Domain Specificityとは-人間は何と非合理なのか!-

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Domain Specificityとは-人間は何と非合理なのか!-

   私たちはその日の体調や置かれた状況によって言動がコロコロ変わる生き物です。


   いつもは笑顔で人の気持ちを思いやれる友人が、ある時急にストレスから今まで聞いたこともないようなキツい発言をすることがあります。 ダイエットに励んでいるときにふと街中であま~いキャラメルのにおいを嗅ぐと、我を忘れてキャラメルパフェを食べてしまいます。


   今回はそういう状況によって言動が変わる人間の性質である、Domain Specificityについて話します。

Domain Specificityとは何か

   私たちが自律神経のように、無意識のうちに常に働かせているSystem1。 このSystem1の性質で見逃してはならないのがDomain Specificityです。


   Domain Specificityとは、状況に応じて頭に思い浮かべる考えや感情、考え方が異なるという認知的性質のことを指します。


   Domain Specificityを説明するのに恰好の例が"努力"に関してです。 私たちは何故か分野によって、"努力なくして成功なし"という全うな考えと、"出来るだけ努力せずに成功したい"という甘い考えを使い分けてしまっています。


   私たちは大学受験や資格の取得など、勉強が必要な分野では目的の達成のために多くの時間を割いて努力する必要性を知っています。


   もちろんこうした当たり前の事実は子供の頃からの経験によって誰もが理解しています。 しかし例え受けたことのない資格でも、もしも取得するとなるときっと大変なんだろうな...そんな風に思いますよね。


   しかしその他の分野では、何故か私たちは目的を達成するために時間を掛けて努力することが必要であることを忘れてしまっています。 その典型例が、ビジネスや投資といったお金に関する分野と、英語習得やダイエットといった自分を磨く分野の二つです。


   何故かビジネスや投資といったお金が絡む話になると、人々は短期的に大儲けする方法を探し求めます。 ネットを見てもビジネスでは「3ヶ月で月収100万円を達成する方法」、投資ではテクニカル投資やFXといった短期の売買によって日銭を稼ぐ方法ばかりがPRされています。


   英語学習やダイエットも同じです。 聴くだけで話せるようになるとか、飲めば痩せるとか、そういった大して努力もせずに夢を達成することを目的とした宣伝ばかりされています。


   あらゆる分野でも自分の求めているものを得るためには、時間を掛けて努力する必要があることはちょっと考えれば誰でもわかることです。


   しかしお金やスキルの習得といった"欲望"や"大人になってから行うこと"というタグ付けがされた物事に対しては、何故か当たり前の事実をすっかり忘れてしまう。


   こういった人間の性質がDomain Specificityと呼ばれるのです。


   ちなみにDomainとは"領域、分野"、Specificityとは"特殊性"という意味です。 つまりDomain Specificityとは"領域に依存した特殊性"を表すのです。


   「受験、資格」といった"領域"では「努力が必要」という"特殊な考え"を持っています。 一方「お金、スキル」といった"領域"では「楽して得たい、習得したい」という"特殊な考え"を持っています。


   受験、資格、お金、スキル、こういったカテゴリーの本質はすべて「得るためには努力が必要」、ただ一つであるにも関わらず、共通の考えを持てずに領域によって特殊な考えを持ってしまうのが人間なのです。

Domain Specificityをいかに防げるかが人間性を高める条件

   Domain Specificityは私たち人間が非合理な生き物であることを表す典型であると言えます。 理由は状況に応じて矛盾した言動を取るからです。


   先ほどの努力に関する例を見ても、領域が異なることで考えが一気に変わる人間の非合理性を認識することができるでしょう。 他にもDomain Specificityの非合理性が人間にとって一般的であることが、次の例からわかります:


  • ここ数年ゲームを買ってもすぐ飽きる自分を知っているにも関わらず、新作ゲームが発売するとつい衝動買いしてしまう
  • 人に平気で悪口をいう奴に限って、人から悪口を言われるとぶち切れる
  • 選挙演説では都合の良いことを言うが、いざ当選すると公約を守らない政治家
  • 「株価が急激に下がっているときに売ってはならない」という投資の原則を何十回も本で繰り返し読んだにも関わらず、株価が1週間のうちに半分まで下落すると我を忘れて株を売ってしまう

   このように人は状況に応じてそれまでの言動と180度異なる行動をとってしまう、愚かな生き物なのです。 そしてこういう矛盾したことを行い続ける人は、周りから信頼できない人と見なされていくのです。


   逆に考えれば、いかにDomain Specificityを防げるかが私たちの人間性を高めるための至上命題なのです。 色々な領域の本質を探る思考、有言実行。 こういったことを完璧とは言わないまでも、常に目指しながら行動する。 こうしたことが本当の意味で"大人の階段を上る"ことなのではないでしょうか。

関連リンク

   ・人間は中々本質を見抜けない生き物ですが、それがかえって生きがいを感じさせてくれるのです。

   →人間の本質を満たすために、人間は本質を考えるのが苦手である


   ・人間は立場によって平気で言動を変えることができる生き物なのです

   →No skin in the gameの許容-Domain Specificityの無視が引き起こす問題-


   ・自らの言動にどの程度のリスクを背負っているか、これこそが人間の信頼度を測る最適な指標です

   →Skin in the gameとは-信頼度を測る最適な指標-


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