米国長期金利のこれまで・これから

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米国長期金利のこれまで・これから

2018/10/19

 

 こんにちは。今回は米国長期金利に関する話をします。

 

 今年8月末頃から米国長期金利が上昇し出し、再び3%を超えてきました。米国の長期金利は世界経済や世界の金融市場にも多大な影響を与え、私たちの資産防衛にも非常に重要な指標なので、この機会に書くことにしました。

 

 いままでの米国長期金利の動きの背景を分析し、その後今後の米国長期金利の中期的な動きについて考えます。

 

 結論を先取りすると、今後米国長期金利が中期的に上昇する確率は高いと考えています。つまり中期的に米国債も株式も不動産も価格が時間を掛けながらも大きく下がるリスクが高いということです。

 

[アボマガNo.22]米国長期金利のこれまで・これから

の記事(一部)です。10月16日に配信した記事です。

 

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相場急落を政治的優位に扱えるようになりそうなトランプ

 今回の記事執筆中に世界のマーケットがそろって下がりましたね。今月10日にダウ平均が前日比831ドル安となり、翌日も545ドル下落して2日間で1376ドル下がりました。9日の終値から5.2%ほど下がりました。急落は2月はじめ、3月はじめに続いて今年3回目です。

 

 また米国株だけでなく、日本株、欧州株、中国株なども下がり世界同時株安となりました。もっとも、欧州株や中国株は下落基調が止まりませんので今回の急落がどうのこうのという問題ではありませんが。

 

 10月1日から12日までの2週間に、世界の株式市場と債券市場から計6兆ドルが吹き飛んだそうです。

 

青色:米国株、水色:日本株、紫色:英国株、桃色:ドイツ株

 

 今回の世界同時相場急落の背景には、米長期金利の上昇、貿易戦争への懸念、中央銀行の金融引き締め寄りへの政策の変化に加え、インデックス投資資金の流出、ヘッジファンドによる利益確定が背景にあるのではないかと言われています。ただし直接的なきっかけが何であるのかは現時点でわかりません。

 

 ただ一つ言えるのは、トランプ大統領にとって中間選挙の大きな懸念材料が消えたことです。

 

 今回の世界同時相場急落は、トランプ大統領がFedの利上げ政策を批判した翌日です。Fedの利上げ批判は今夏に続いて2回目です。インフレ率が伸び悩むなか、米国経済成長スピードを弱めてまで利上げすることに否定的な意見を述べました。
【2018/10/09 CNBC】Trump says he doesn';t like what the Fed is doing, central bank is going too fast in raising rates

 

 今年8月末から米国長期金利が大きく上昇しだし、トランプのFed批判のときには3.2%ほどありました。米長期金利の上昇が今回の世界相場急落の要因の一つと考えることは妥当です。

 

 一方で米国のインフレ率は7月から下がり気味ですし、またトランプ発言の前日、IMFが世界経済見通しを発表し、2019年の米国経済成長率を前回より引き下げたばかりです。これより米長期金利の原因をインフレ率の上昇や米経済成長の過熱だと見る意見は政治的な力を持ちません。

 

 今回の世界相場急落は、トランプにとって現在及び将来の相場急落の責任をFedに押し付ける格好の出来事となったのです。今回の急落は投資や市場面ではとりわけ注目する必要はありませんが、今後の政治や金融政策面で大きな意味のある出来事と考えられます。

 

 今後の政治や金融政策面で大きな意味があるとは、金融政策におけるFedの独立性が少しずつ失われ、トランプ政権の金融政策面での影響力が強まり、何年か後に米国の金融政策がトランプが好む方向へとガラッと転換する可能性が高まったということです。

 

 

 さて、本題です。米国長期金利についてです。

 

 米国長期金利は前回の大統領選挙の年である2016年7月頃から現在にかけて、趨勢的に伸びてきました。当時の1.3%台の長期金利は、相場急落直前に3.2%程度まで上昇しました。現座3.15%程度です。

 

 特に2017年9月以降は、長期金利が半年以上下落するような局面が存在せず、全体的に増加傾向が続いてきました。

 

 人によっては量的金融緩和時代の余韻が残っている方もいらっしゃるかもしれませんが、すでにそのような時代は過ぎ、米国の金利上昇→市場調整局面は着々と進んでいます。

 

 個人的に、米長期金利上昇は今後も中期的に進むと考えています。そのため米国株も中期的に下落が続くと考えています。

 

 そのことを話すために、まずは2016年秋以降の米長期金利上昇要因に何が考えられるのかを改めて確認しておきたいと思います。過去を知らないで未来を考えることはできないからです。

 

 最初に結論を述べると、これまでの長期金利上昇の要因として考えられるのは次のとおりです。

 

 [2016年秋~現在]

  • Fedの利上げ
  • トランプ減税→財政赤字拡大懸念
  • 投機筋の米国債先物売りポジション拡大
  • Fedによる米長期国債売却、外国勢による米国債売却

 

 

 [2016年秋~2018年2月初め(2018年最初の世界相場急落前)]

  • 期待インフレ率の上昇
  • 原油価格の上昇
  • 米国経済成長期待の高まり

 

 [2018年2月初め(2018年最初の世界相場急落後)~現在]

  • Fedの量的引き締め(保有資産規模縮小)効果が現れ始めた
  • 米国経済成長率の拡大
  • 外国勢による米国債売却環境の進展(BEAT課税、米国による各国経済制裁に伴うドル離れ)

 

 

米国長期金利(10年物米国債利回り)

 

 (以下省略。上に挙げた要因を様々な資料や図を用いて詳しく説明しています。)

 

 以上の話を踏まえて、今度は将来の米長期金利の動きを考えていきます。

 

 (続きは次回)

 

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