというご報告を複数件受け取ってきました
  • 2019年8月に、自分名義の米国銀行口座への送金に失敗したというご報告を受け取りました
  • 公式サイトをみるかぎり、審査書類の提出、送金限度額などの規制が厳しく、内部審査をかなり強めている可能性があります

 

 海外送金環境が厳しくなっているのは、マネーロンダリング対策強化が名目です。ソニー銀行の対応は、たくさんの無実の海外送金希望の顧客を必要以上に資金洗浄容疑者扱いしてバッサリと斬り捨てているとみられても仕方ありません。

 

 Firstradeなど海外法人口座宛への海外送金の規制強化ならまだわかりますが、自分名義の海外銀行口座への海外送金でも規制を強め、顧客への書類提出や送金額制限等の要求を強めるのはさすがにやりすぎです。これではもはやマネロン対策というより、資本移動規制に近いものです。

 

 海外送金用途でのソニー銀行の口座開設は、実際の利用者からの複数件のご報告を受けるかぎり、現在はおすすめできません。

 

 

 最後に新生銀行については、現在まで一件もご報告を受けておりませんので実態はわかりません。

 

 

 

 以下は海外送金環境に関するお話です。海外送金環境悪化の背景に何があるのか?海外送金環境悪化はいつまで続くのか?さらに悪化する可能性がはあるのか?どのような海外送金に銀行は目くじらを立てやすいのか?

 

 こうしたことについて書いています。

 

目次

 

金融庁による不正海外送金対策強化の動き

 まず、現状の日本の金融当局の動きを、金融庁が2018年8月に公開したこちらの資料をもとに説明します。
【金融庁】マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題

 

 2018年2月に金融庁が「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を公表しました。このガイドライン公表後から、金融庁は各邦銀に対する、海外送金におけるマネーロンダリング・テロ資金供与防止対策強化に乗り出したと考えられます。

 

 金融庁が2018年2月にガイドラインを公表した理由は、大きく次の2つです。

 

  • 現在、日本の銀行によるいくつかの海外送金や国際決済の事例を海外当局や海外議会が問題視しており、日本金融システムの国際的な信用喪失を防止するため
  • FATFによる日本金融システムのマネーロンダリング対策等に関する審査(第4次FATF対日相互審査)にパスするため

 

 FATFとは、マネーロンダリング(資金洗浄、マネロン)対策における国際協調を推進するため、1989年に設立された政府間会合です。OECD内に事務局が置かれています。

 

 FATA対日審査とは、日本金融システムがマネーロンダリング対策等を十分に取っているのかを判断する審査です。

 

 もし審査に通らないとフォローアップの対象となり、法改正などの適切な対応を迅速にとることが必要になり、もし長期間十分な対策を取らなければ、いずれFATFのブラックリストに掲載され、日本の金融機関が国際金融から排除されるリスクがあるという、国際送金において極めて重要な審査です。

 

 実は2008年の第3次FATF対日審査結果で、当時49あった勧告のうち過半数にあたる25で不備があると指摘され、日本金融システムマネロン対策は不十分でフォローアップの対象となりました。

 

 その後日本政府は小手先の法改正を行ったものの、不十分な対応にとどまり、しびれを切らしたFATFは2014年に日本は「最も対応が遅れている国」と警告、ようやく日本政府は重い腰を動かしマネロン対策の関連3法案が成立し、2016年10月にようやくフォローアップから卒業しました。

 

 第4次FATF対日審査は、フォローアップから卒業後の最初の審査であり、日本の金融システムがマネロン対策等、国際送金業務において適切な対応を継続しているかが問われる、非常に重要なものとなります。

 

 つまり、金融庁は日本の金融機関がこれからも国際的なルールの枠組みで国際送金を行えるよう、審査を前に万全の準備をしておきたいのです。これが、2018年のある時点を境に日本の海外送金が以前よりも厳しくなっている一番の理由だと考えられます。

 

 2019年秋にFATFのオンサイト審査(FATFの代表団が来日、現地審査)が実施され、審査結果は2020年8月ごろに出る予定です。そのため2019年末~東京五輪後まではこれまでより海外送金しにくい環境が続きそうです。

 

 万が一、審査結果で落第点を食らい再びフォローアップの対象となれば、東京五輪後に日本の海外送金環境はますます悪化する可能性も否定できません

 

