ビットコイン価格だけでなく、金属価格のカギも握る中国
2018/01/19
【2018/01/19 ブルームバーグ】亜鉛は3年連続の供給不足に、鉱石足りず異例の長期上昇招く-三井金
亜鉛生産で国内最大手の三井金属は、2018年の世界の亜鉛地金の需給バランスが26万トンの供給不足になるとの予測をまとめた。供給不足は3年連続となる。原料の鉱石不足が要因。世界最大手のスイスのグレンコアによる減産や中国での環境規制の強化に伴う鉱石減産で、地金需要の伸びに供給が追い付かない。
ロンドン金属取引所(LME)の亜鉛価格は15日、1トン当たり3440ドルまで上昇し、07年8月以来となる10年5カ月ぶりの高値を付けた。06年に4300ドル超の過去最高値を付けた際は、中国の需要急増を背景に価格は1年で2倍になったが、今回は16年1月を底に上昇を続けている。
最近金属価格が大きく上昇しているが、世界の金属需要の約半分が中国。中国経済がダメになれば金属価格も一時的に大きく下落するだろう。例えば中国不動産バブルの破裂はカタリストになるだろうね。
(今回指す金属とは産業用金属のことです。貴金属のことではありません)
金属需要の伸び率は減っているのに金属価格は増えた
リーマン・ショック以降、金属価格は2015年終わりまで趨勢的に下落を続けてきました。
しかし2016年から金属価格は上昇しはじめ、2017年にかけて亜鉛をはじめ多くの金属価格が上昇してきました。
下図のように亜鉛だけでなくパラジウム、アルミニウム、銅、ニッケルといった金属価格がここ2年で大きく上昇しているのがわかります。
左画像ソース:World Bank ※PDFファイル
右画像ソース:Bloomberg ※PDFファイル
2016年初めから金属価格が上昇した要因として、中国におけるインフラ・不動産開発や製造業の経済活動活発化が理由にあげられています。
中国の金属需要は全世界の金属需要の半分にも達しますから、中国の金属需要が2016年以降の金属価格上昇にあると考えるのは間違いないでしょう。
画像ソース:World Bank
また供給面をみても、中国は最近大気汚染対策で製鉄・アルミ工場や鉄鉱石処理プラント、溶鉱炉等の閉鎖により稼働率が低下し、精製金属の需給がタイト化しているといわれています。
再び需要面をみると、実は2016年以降の中国の金属消費成長率は2011年や2014年と比較するとそこまで伸びていません。
画像ソース:World Bank
また鉱工業生産や固定資産投資の前年比伸び率の推移をみても、中国のインフラ・不動産開発等の活況により金属価格が上昇し始めたとされる時点の2016年以降、特に上昇しているようには見えません。
画像ソース:Investing.com
中国金融当局による金融引き締め策によるインフラ・不動産投資のペース鈍化が不安視されていますし、ここ2年の金属価格上昇を裏付ける基盤は強そうにはみえません。
中長期でみれば、例えば亜鉛は生産量が2020年をピークに減少し始め、2025年には4.3メガトンの亜鉛が不足するという予測もあります。いずれアジアの新興国を中心としたインフラ開発の活発化もあるでしょうし、中長期では金属価格が上昇するのは理解できます。
ただその前に中国経済が一時的にダメになって金属価格が暴落することは十分考えられそうです。リーマンショックのときも一時的に金属価格は半値以下になりましたし。
中国の不動産バブルがもし崩壊すれば、金属価格にも短期的に大きな悪影響があるでしょうな。
最近のビットコイン価格の4割暴落の要因の一つが中国政府による暗号通貨への取り締まり強化(マイニング事業の停止を地方当局に通達など)だと言われていますが、金属価格の短期的な将来も中国の不動産バブルの動向がカギを握っていると思われます。
それくらい、中国は世界に大きな影響を与える国になっているのです。トランプなんかよりもずっとずっと、注目すべき対象なのです。
チャイナ・ショックは舐めないほうがよさそうです。
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