新興国通貨は下がる余地あり
2019/03/14
の記事(一部)です。あるテレコム銘柄の紹介記事ですが、そのなかで触れた新興国通貨動向について掲載します。
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新興国の為替動向
現在の新興国通貨(中国除く)は、昨年9月以降上昇傾向にあるものの、昨年前半の下落前の水準には戻っていません。今年に入ってからはまた下がり始めています。
画像ソース: ブルームバーグ
昨年新興国通貨は軒並み下がりましたが、一言でいえば米国に多くの資金が流入したからです。
新興国への資金流出入フローを示す新興国キャリートレード指数(下図赤線)をみると、昨年の第2、第3四半期に新興国からの資金流出が集中したことがわかります。
この時期は米国株の上昇、米国経済が好調だった時期です。これらが生じた背景にはトランプ減税(レパトリ減税含む)による、自社株買いや設備投資の伸びがあったことです。さらにFedの金融引き締め策もありました。
これらが合わさり、米国の投資魅力度が増したことで、新興国の資金も米国に還流していきました。
しかし昨年第4四半期には再び新興国キャリートレード指数は増加に転じ、新興国に資金流入しました。今年に入ってからは再び下げています。
昨年第4四半期は米国株の急落や米国経済減速懸念が出た時期で、今年は再び米国株が上昇した時期です。
要するに、新興国通貨の動きの原因は新興国にあるのではなく、米国の財政・金融政策と欧米投資家・投機家にあるのです。
画像ソース: BIS
実際、最近の新興国市場や経済は相対的に悪くありません。先進国や中国を尻目に、新興国の株価は昨年第3四半期以降上昇してきました。
また欧州と中国を中心にPMIが下がる中、中国除く新興国のPMIは第4四半期に上昇し、これまで絶好調だった欧州のPMIを遂に上回りました。
画像ソース: BIS
とはいえ、短期的には新興国経済も、グローバル貿易の伸び減速とともに伸び悩むと思います。
欧米や中国(特に欧州と中国)の景気減速が鮮明化し、新規受注や新規輸出受注は昨年から腰くだけとなってしまいました。
画像ソース: BIS
さらに新興国相場が米国株式、債券相場と連動している事実も見逃せません。
2つ前の図をもう一度みると、株式相場は新興国含め世界的に皆同じ動きをしていることがわかります。
新興国の社債相場をみると、スプレッドの動きが欧米の社債相場(ジャンク債含む)とずっと似たような動きをしてきました。
特に昨年第4四半期以降はこれら社債相場の動きと株式相場の動きが連動してしまったことが、先ほどの株式相場推移の図と下図を比較するとわかります。
「株価上昇(下落)⇔債券スプレッド減少(増加)⇔債券価格上昇(下落)」という対応をしているのです。
米国株式相場がやられると新興国の株式相場だけでなく債券相場もやられる状況にあります。
画像ソース: BIS
こうしたグローバル経済・市場状況から、少なくとも今年は再び新興国からの資金流出が起き、米国債等への投資が進み、新興国通貨がドルに比べて安くなるリスクがありそうです。
いまのところは昨年ほど新興国通貨がドルと比べて安くなるとは思いません。米国も昨年のような政策的な追い風もなくなり、米国の市場や経済が減速しそうで、ドルもそう強くなれない状況にあるからです。
しかし日本、欧州の銀行や投資家による「円・ユーロキャリートレード」という最後っ屁も残されています。これが起こると短期的にドル高が大きく進展し、相対的に新興国通貨も大きく弱まるでしょう。
将来的には中国除く新興国は、全体として次のような明るい材料も控えています(パッと頭に思い浮かんだものだけ)。
- 人口増加
- 相対的に安い賃金
- インフラ投資の拡大
- 中国が純輸出国から純輸入国・消費国へ
- Fedの金融政策が緩和方向へ
新興国によって経済の伸びはまちまちだとは思いますが、全体的には今後、上のような追い風があり、金融政策や社会保障の問題が相対的に小さい新興国は、意外に早く経済が上向くかもしれません。
新興国通貨の大きな下落は起こっても今年~せいぜい来年までで、2020年代の早い段階で底打ちすると考えています。
ただし今年~来年ごろ、円・ユーロキャリートレードの流行リスクも含めて、新興国通貨がまだまだ勢いよく下がる余地は残されています。
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