単純接触効果を学習に応用する-効率を求めず量をこなすことがよい理由-

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単純接触効果を学習に応用する-効率を求めず量をこなすことがよい理由-

   こちらの記事単純接触効果を活かした学習がどういったものかを、私の経験を例にあげて紹介しました。 作戦は非常に単純で、「繰り返しによって学習に対してポジティブなイメージを持ってから質や効率を求めていく」というものでした。


   一方で世の中は効率化、最適化というものに主眼を置いています。 そう考えると単純接触効果を活かす学習というのは、効率化や最適化には背いたものとなっています。


   しかし私たちが今でもしっかりと覚えていることを思い出すと、実は繰り返しによって覚えていったものばかりです。 しかも効率的に学習するよりも、繰り返し量をこなして学習した方が楽な気持ちで臨めるのです。

小学校の頃の勉強を思い出す

   単純接触効果を学習に活かすことが効果的なのは実は誰でも知っていることなのです。 何故なら私たちが小学生の頃に散々経験させられたからです。


   小学生時代の勉強、特に毎日出された宿題のことを思い出してみてください。 とにかく問題を繰り返し繰り返し解かされていましたよね。


   計算ドリルにある二ケタ同士の掛け算や分数の足し算引き算などをひたすら解いたり、新しく習った漢字をノートに何十回も書いたり。 九九の暗記なんかは、何十回も何百回も暗唱しましたよね(特に7の段)。


   よくよく考えてみると、小学生のころはひたすら反復練習によってスキルを習得してきたことに気づきます。 しかも反復練習によって覚えた小学生のころの内容は大人になっても忘れないもの。


   一方で小学生時代ほどの反復練習を行わなくなってしまう高校生のときに習った内容は、大人になると忘れてしまうもの。 教科書を読み直しても内容を覚えていなかったり、解き方がまったく思い出せなかったり。


   そう考えると、どれだけ繰り返し学習するかが学習の本質のように思えてきます。


   小学生の頃に学習した内容を忘れないのは、学ぶ内容が簡単なのとこの頃は一番頭が柔らかくてすぐに知識を吸収しやすいからだと思う人もいるかもしれません。


   しかし私は大人になって本格的に勉強した英語を忘れていません。 大学の数学科に入り、真っ先に何回もやらされた学生が最初に苦しむ関門「イプシロンーデルタ論法」という証明方法を今でも忘れていません。


   これらに共通するのは、ともに繰り返し繰り返し行ってきたから。 嫌と言うほど繰り返し行ってきたことにより、忘れようと思っても忘れられないのです。


   英語や難しい数学などは確かに慣れるまでは時間が掛かります。 小学校の頃の問題ほど単純ではないですから。


   しかしそれでも時間を掛けて繰り返し行うことによってだんだんと慣れていくもの。 結局基本はまったく同じなのです。


   私たちは体を使うものは何回も繰り返し練習することによってスキルを習得できることを知っています。 自転車の乗り方、サッカーのリフティング、縄跳び、料理、それにゲーム(特に格闘ゲーム)だってそうです。


   これは頭を使う知的な物事にだって共通して当てはまるのです。 「習うより慣れろ」はあらゆる場面で垣根を越えた原則だということを認識することが大切です。

効率を求めることと楽を求めることはオフセットの関係

   私はこれまでに受験勉強や英語、読書、本サイトの記事作成などいろいろなことを経験してきました。 その中で思ったのは、「効率を求めることと楽を求めることはオフセットの関係である」ということです。


   私たちは効率と聞くと何となく「楽そう」というイメージを持ってしまいがちです。 しかし効率を求めることはイメージと真逆で、いつも以上に意識的に頭を使う必要があります。


   効率を求めることは時間をギュッと凝縮することです。 大きい容器と小さい容器にそれぞれ同じ量の塩を入れた後に、容器がいっぱいになるまで水を入れましょう。 そうすると大きい容器の塩水は薄いですが、小さい容器の塩水は濃いですよね。


   塩を必要な仕事、容器の大きさを時間と考えれば、効率を求めることはより小さい容器で作業を行うことです。 つまりより濃度の大きいタスクをこなす必要があるわけです。


   こうしたイメージを持てば、最初から効率を求めることがいかにハードルが高いかどうか何となくイメージできるのではないでしょうか。


   逆に繰り返し学習して量をこなすという方法はイメージ的にはものすごく大変なように思えます。 それは「量をこなす=100%の力でたくさんの量をこなす」とイメージしているからです。


   これは大きな勘違いです。 私は量をこなすことは大切だと言っていますが、質や効率は最初から求める必要はないと言っています。 正直最初は60%くらいの力でいけばいいと思っています。 60%でも大変だったらもっと力を抜いても構いません。


   量をこなす意義は、単純接触効果によって学習対象に親近感や好意を感じることです。 だから無理して質を追い求めようとしなくて良いですし、自分のペースで雑にこなせば良いのです。


   質をある程度妥協してさらに時間を分散すれば(つまり一度にすべてをやろうとしない)、自然と量をこなせるようになります。 するとそのうちだんだんと慣れて来て、少しずつ質を追い求めたいという気持ちが生まれてきます。 その段階で初めて質というのを考えれば十分です。


   最後に重要な2点をまとめておきます。 一見直感に反するようですが、これが人間の性質なのです:


  • 大きな負担になるのは量をこなすことではなく、質や効率をいきなり求めることである
  • 少々雑でも量をこなすことで単純接触効果が働き、学習に対する前向きな気持ちが生まれる

プロセスなんてどうでもいい

   単純接触効果を活かして学習するのは、一見泥臭くてガキ臭く感じられるかもしれません。 大人なら誰しも、知的にスマートに物事を行いたいもの。 その方がなんか"大人流のやり方"みたいに感じてしまいます。


   しかし私たちが学習する目的は新しい知識を取り入れることです。 そして知識を取り入れることで仕事に活かしたり、自分の世界観を広げたいからです。


   学習の目的を考えれば、学習のプロセスなんて正直どうでもいいことなのです。


   人は他人を評価するときはプロセスなんて目もくれず、結果だけで判断してしまいがちです。 にも関わらず、自分が何か行うときにはなぜかプロセスにめちゃくちゃ翻弄されてしまっています。


   むしろ私は逆の方が一理あると思っています。 つまり「他人を真に評価するためにはプロセスを見る必要があるが、自分が行動を起こす際はプロセスを気にしすぎてはいけない


   私が高校を中退しても独学で東工大に合格できたのも、ニュースレベルの英語を理解できるようになったのも、すべて繰り返し学習したから。 圧倒的な量をこなして繰り返し地道に行ってきたからです。 そこに最初から明確なプロセスがあったわけではなく、やっていく中で自然と自分流のプロセスが出来上がっていったのです。


   世に溢れる効率的な方法論をひたすら調べて頭を悩ますよりも、とっとと何かを始めてひたすら量をこなす方がよっぽど時間効率も良いし、精神衛生上も最も良いのです。

関連リンク

   ・単純接触効果とは何か

   →単純接触効果(Mere Exposure Effect)とは-繰り返しが与える安らぎ-


   ・単純接触効果を学習に応用して自らのレベルアップに活かす

   →単純接触効果を学習に応用する-まず量こなせ、話はそれからだ-


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