12月のFOMCによる利上げ判断をFedが被る責任の大きさの観点から考えてみた


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12月のFOMCによる利上げ判断をFedが被る責任の大きさの観点から考えてみた

2016/11/24

 

 今回は12月のFedによる利上げの可能性を、Fedが被る責任の大きさという観点から考えてみました。すると市場に与える影響だけではなく、世界のあり方にも大きな変化をもたらす可能性すらあるように思えてきたので、ちょっとメモしておくことにしました。

 

 →【2016/11/05 ブルームバーグ】12月の米利上げ確率、トランプ氏勝利なら急低下か
 →【2016/11/16 ブルームバーグ】米国の12月利上げ予想は100%に接近-トランプノミクスに期待感
 →【2016/11/24 ブルームバーグ】慎重なFOMC、12月についに動くか-労働市場は利上げに耐え得る

 

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 現地時間12月14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げするかどうかの判断を行う予定となっています。

 

 上のニュースの見出しからもわかるように、米国大統領選挙直前の段階では市場はトランプ大統領の当選が利上げ確率を下げるだろうと考えていたのが一転、トランプが次期米国大統領に決まってからは利上げ予想が急上昇しており、現在は100%です。

 

 背景にはすでに株式相場は最高値を更新し、市場のインフレ期待が上向いており、消費者心理もトランプ当選後に改善していることがあるとされています。

 

 さてFedは本当に12月のFOMCで利上げするのでしょうか?これは本当にわかりません。ただFedの立場で考えれば、12月の利上げは本音ではしたくないのではないでしょうか。

 

 というのは12月に利上げしてしまうと、トランプが大統領に就任する前に世界市場の暴落や金融危機の鮮明化が生じることが十分考えられ、市場暴落や金融危機誘発の責任をFed(およびオバマ政権)が負うことになりかねないからです。

 

 過去8年間のオバマ政権がもたらした結果といえば「アメリカの弱体化」に関するものばかりです。歴代米国政権で最大規模の債務の積み上げ、労働生産性の低下、家計所得の中央値の低下(格差の拡大)など、財政や経済、格差の悪化ばかりが進みました(→ソース1→ソース2→ソース3)。

 

 そうした中で唯一オバマ政権が誇れるのが米国の株高、バブルの演出です。この株高が何によって達成されたかといえば、Fedをはじめとした中央銀行の量的金融緩和政策です。

 

 つまりオバマ政権を評価するにあたっては、Fedとの二人三脚の関係を無視するわけにはいかないのです。

 

 そうした中でもしFedが利上げに踏み切れば...金利が上がって現金確保が急務にわけですから市場暴落は避けられないでしょう。またさらなるドル高で海外(新興国など)のドル建て債務の返済負担が大きく増えますから、世界金融がパニックに陥ってしまうでしょう。

 

 よってFedによる利上げは、オバマ政権の唯一とも言える成果をも弾けさせてしてしまう危険性をはらんでいるのです。オバマ政権とFedの関係を考えれば、オバマ政権への非難がFedにも同じように向けられるのは避けられないでしょう。

 

 そう考えると、まだオバマが大統領に就任している12月にFedが利上げするのは、Fedの信用毀損にもつながりかねず、Fedが大きな不利益を被る可能性のある極めてリスキーな選択なように思えます。

 

 またトランプも9月の大統領候補討論会で「利上げしたら、非常に悪いことが起こるだろう。彼らはやるべき仕事をしていないからだ」など、Fedやイエレン議長に対する挑発や非難を繰り返し述べてきました(→トランプ発言リスト)。

 

 こうしたなかでトランプの大統領就任前にFedが利上げすれば、Fedはトランプの挑発に乗ってしまうことになります。

 

 もしトランプが大統領に就任するまで利上げを控えておけば、メディアがトランプ政権時に起こった米国内不況や国際問題の悪化などをすべてトランプのせいだと喧伝している最中にでもFedは利上げを行い、利上げによる影響に関する責任をトランプに転嫁させる戦略もとれないこともないでしょうし。

 

 そう考えると、12月に利上げしないという選択はますます妥当なように思えます。

 

 責任を回避したいのは組織の性です。Fedのような権限のある組織であればなおさらです。そう考えれば12月にFedが利上げしないというのは現実的な判断ではないでしょうか。

 

 もっとも、現在まで市場は12月のFedの利上げは確定的だと考えているため、Fedが利上げしないという決定を下せば市場を裏切ることになります。それがFedの信用や市場にどれだけの悪影響を及ぼすのか...利上げの先送りにはそういったリスクがあることも確かです。

 

 また利上げの先送りは金融政策の権限をめぐるトランプとイエレンの争いを生じさせるものと考えられますが、イエレン議長は「金融規制の時計の針が巻き戻されるのは見たくない」という発言をしており、精神的に行き詰っているのかもしれません(そうでなければ「見たくない」とは言わないはず)。

