調べてみた_中国の中央銀行によるデジタル法定通貨発行への動きなど


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調べてみた_中国の中央銀行によるデジタル法定通貨発行への動きなど

2017/04/06

 

【2017/03/27 QUARTZ】China’s central bank thinks digital currency can do one thing cash can’t

 

China’s central bank, the People’s Bank of China (PBoC), has been working to develop its own digital currency. Having recently completed a trial run of its cryptocurrency based on blockchain technology, the PBoC is moving closer to becoming one of the first central banks to issue digital money.

 

Speaking at a high-level forum yesterday (March 26), PBoC governor Zhou Xiaochuan gave one more reason for the bank’s digital-money drive: negative interest rates.

 

“If everyone is holding cash, negative interest rates become useless,” Zhou was cited as saying (link in Chinese) at the Boao Forum, an annual conference in Hainan province. “With the popularity of digital currency, cash usage will drop significantly… During extreme deflation, negative interest rates are perhaps more useful than dropping money from helicopters.”

 

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 最近、ちょっとだけ中国のデジタル通貨等の事情についてネット上の情報等を眺めていました。そういうわけで今回は個人的に気になった点をメモしておく観察記録な内容となっています。

 

 まず上に引用した報道ですが、これは中国の中央銀行である中国人民銀行が、世界の中央銀行で初めてとなるデジタル通貨の発行に近づいていることを伝えています。既に中国人民銀行は、今年1月にデジタル通貨の試運転を終えています。

 

 さらに上の報道では、中国人民銀行の周小川総裁がボアオ・フォーラムの講演で、デジタル通貨を発行する理由の一つとして、デジタル通貨導入によるキャッシュレス化によってマイナス金利政策の実効性を高めることがあることをを明確に述べています。

 

 マイナス金利政策は現在日銀やECB等の中央銀行が実施中ですが、私たち一般人目線で見れば、マイナス金利政策というのは実質金利を人為的にマイナスにすることで事実上カネを吸い取る政策のことです。

 

 カネを吸い取られることを喜ぶ人はいないので、マイナス金利政策が慢性的に続けば誰しも現金を預金から引き出してタンス預金をすることでしょう。タンス預金をすればマイナス金利政策を直接影響を受けることはなくなるからです。

 

 しかしデジタル通貨を導入して現物紙幣をいずれ廃止すれば、お金はすべて金融システムの中に閉じ込められ逃げ場を失うので、マイナス金利政策がすべてのお金に影響が及ぶようになるのです。デジタル通貨導入によるキャッシュレス化によってマイナス金利政策の実効性を高めるというのはこういう意味です。

 

 世界の経済学者の中には、マイナス金利政策を中央銀行の標準的な金融政策とすることによって、カネの保有にペナルティを課し、個人や企業が消費や投資に資金を振り向けさせるように仕向け、カネが回り、早期にデフレを解消して経済が活性化すると本気で信じている(あるいは我々に信じ込ませようとしている)人々がいます。

 

 こうした背景を知っていれば、周総裁の発言は一体誰に向けての発言であり、一体何を目指しているのかというのがおのずとわかるものです。

 

 現在、中国はデジタル通貨を含めたフィンテック関連の投資額が最大の国です。コンサルタント会社のアクセンチュアによれば、2016年に中国のフィンテック関連ベンチャー企業への投資額は100億ドルで、初めて世界トップに躍り出ました。

 

 【ぼやき】オランダのコンサルタント会社のKPMGの調査によれば、2016年の世界全体でのフィンテック関連企業への投資額は前年比半分程度にまで減少しており、中国以外ではむしろ陰りが出始めているようです。
 フィンテックは決済、次いで貸し出しといった分野が盛んですが、これら分野自体は経済の付加価値を生むわけではなく、それらを利用してカネを経済活動の成長が見込める場所に適切に配分できて初めて意味があります。利用者の知恵とカネの双方がなければ何も始まりません。
 世界のひどい経済・金融状況や格差拡大、貧困の増大により、今後しばらくは多くの人はカネもなければ、生きることすら大変な状況で知恵を働かせるどころの話ではない将来が予想されます。
 そう考えると、フィンテックブームが終焉する可能性は大いにあるでしょう。もちろん、成長するところは成長していくでしょうが。

