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金融危機勃発懸念のあるトルコの経済・金融指標を調べてみた

2017/01/17

 

【2016/01/13 ロイター】トルコ大統領、最安値更新のリラ防衛で「国民結集」訴え

 

トルコのエルドアン大統領は12日、リラの対ドル相場が前日に過去最安値を更新したことを受け、投機的な動きから通貨を防衛するために国民が結集するよう訴えるとともに、中央銀行に適切な対応を求めた。

 

エルドアン氏は「投機筋は為替レートを武器にしてトルコ国家を転覆しようとしている。もちろんわれわれは問題を抱えているが、そうした面ではリラの現在のレートはまったく説明がつかない」などと発言。昨年7月のクーデター未遂事件で人々が戦車を阻止するために街頭に繰り出した状況を引き合いに、今こそ国民的な運動の形で外貨を売って投機筋に対抗するべきだと強調した。

 

トルコの政治・経済を巡る不透明感を背景に、リラは対ドルで年初から最大10%下落し、主要通貨で値動きが最もさえない。クーデター未遂事件以降の下落率はほぼ25%に達している。

 

エコノミストは、さらなるリラ安を防ぐには中銀が大幅な利上げに動く必要があるとみている。しかしエルドアン氏や政府が景気減速を食い止めることを専一に考え、投資促進のための借り入れコスト低下を強く望んでいる以上、中銀としても利上げに踏み切れないでいる。

 

・・・

 

HSBCアセット・マネジメントのストラテジスト、イブラヒム・アクソイ氏は「中銀は流動性手段を使って、政策金利を動かさずに市場金利を引き上げようとしている」と指摘した。

 

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 最近、トルコの金融に関する動きが慌しいのでずっと気になっていました。

 

 昨年、トルコの与党・公正発展党(AKP)はエルドアン大統領の任期を2029年まで延長するための憲法改正法案を提出しました。事実上のエルドアン大統領権限強化のための法案で、早ければ今年5月に憲法改正の是非を問う国民投票を行うとしています(→ソース)。

 

 トルコは昨年のクーデター未遂を機にロシアと急接近しており、昨年末にはロシアとともに、米国抜きのシリア停戦合意を発表したことで、外交面でも存在感を出してきています。

 

 このようにエルドアン大統領にとっては政治面では順風満帆のように見えますが、いま大統領権限の拡大を阻む最大の敵がトルコ内部に渦巻いています。

 

 それはトルコ内部の経済・金融事情です。実はトルコの最近の金融関連のニュースや過去の経済指標を見ていくと、トルコはいつ金融危機が勃発してもおかしくないくらい脆弱な状況にあることが見て取れます。

 

 最近トルコリラは米ドルに比べて急速に安くなっている状況で、トルコ政府の経済の役人からはトルコのインフレ率が10%を超えるのではないかとの懸念が出ています。

 

 事実、16日にはエルドアン大統領が中央銀行総裁を含めた経済の役人たちと会談を行い、インフレ対策について協議する予定となっています。

 

 トルコは2014年以降、民間債務と対外債務が急速に増えていきました。対GDP比でみた民間債務は、2013年には127.47でしたが、2015年には192.12にまで急増しています。

 

 また為替の影響を受ける対外債務を外貨準備高との比較でみると、2013年の対外債務は外貨準備高の3.5倍でしたが、2015年には4.27倍にまで増えています。これは最近やはり通貨安が進行しているメキシコなどと比べても遥かに大きい水準なのです。

 

新興国の対外債務-外貨準備高比

ソース:世界銀行

 

 さらに短期の対外債務に限定して考えると、トルコは外貨準備高の1倍超の短期対外債務を抱えています。つまりトルコは外貨準備だけで満期1年未満の短期の対外債務を払いきることができないのです。流動性リスクや信用リスクはかなり高いんではないでしょうか。

 

新興国の対外短期債務-外貨準備高比

ソース:世界銀行

 

 これら対外債務の水準は、どうやらアジア通貨危機時のASEAN諸国と同レベルにあるようです。

 

 現在トルコの外貨準備高は減少傾向にあり、2012年以降急速に増やしてきた金準備も2016年以降減少が目立ちます。金準備が十分増えた後はトルコのインフレ率は一度も10%に達していないのですが、もし今後リラ防衛のための為替介入措置が行われた場合、外貨準備不足がインフレ率急増の引き金となるリスクも考えられます。

 

トルコの金準備高・インフレ率

画像ソース:Trading Economics

 

 失業率は常に高水準ですし、労働時間も諸外国と比較して長く、GDPに占める所得の割合(自営業者も含む)を見てみると、メキシコや経済状況の悪い欧州諸国と比較しても悪いです(下図)。トルコの労働環境はかなり劣悪であるのかもしれません。

 

トルコの労働賃金

画像ソース:International Labour Organization

 

 民間債務が引き起こす金融危機は経済にも大きな影響を与えるものですし、対外債務の多さはリラ安の進行と同時により深刻になっていきます。しかもトルコは元々インフレ率が高い国で、しかも輸入超過の国ですから、リラ安とインフレ率増加のスパイラルが生じるとトルコ国民の生活にも大きな影響が出ることが予想されます。

 

 ただでさえトルコの労働環境は悪く、国民の生活への不満を感じ取れますが、さらに金融危機が引き金となって経済にまで悪影響が波及していくと、国民の不満がさらに高まって政治リスクに発展する可能性だってあるのです。

 

 最近トルコの中央銀行は、外貨準備預金率を0.5%引き下げ(15億ドルのドル売りリラ買いにつながるとされる)、銀行間取引の借入額の上限を従来の半分に変更するというリラ高政策を打ち出しています。さらに金融機関に対して高率で借入をするよう圧力をかけたり、政策金利を据え置いたまま流動性低下策を取るといった「ベールに隠された」金融政策もとってきました(→ソース1→ソース2)。

 

 エルドアン政権にとっては大統領権限強化のための国民投票の前に、国民の支持を失うことに直結する金融危機の勃発はなんとしても避けたいのでしょう。

 

 ちょっと経済、金融面でトルコは怪しくなってきました。

 

**********

 

 トルコの金融・経済危機が勃発したときに世界金融や経済にどのような影響を与えるのかはわかりませんが、政治的には影響が大きそうです。

 

 エルドアン大統領の娘婿がISとの原油取引に関してズブズブの関係にあることから、他にもエルドアン大統領がテロリストと何らかの関わりがあることが十分考えられます。

 

 エルドアン大統領の力が弱まってしまうと、他のテロリストとの関係等が暴露されるリスクがありますし、さらにその影響が世界に飛び火する可能性があるんですよね。例えばISから仕入れた原油や石油製品がどの国に輸出されたかが明らかにされるだけでもインパクトは相当大きなものになるでしょう。

 

 日本も決して無関係と言えるかどうかはわかりません。外務省のホームページをみると、安倍政権になってから安倍首相をはじめ、様々な日本の要人がトルコの要人と何回も会っていますよ。過去を明らかに上回るペースで。

 

 1993年以降滞っていた二国間協定も、安倍政権誕生以来3つも署名、発行されています。「原子力協定 (2013年署名,2014年6月29日発効)」、「トルコにおける原子力発電所及び原子力産業開発協力協定 (2013年署名,2015年7月31日発効)」、「トルコ・日本科学技術大学設置協定(2016年署名,2016年11月11日発効)」...

 

 日本とトルコのあいだにおかしな関係がなければ良いのですが...

 

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