因果関係を知りたがる気持ちは生まれつき備わっている

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因果関係を知りたがる気持ちは生まれつき備わっている

   私たちは何をするにも必ず理由が求められます。 仕事でも何かチャレンジするにも、何かそれなりの正当な理由を求められます。 上手く説明できないと相手を納得させられずに、白い目で見られることもよくあります。


   大人になればなるほど「何故なんだ」と問われることが多くなるので、理由や原因を求めることは大人っぽい行動のように思われるかもしれません。 しかし理由を求める、因果関係を探るという感情は私たちが生まれつき備わっている能力です。

因果関係を気にする気持ちは子供の頃から存在する

   因果関係を探る気持ちは大人的な印象を持ちますが、違います。 因果関係を探る気持ちは無意識のうちに生まれるものです。 つまりSystem1によって生まれる気持ちなのです。


   まずはぜひ次のリンクを開いて見て下さい。 ベルギーの心理学者であるアルバート・ミコッテ氏が、人間の因果関係を探る気持ちについて調べた実験内容に関する映像を見ることができます。


   →Michotte demonstration(英語サイト)


   赤玉と青玉についての映像が全部で4種類あったと思います(最後のページを除く)。 このボールを見てどのように思ったでしょうか?


   開いてもらったサイトにも英語で書いてありますが、私たちは普通次のような感想を持ったと思います:


  1. 赤玉が青玉にぶつかったことで青玉が動き出した
  2. 赤玉に関係なく、青玉がいきなり動き出した
  3. 赤玉ジャイアンが青玉のび太を追いかけている
  4. 赤玉飼い主の後ろを青玉チワワがしっかりついて歩いている

   アルバート・ミコッテ氏がこうした映像を生後6ヶ月の赤ちゃんに見せたところ、映像が変わった途端に驚いた表情をしたのだそう。 つまり赤ちゃんは赤玉と青玉との間の因果関係を無意識に認識していたのです。 映像が変わって赤玉と青玉との関係が変わったことで、それを驚きとして表現したのです。


   上のサイトにある映像は、所詮は映像です。 ただ赤玉と青玉が独立に動いているだけです。 赤玉と青玉との間に、プログラム上の因果関係はありません。


   しかし私たちは無意識のうちに「赤玉と青玉にはこういった関係がある」という因果関係があるものだと認識してしまうのです。

因果関係がはっきりすると気持ちが晴れる

   因果関係を気にする気持ちが人間にとって自然な性質であることは、次のようなことからも理解することが出来ます。


   ニュースで凄惨な殺人事件が起こった後に、犯人が捕まって犯行に及んだ経緯、被害者との関係、犯人の人間性等が明るみに出るとどう思いますか。 何だか理由がはっきりしてすっきりした気持ちになりますよね。


   一方で殺人事件が起こって、その後長年犯人が見つからずに犯行の動機などがわからないままだとどう思いますか。 釈然とせず、ずっとモワッとしてますよね。


   こうした気持ちのスッキリ感、モワッと感は因果関係を探る気持ちが人間の本能であることを裏付けさせます。 何故かと言うと、人間に本能的に備わっている感情が満たされると無意識のうちに快適さを感じるからです。 これはCognitive Easeと呼ばれる性質です。


   よく「何事も疑問を感じるのが大切だ」なんて言われますが、そもそもそういう気持ちは誰にだって平等に備わっているのです。


   子供がお父さんに対してよく「なんで、なんで」なんてダダッたりして、お父さんが理由を説明するのに苦労する図式が思い浮かべます。 人間はそもそも疑問を感じたら因果関係を探りたい生き物なのです。


   そう考えると、大人になっても「疑問を持て」と言われるのは、社会で暮らしている中でいかに私たちが知らぬ間に人間的な気持ちを抑圧されてきたかを裏付ける言葉のように思えます。


   だってそうでなければ、こんな言葉わざわざ言う必要ないですよね。 疑問を感じて理由を探ることは人間の本能的な性質なわけですから。


   疑問を感じることが大切だと大人は言う。 しかし疑問を抱かせないように抑圧しているのも大人なのです。


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