アンカリング効果とは-プロにも働く強大な力-


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アンカリング効果とは-プロにも働く強大な力-

   私たちが物事を判断するときに欠かせない手法が比較です。 自分の給料と同僚の給料を比較したり、自分と他人の夫婦生活を比較して優越感や劣等感を感じたりするものですよね。


   しかし私たちは何も自分と他人の優劣を知るためだけに比較を用いているわけではありません。 私たちを取り巻くあらゆる情報や数字を、私たちは知らず知らずのうちに比較対象として使っているのです。


   こうした比較に関する人間の典型的な性質が、アンカリング効果です。

アンカリング効果とは何か

   アンカリング効果(Anchoring Effect)とは、私たちの判断が最初に与えられた基準(アンカー)に依存してしまう現象のことを言います。


   アンカリング効果はマーケティングで当たり前のように使われています。


   例えば通販で「メーカー希望小売価格50000円の高機能掃除機を、今回はなんと20000円引きで特別価格30000円でご提供します!」なんていうセールスをよく目にしますが、これはまさにアンカリング効果を使った作戦です。


   売る側としては、最初から30000円で売ろうとしているのです。 しかし最初から30000円と言っても、お客さん側からすれば高いと思われてしまって簡単にはお財布のひもは緩みません。


   そこで最初に50000円というアンカーを見せておきます。 50000円というアンカーは一見高い値段ですが、この一見高いというのがアンカー構築のミソ。 ここから"アンカー、からの値引き"を演出することで、30000円という値段をアンカーと比較して安いと思わせようとしているのです。


   そうすると私たちは30000円を"アンカーと比較して安い"ではなくて、単に"安い"と感じてしまいます。 そうしてお客さんの財布のヒモを緩ませようとしているのです。


   またアンカリング効果は意外な場所でも発揮されてしまう可能性があります。 それは司法の場です。


   例えばあるドイツで行われた心理学の実験で、裁判官としての経験が浅い参加者たちはある男の量刑を決めるよう指示されました(参加者の裁判官としてのキャリアの平均は9ヶ月強)。


   まず実験の参加者たちはある資料を読まされました。 その資料には強姦を行った男性の被告についての情報が載っており、被告が被害者の女性と知り合ってから強姦に至るまでの情景が描かれています(ただしこれは実験用のフィクションです)。


   強姦に関する資料を読み終えた参加者はしばらくして、このフィクションの事件に対して検察が下した求刑を個別に聞かされます(もちろんこれもドッキリ実験の一環です)。


   参加者のうち半分は検察の求刑が2ヶ月だと伝えられ、残りの半分の参加者は検察が34ヶ月の刑を求めたことを知らされます。 つまりここでは2ヶ月の求刑、または34ヶ月の求刑がアンカーとなっているのです。


   その後参加者たちは被告が犯した強姦の罪に対して、どの程度の量刑を下すかを問われました。


   その結果、検察が2ヶ月と求刑したことを伝えらえたグループの人たちは、平均して18ヶ月の量刑を下しました。 一方、検察が34ヶ月を求刑したことを伝えられたグループの人たちは平均して28ヶ月の量刑を下したのです。


   この差、すごくないですか? 検察の求刑が多いか少ないかによって、参加者たちが下した量刑に10ヶ月もの差があるのです。


   これがアンカリング効果の力です。 実験の参加者は裁判官としての経験は少ないですが、素人でも2ヶ月だと「少なすぎないか?」、34ヶ月だと「多すぎないか?」、そのように疑問に感じることは出来ます。


   特に2ヶ月という求刑は誰が見ても少なすぎると感じるものです。 人によっては「この検察、バカなんじゃないか?それとも八百長か?」などと思ったことでしょう。


   しかし参加者は検察の求刑というアンカーに対して、知らず知らずのうちに影響を受けてしまったのです。


   どんなにバカに見えるものでもバカにならない効果を生み出す、それがアンカリング効果です。

アンカリング効果はプロフェッショナルにも働く

   家電製品やジュエリーの本当の相場を知らない、無知な主婦たちがまんまとアンカリング効果に引っかかって、決して安くはない商品に対してお財布のひもを緩めてしまうことは何となくわかるものです。