 

 またすでに上海金取引所が現物金取引高に関して世界最大の取引所であったり、中国工商銀行がロシアのモスクワで人民元清算業務を開始し、将来的にはロシアなどのBRICS諸国のあいだで金本位制を確立することを目指すなど、おそらく現在最も新しい金融システム構築に力を注いでいる国が中国です。

 

 そんな中国なのですが、中央銀行による法定通貨としてのデジタル通貨発行への動きは少なくとも2年以上前からあるみたいですね。調べていて個人的に気になった情報をいくつかピックアップしてみましょう。

 

 

 まずは2014年12月の情報。元中国人民銀行副総裁で、当時全人代の常務委員会のメンバーの一人で財政経済委員会の副主任であったWu Xiaoling氏がフォーラムで述べた発言です。

 

The algorithm currency solves only the credit problem, but if there is no supply adjustment mechanism to meet the economic demand, it can not solve the problem of currency fluctuation. It can become a financial product but a financial asset but can not become a real currency.

 

Relying on strong computing power to create a global demand for economic development is an ideal
→ソース(原文中国語。Google翻訳で英語に翻訳した文章を引用)

 

 何を述べているのかというと、デジタル通貨(ここではアルゴリズム通貨という言葉が利用されています)を導入するにあたって、デジタル通貨の供給量を自由に調節できる仕組みの重要性を訴えているのです。

 

 時間は飛んで2016年1月。中国人民銀行が自身が発行するデジタル通貨の導入を検討中であることを公表しました(中国語なので適宜翻訳してください)。その中には中国人民銀行主催のデジタル通貨セミナーが北京で開催され、、シティバンクとデロイト・トウシュ・トーマツ(世界四台会計事務所の一つ)が参加したことが述べられています。

 

 またデジタル通貨を導入することのメリットについても述べられています。中国人民銀行は以下のことをメリットだと考えているようです:

 

  • 従来の銀行券発行によって掛かるコストよりもさらにコストを抑えられる
  • 流通コストを抑えられる
  • 経済取引の利便性と透明性を高められる
  • マネーロンダリングや脱税を減らせる
  • 中央銀行によるマネーサプライと通貨流通のコントロールを強化できる

 

 特に重要なのは一番最後のマネーサプライや通貨流通のコントロールの強化に関する部分。先にあげたように2014年12月にWu氏はデジタル通貨の供給量を自由に調節できる仕組みの重要性を訴えていましたが、その方向での導入というのがここで確定したようです。

 

 2014年に中国人民銀行は特別研究チームを発足させたことも書かれていますから、2014年の時点でマネーサプライのコントロールありきのデジタル通貨発行は既定路線だったのかもしれません。

 

 ここでデジタル通貨といえばビットコインを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、中国人民銀行が発行を計画しているデジタル通貨はビットコインとは、根本部分において全く正反対の仕組み、思想の上に成り立っています。

 

 仮想通貨の先駆けであるビットコインは、あらかじめビットコインの将来の供給量が決められており、人為的に供給量を増やせる仕組みは採用していません。貨幣供給量の人為的な調整によりお金のコントロールが利かなくなり、インフレを起こしお金の価値を紙くずにしてきたという、過去通貨発行権を握ってきた人物や機関(銀行、政府等)が何度も繰り返した歴史の過ちを繰り返さないという意図が根底にあるものと思われます。

 

 さらに重要なのは、ビットコイン(正確にはその中核技術であるブロックチェーン技術)というのはそもそも管理者、仲介者を必要とせずにお金の取引、さらに言えばあらゆる経済的な価値を取引できる、オープンで分散的な仕組みを提供しているのです。

 

 いままでは通貨の発行機関、資金を預ける機関、送金システムを提供・管理する機関、口座振替をする機関、決済記録を保存・管理する期間、清算する機関等々、様々な管理・仲介機関が必要でしたが、ビットコインの仕組みはこうした機関が存在せずとも機能するのです。当然、中央銀行も含まれます。

