仮定がおかしな結果は無意味-統計結果に対する最低限の心構え-

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仮定がおかしな結果は無意味-統計結果に対する最低限の心構え-

   私たち人間が苦手なことの典型の一つが、見えないことを考えることです。 何故なら私たちの直感は目に見える情報しか得意に扱うことができないからです。


   見えないことものの典型の一つが仮定です。

仮定を操作すればいくらでも数字合わせできる

   ニュースでたまに財政検証といった統計結果が報道されます。 統計結果を出すうえで必ず存在するのが仮定、前提条件です。 例えば財政検証では、将来の経済状況などを数値化して仮定して、仮定した数値をもとに解析して結果を算出します。


   統計では仮定をどう置くかで得られる結果が変わってきます。 よく「数字合わせ」という言葉を耳にするでしょうが、その一つの方法は仮定を操作すること。


   統計調査は時に政府や官僚の都合に沿った結果を出しているとしか考えられないものがありますが、都合の良い結果を出すことを前提に都合の良い仮定のみを考えているのです。


   数字合わせが行われていたら、もう統計結果には何の意味ももちません。 仮定がそもそもおかしい統計結果は100%信用できないものなのです。


   例えば2014年の厚労省による財政検証で、将来どの程度年金をもらえるのかを計8つのケースに対して試算されました。 最悪のケースを想定した場合でも一応年金を受け取ることができるという試算でした。


   しかし8つのケースとも数字合わせと言わざるを得ませんでした。 8つのケースとも共通していたのは、私たちの実質賃金が最低でも毎年0.7%で増加し続けるという仮定を置いていたのです。


   しかし現状は2014年まで実質賃金は下がりっぱなしでした。 円安による物価上昇や少子高齢化による生産力の低下などで、実質賃金は上がり続けるどころかさらに下がり続けるのではないかという懸念の方が大きいです。


   実質賃金が上がり続けるという仮定は現実を反映しているとは到底思えません。 そうやって考えると、この財政検証は全くの無意味なのです。

仮定を疑うことは難しい

   統計結果には数字合わせによって得られるものもあるため、情報弱者にならないためには自分でしっかりと仮定を疑う必要があります。


   しかし仮定を疑うことは意識していないとそう簡単には出来ません。 理由は次の通りです:

  • 仮定が表に出ていないことが多い
  • 仮定が妥当かを調べるにはエネルギーがいる

   一つ目は仮定が表に出ていないことが多いことです。 ニュース等で統計調査などの結果が報道されることがありますが、必ずしも仮定については報道されるわけではありません。


   上の2014年の年金に関する財政検証でも、実質賃金に関する仮定は表に出ていませんでした。 「試算では8つのケースを使った」ということは表に出ていましたが、それぞれのケースに対し具体的にどのような仮定を置いたかまでは報道されていませんでした。


   よって仮定を疑うには、まず最初に実際の厚労省の生データを見ないといけないのです。 これを怠ってしまうと仮定を疑おうにも疑うことができません。


   二つ目の理由は仮定が妥当かどうか調べるにはエネルギーがいることです。 仮定が妥当かどうか疑うには、何十ページにもおよぶ生データを見て仮定を探して、さらに仮定が妥当かどうか考えなくてはいけません。


   仮定は特に目立つことなくシレッと書かれてたりしますから、適当に眺めただけでは見つからないかもしれません。 また統計調査のように仮定が数字の場合があるので、数字が苦手な人に取っては大変でしょう。

統計結果に対する最低限の心構え

   では仮定がおかしいかもしれない統計結果に対して、私たちはどう対処すれば良いのでしょうか。 口先だけなら「実際の統計データに書いてある仮定を見て、妥当かどうか自分で判断してください」となります。 そしてこれが最も的確なアドバイスになります。


   ただし上に書いたように、仮定が妥当かどうか考えるのは面倒な作業です。 なので口先だけで「自分でちゃんと調べてください」とアドバイスするのはちょっと無責任です。


   ですので私たちは統計結果に対する最低限の心構えだけは身につけたいところです。 統計結果に対する最低限の心構えさえ身につけていれば、統計結果を見るたびにこの心構えを呼び起こすことで最低限の対処を行うことができますから。


   私は統計結果を見るときに「10%程度信用する」ことにしています。 10%程度信用するとはどういうことかというと「ふーん、結果はこうなんだ。だけど実際のところどうなんだろうね(笑)」と、トボけた気持ちでいることです。


   こういう気持ちを持つことで、自分で調べることが面倒な場合には「そこまで信用しない」スタンスをとって心の隙が生まれるのを防ぎます。 それと同時に疑いの気持ちを頭の片隅に入れておくことで、いざ自分にとって重要だと思う統計結果が出たときにいつでも調べる臨戦態勢を取れるようにするのです。


   物事をシロクロつけずに解釈するのはなんだか気持ち悪いように思えるかもしれませんが、これが統計結果に騙されない最も手っ取り早い心構えだと私は思っています。


   もしも気持ち悪くて嫌であれば、自分で生データにある仮定や調査方法を調べてうっ憤を晴らせばよいのです。 生データを調べて統計が妥当かどうかシロクロはっきりつけられれば、すっきり気持ちが晴れますから。


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