 

 さらにもうすでに米国債はじめ世界中の国債価格が急落していますから、たとえ利上げしなくともトランプの大統領就任までに市場が持ちこたえられず「座して死を待つ」ことが考えられ、結局金融政策の責任をFedが負うリスクも考慮しなくてはなりません。

 

 そういう面も考えると、ひょっとすると市場の予想通りにFedが利上げに踏み切ることもあり得ます。ただそうなるとFedは自身の金融政策の権限維持に関わる、生きるか死ぬかの一世一代の賭けに出ることになるでしょう。

 

Fedが12月に利上げしても責任を回避する手段はないわけではない

 上に書いたように、12月のFOMCでの利上げ決定はFedにとってかなりリスキーな選択だと考えられます。

 

 しかしもしFedが12月に利上げを決定しても(そうすると世界市場の暴落はおそらく避けられませんが)、Fedの責任を回避する手段はないわけではありません。

 

 Fedが12月に利上げして困るのは、来年1月にトランプが大統領に就任してから、利上げによる市場暴落の責任をFedに負わされることです。トランプは米国経済の復活を声高に言い続けてきましたから、大統領就任直後に「オバマやイエレンにめちゃくちゃにされた米国経済を復活させる」とでも言われてしまえば、トランプが国民の支持を取り付けながらFedは悪者扱いされるでしょう。

 

 裏を返せば、もしトランプが1月に大統領に就任できない環境になっていればFedは利上げ責任を回避しやすくなるというわけです。

 

 実は非常事態宣言を出して大統領職を継続する法的枠組みがアメリカにはあるのです。もしそれをオバマ大統領が発令すれば、来年1月のトランプの大統領就任は延期されるでしょう(→ソース)。

 

 Fedが利上げすれば世界市場は大パニックになるでしょう。さらに市場が混乱しているときにアメリカで再び9.11のようなテロが起こったり大規模停電や大規模地震が起こるなり、何かしら全米を大パニックに陥れる出来事が同時多発的に起これば...?

 

 そうなれば見事非常事態がつくられ、オバマはトランプに大統領の座を渡さずに済みます。さらに非常事態宣言を出せばFedの利上げによる悪影響を隠蔽しやすくなるでしょうから、利上げに関するオバマ政権やFedへの非難を抑えることにつながるでしょう。

 

 フランスでは昨年のパリ襲撃事件を口実にオランド大統領によって非常事態宣言が出されて現在まで継続中、しかもフランス政府の監視権限を強化させることにつながる、フランス全国民の個人情報に関するデータベースを作成中です。

 

 ドイツのメルケル首相は軍事力強化に関する発言インターネットニュースへの非難をし始めています。日本では安保法制のもとで南スーダンでの駆けつけ警護が自衛隊の任務に付与されました。

 

 オバマ氏、オランド氏、メルケル氏、安倍氏、全員中央銀行の量的・質的金融緩和政策による株高に支えられてきた方々です。このうち後者3名が最近、国家統制化に通ずるような政策や発言をしているように見えますが、果たしてオバマ氏はどうするのでしょうか?

 

 こうした目線で見れば、オバマ大統領がFedの利上げを契機に非常事態宣言を出す可能性も、決してゼロとは言いきれないのです。そしてこの可能性が現実化するか否かが、利上げ後のFedの金融政策の権限を維持できるかどうかのキーの一つになると個人的に考えています。まさに一世一代の賭けです。

 

 何らかの世界を揺るがす異常事態が起こるなどして、市民や市場の目線が一斉にそちらに向かえばFedはいままでの金融政策の責任を逃れたり抑えたりできるかもしれません。しかしそうでなければFedの信用失墜も免れない、そういった可能性は決して低くはないと思えるのです。

 

 そのくらい、今度のFOMCには極めて大きな意味があるのではないでしょうか。

 

**********

 

 12月のFedによる利上げの可能性を、Fedが被る責任の大きさという観点から見てきました。

 

 そこで見えてくるのは、Fedが利上げしようがしまいが市場に大きな影響を与えることが十分考えられるだけでなく、Fedの今後の金融政策上の権限や先進国のあり方にも大きな影響を与える可能性です(特に利上げした場合)。

 

 FOMCの開催は12月の13-14日ですが、直後の15-16日にはEU首脳会議が開催されます。また12月4日にはイタリアの国民投票もありますから、12月の1ヶ月間は世界中で予想だにしない大きな動きが続々と起こるかもしれませんね。

 

 過去30年にわたって中央銀行が金融政策の権限を握ってきましたが、12月のFOMCとその後の動きによっては中央銀行のあり方さえも変わってくる、それくらいの大変動がありそうです。金融関係者だってトランプに擦り寄ってる人が続出中みたいですし、中央銀行がもつ金融政策の権限は全く安泰じゃないですよ。

 

 12月のFOMCはもういろんな意味で要注目となりそうですね。

 

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