 

 中国人民銀行がやろうとしているデジタル通貨の仕組み(これに限らずその他の金融機関が関与するあらゆるデジタル通貨に関するシステムもですが)というのは、中央集権的管理者(ここでは中央銀行)が取引に介在している時点でビットコインの根底にある「管理者不要のオープンな分散型経済的価値取引」という理念とは全く正反対の理念の上に成り立っているものです。

 

 彼らも必死なのです。ビットコインといった仮想通貨の広まりは、彼らの影響力、さらには生存にも関わる話ですから。金融機関の立場で考えれば、彼らが考案する仮想通貨、デジタル通貨の仕組みはビットコインの理念に反さざるを得ないのです。

 

 (ビットコイン等の仮想通貨が金融機関の役割を極めて大きく低減させる可能性については、例えばイギリスの中央銀行であるイングランド銀行も報告書内で言及しており、すでに良く知られた話です)

 

 さてその後、2016年9月あたりから中国人民銀行によるデジタル通貨発行に関する報道や、その他関連する中国の動きが加速しだした印象があります。目に付いたいくつかの報道を簡単にメモしておきます。

 

【2016/09/01 Bloomberg】On Digital Currencies, Central Banks Should Lead
 中国人民銀行副総裁Fan Yifei氏によるブルームバーグへの寄稿。冒頭部分で、中国人民銀行による民間デジタル通貨の監視、および自身が発行するデジタル通貨を法定通貨に発展させることの重要性述べています。

 

 さらに本文を読んでいくと、中国人民銀行によるデジタル通貨発行の目的の一つとして現物の人民元を徐々に減らしていくこともあげられており、中央銀行がデジタル通貨を発行する意図を包み隠さず述べてくれているなと素直に感じることができる文章となっています。

 

【2016/10/20 Cryptocoinsnews】The Chinese Government Publishes an Official Blockchain Whitepaper
 中国政府がブロックチェーン技術(デジタル通貨システムなど経済的価値移転を可能とするための根幹技術)の将来への応用に関する報告書を発表したというものです。報告書は中国語で書かれているため、私は中身を読めていません。

 

 金融、サプライチェーンの管理、金融解析、エンターテイメント、製造業、社会保障、教育、雇用といった多岐にわたる分野でブロックチェーン技術を応用していきたい考えを報告書では述べているようです。

 

【2016/11/16 ShanghaiDaily】PBOC aims to develop digital currency
 中国人民銀行が、デジタル法定通貨の開発をさらに推進するためにブロックチェーンの専門家を募集しているという記事。

 

 【2017/01/09 Linked in】China and Blockchain – Move Toward Standardization and Standard System
 中国の最新の五カ年計画にブロックチェーンに関する文言が加えられたことや、中国がブロックチェーン技術をクラウド、ビッグデータ、IoT、テレコム、人工知能、暗号法などと結びつけて発展させていく計画があることなどが紹介されています。また中国によるブロックチェーン技術の標準化に向けての計画についても触れられています。

 

【2017/01/30 Cryptocoinsnews】China’s Central Bank Completes Digital Currency Trial on a Blockchain
 中国人民銀行が自身が開発中のデジタル通貨を利用した取引決済の試運転を完了したという記事。

 

 そして冒頭に引用したように、中国人民銀行がデジタル通貨を発行することの目的として、キャッシュレス化に伴うマイナス金利政策の実効性を高める狙いがあるとの総裁の発言。

 

 こうして流れを追っていくと、中国はあらゆるものがデジタル化、機械化された、人工知能やシステムによってコントロールされる社会形成への動きを強めているように思えます。

 

 他国についてはあまり調べていないのでちゃんとした相対的評価はできないのですが、それでも中央銀行によるデジタル法定通貨の発行への動きをはじめ、人工知能やシステムによってコントロールされる社会の仕組み構築に対する中国のエネルギーの入れようは相当高いという印象がありますな。果たして上手く行くのでしょうか。

 

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