   しかしアンカリング効果は何も素人に対してだけ働くものではありません。 その道のプロフェッショナルの人たちにもアンカリング効果は素人と同じように普通に働くのです。


   先ほど裁判の量刑に関する心理学の実験を紹介しましたが、この実験には続きがあります。 同じような実験を、今度は裁判官経験が豊富な人たちに対しても行ったのです(参加者の裁判官としてのキャリアは平均15年)。


   今度は半分の参加者は検察が12ヶ月求刑したと伝えられ、残りの参加者は検察が34ヶ月求刑したと伝えられました。 このとき、12ヶ月の求刑を伝えられた参加者の量刑の平均は28ヶ月だったのに対し、34ヶ月の求刑を伝えられた参加者の量刑の平均は36ヶ月でした。


   少ないアンカーと多いアンカーが生み出す量刑の差は、なんと8ヶ月。 最初にあげた裁判官の経験が浅い人たちに対して、2ヶ月と34ヶ月のアンカーが生み出した量刑の差が10ヶ月だったことを思い出して下さい。 アンカーの幅が32ヶ月→24ヶ月に減ったのにも関わらず、量刑の差はたった2ヶ月しか変わっていません。


   プロの裁判官でさえ、検察の求刑によるアンカリング効果が平気で生じてしまうのです。


   他にも例えば不動産エージェントに対してもアンカリング効果が働くことが知られています。 アンカーによって同じ家の価格評価に大きなブレが生じてしまい、ブレの大きさは素人が価格評価したときのブレと大して違いがなかったのです。


   このようにアンカリング効果は素人だろうがプロだろうが関係なく、誰にでも平等に働くのです。 私たちの誰もがアンカリング効果の力をバカにしないで認識する必要があります。

アンカリング効果は私たち自身に大きなリスクを与える

   アンカリング効果は素人だろうがプロだろうが、あらゆる人に対して働くことをみてきました。


   そんな強大なパワーを持つアンカリング効果ですが、不幸なことにアンカリング効果は私たち自身に大きなリスクを与える可能性があるのです。 それは「信頼できない情報による洗脳リスク」です。


   というのはアンカーとなる情報によって私たちの思考や感情は無意識のうちにコントロールされてしまいます。 これは上の例からすぐに連想できると思います。


   よって信頼できない情報ばかりに接していると、それがアンカーとなり知らず知らずのうちに思考や意見があらぬ方向に流れていきまさに洗脳されてしまうのです。


   混沌とした世の中ではちゃんとした情報をもとに行動してきたか、それとも嘘偽りの情報をもとに行動してきたかは今後の自分自身の将来を決定付けることになります。 残念な人生を歩まないためにも、日ごろからネットや本などで適切な情報をキャッチする努力を怠ってはいけないのです。

関連リンク

   ・アンカリング効果による洗脳を防ぐためにはどうしたらよいのだろうか...

   →アンカリング効果と洗脳-信頼できる情報を積極的に取得せよ-


   ・アンカリング効果にはどんなプロセスが働いているのだろうか...

   →アンカリング効果の認知心理的プロセス


   ・アンカリング効果と不確かさとの関係について

   →アンカリング効果に潜む二つの要因-不確かさはアンカリングを助長する-


   ・ランダムな数字、こういった無意味なものに対してもアンカリング効果は働いてしまうのです。

   →ランダムなアンカーの魔力-どんなものにも人は意味を見出す-


   ・本カテゴリーの中心話題であるSystem1とSystem2についてはこちら

   →System1、System2とは-人間心理の最も基本的な分類-


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