中国高インフレ化のスイッチが押された
2018/07/13
今後、中国インフレ率の推移は要チェック!
中国高インフレ化のスイッチが押された
今後気になるのは、中国のインフレ率です。
米国は中国に対し、耕運機、半導体、航空機品といった製造業関連品目に追加関税を課したことが特徴です。
一方、中国は米国に対し、大豆、トウモロコシ、豚肉、鶏肉といった食料品に追加関税を課したことが特徴です。
今後予定される第2弾では、中国は原油・天然ガス(LNG除く)というエネルギーに追加関税を課す予定です。
中国は貿易戦争を通じて食料、エネルギー調達コストが上昇し、今後インフレ率が高まることが懸念されるのです。
大豆について少し調査してみました。大豆は豚肉の飼料用に多く用いられ、中国のたんぱく質サプライチェーンに大きな影響を与えることが懸念されています。
以前の記事にも書いたように、中国は昔から、食料品価格の上昇がインフレ率上昇の主要因となってきました。2010-11年のインフレ期でも、旱魃や洪水という天候不順による食料品価格の高騰(穀物、豚肉、野菜、果物等)がインフレ率上昇を招いてきました。
【FACTS AND DETAILS】GROWTH AND INFLATION IN CHINA IN 2010 AND 2011
画像ソース:Reserve Bank of Australia ※PDFファイル
2017年の中国の輸入国別大豆輸入量は以下の通りでした(カッコ内は占有率)。
- ブラジル: 5100万トン(47%)
- 米国: 3100万トン(37%)
中国が米国からの大豆調達を減らせば、ブラジルを中心に大豆を調達することになります。
下図は米国農務省による、2017-18-19年に掛けての大豆生産国・輸入国の大豆在庫量の見積もりを私が見やすくまとめたものです。
今後2年間で大豆在庫量は10%超低下する見通しです。米国以外の主要大豆輸出国の大豆在庫量は17%も減少する見通しです。
唯一、米国だけは大豆在庫量が増える見通しですが、中国はその米国に対し大豆追加関税を課すことになります。
なお、この見通しには中国の大豆追加関税による影響は織り込まれていません。
ソース:米農務省 ※PDFファイル
※以下、「主要大豆輸出国(生産国)」という言葉は「米国を含んでいない」ことにお気をつけください。
上図から、米国産大豆に関税を課すことで、中国は今後大豆調達費用が増加することは明らかですが、少しだけ計算してみましょう。
米国産大豆に25%の関税を掛ければ、同じ額で米国から輸入できる大豆総量は2割低下します。「3100万トン×2割=620万トン」の大豆を毎年米国以外から調達する必要がでてきます。
中国は11-3月に米国から大豆を輸入する傾向があるので、2019年末までは大まかに「620万トン×1.3=806万トン」程度を主要大豆生産国から輸入する必要が出てきます。
そうすると、主要大豆輸出国の大豆在庫量は「6308万トン(2017)→4420万トン(2019)」に減少します。たった2年間で主要大豆輸出国の大豆の在庫が3割も減少するのです!
大豆に着目すると、早ければ今年の終わり~来年初、遅くとも来年終わりまでには中国の大豆価格や豚肉価格の高騰が起こりそうです。
人民元安ドル高の推移もおっそろしいことになっていますね。中国の資金流出問題で2015年7月から元安が進んだときと同じような状況です。
今後の記事で書きますが、中国の状況は2015年夏からの資金流出時よりも酷いと考えられます。中国政府が中途半端な態度を続ければ、今後も元安ドル高は止まらず、追加関税と合わさり中国の輸入インフレはしばらく止まらないでしょう。
画像ソース:Investing.com
中国が高インフレリスクを抱えたことで、中国は究極の二択に迫られます。続きは次回。
[2018/07/17]中国政府は究極の二択に迫られる(ただし本質的結末は同じ)
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