 現在の日本の海外送金環境の悪化は、あくまでもマネロン対策強化によりFATFの審査にパスするためです。しかし場合によっては、実質的な資本移動規制に発展する可能性も否定できないのが現状です。

 

 もし海外送金をご検討の方は、できる限り早めに行うことが肝要であると思われます。東京五輪が始まる前にはある程度済ませておくことが望ましいです。

 

不自然な海外送金事例から考えられる対処法

 では金融庁はどのような海外送金の事例を問題視しているのでしょうか。「日本の某銀行→Firstrade(米国証券会社)への海外送金が出来ない」という問題に関係するであろう事例が見つかりました。

 

※太字・赤字は私が付加したもの

事例1 不自然な送金が実行された事例

 

<概 要>
約1か月の間複数回にわたり、金融機関の個人口座に現金で持ち込まれた多額の現金が、十分な確認を経ず、外国銀行の海外法人口座に送金された
<事案の経過>
顧客がこれまで個人取引を行っていた支店や他の支店に、複数回にわたって現金を持参し、その都度、口座への入金及び全額の海外への送金を依頼。資料を提示しながら海外法人への貸付目的と説明した。
送金依頼を受けた金融機関は、当該送金人の住所・氏名・送金目的を示す資料が揃っていることから、犯収法等の違反はないとして送金取引を実行。送金に当たって、海外送金責任者に速やかに情報が報告されず、管理部門にも情報伝達が行われなかった。
<課 題>
多額の現金を持参して口座に入金し、海外法人に対して、貸付金の名目でその全額を送金するといった、当該顧客にとって、これまでにない不自然な取引形態であったにも拘らず、犯収法等で規定された最低限の資料の確認(本人確認等)に止まり、送金目的の合理性、送金先企業の実態・代表者の属性、資金源等、送金のリスクについて実質的に検証が行われず、複数回の高額送金が看過された。
短期間のうちに頻繁に、多額の、取引直前の現金入金による送金が続いた点等を踏ま
え、営業店又は管理部門で危険性を検知し、取引実行の前に、以下のような点を確認すべ
きであった。
- 検証すべきだったポイントの例 -
・ 取引直前の現金入金に基づく多額の現金送金の合理性
・ 短期間に頻繁に多額の送金が行われる事情
・ 個人の生活口座を通じ海外企業に送金することの合理性
・ 貸付の経緯、送金の資金源
・ 入金申込のあった支店で取引を行う合理的な理由
さらに、外部からの指摘を受けるまで問題意識を持たず、再発防止策や態勢見直し等の対応を行っていないほか、海外の送金先口座からの資金の移動状況を、送金先銀行に確認するなどの情報収集を行っていないなどの課題が見られた。具体的な対策の実施と併せて、ガバナンスの強化や関連部署間の連携が重要となる。

 

 上の事例および金融庁の報告項目(固有リスク)をみるかぎり、次の要素が海外送金の成否に関わりそうです。

 

  • 送金額(高額だと送金できない確率が高まる。200万円が一つの目安)
  • 送金先の海外口座種類(個人または法人。法人口座だと送金できない確率が高まる)
  • 送金頻度(頻度が多いと送金できない確率が高まる)
  • 送金目的

 

 Firstradeといった海外証券会社に送金する場合、2番目の「送金先の海外口座種類」に必ず引っかかります。送金相手が「海外証券会社」や「海外証券会社が提携している清算機関(クリアリングハウス)が保有する法人口座」といった法人口座となるためです。

 

 必ずしも「邦銀→海外証券会社」への海外送金ができないとは断言できません。実際、私は2018年に「SMBC信託銀行→ユニオンバンク(6月)」や「ワイズを使った、日本とユニオンバンクとの双方向海外送金(3-4月)」に成功しています。

 

 金融庁が提示する不自然な海外送金の事例を見る限り、次の3つを守れば海外送金ができる確率は高まると考えています。

 

  • 1回の送金額を高額にしすぎない(目安は200万円以下)
  • 送金先を個人口座にする(特に自分名義の個人口座)
  • 送金頻度は多くても1ヶ月に1回にする

 

 特に重要なのは2番目です。2番目を満たすためには海外の銀行口座を開く必要があります(ユニオンバンクなど)。

 

 海外の銀行口座を一つ持っているだけで海外送金の利便性は大きく高まりますので、これを機に1つ開設しておくと良いかもしれません。

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