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後知恵バイアス(Hindsight Bias)とは-不当な評価の温床はここにあり-


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後知恵バイアス(Hindsight Bias)とは-不当な評価の温床はここにあり-

   私たちは目に見える情報、頭に染みついた考え、こういったものをまるで当たり前かのように考える傾向にあります。 そしてこうしたはっきりしたものだけを使って因果関係を探ったり、それっぽいストーリーを考えるのが大好きです。


   こうした人間の傾向をはっきり表すものに、後知恵バイアス(Hindsight Bias)と呼ばれるものがあります。

後知恵バイアス(Hindsight Bias)とは何か

   後知恵バイアス(Hindsight Bias)とは、何か物事が起こった後に「だと思った」と、まるで自分が予言者かのごとく振舞う人間の心理的傾向を指します。


   後知恵バイアスは非常に強力で、どんな人にもどんな場面でもいつでも起こり得ます。 例えば次のようなニュースを見ていたとしましょう:


   2ヶ月前に森の中で20代の女性の遺体が発見された事件で、県警は今日正午過ぎ、元交際相手の30代の男を死体遺棄容疑で逮捕しました。調べに対し、男は容疑を認め「彼女とヨリを戻そうとしたが幾度となく断られたため、カッとなって首を絞めて殺して遺体を森に捨てた」と供述しているということです。


   こういったニュースを見ると、私たちはついつい次のように考えてしまいがちです:


   「そうだと思ったよ。若い女性が殺害された事件なんて、だいたいが元交際相手がフラれて必至でヨリ戻そうとしてもうまくいかなくて、それで男がブチ切れて相手殺しちゃうパターンじゃん。そういえば元交際相手が事件のすぐ後にテレビの取材に応じてたけど、あのツラは犯人顔だったしな。」


   こうした気持ちになってしまうのは後知恵バイアスが掛かっているからです。 ニュースで元交際相手が逮捕されたという報道が流れたからこそ、そんな風に思えるのです。


   森の中で若い女性が殺害されたといっても、真相がわかるまでは犯人が本当に元交際相手であるかどうかなんてわかりません。 例え顔がコワモテで犯人面に見えたとしても、だからといって犯人である保証はまったくありません。


   冷静に考えれば、日頃から被害者を恨んでいた会社の同僚や身内による犯行の可能性、通り魔の可能性、いくらでも可能性があります。


   そう考えると犯人が逮捕されるまで、つまり事前に私たちが犯人を断定して当てられる確率はそう高くありません。


   しかしニュースで元交際相手が逮捕されたという報道を知るや否や、今までの疑念がその通りだと確信でき、あたかも「ニュースが流れる前から元交際相手が犯人だと知っていた」かのごとくに振舞ってしまうのです。 そして犯人を予測できたとの"錯覚"に対する、満足感や優越感に浸ってしまうのです。


   "事前の可能性"と"事後の確定事項"との間には天と地ほどの開きがあります。 しかし後知恵バイアスによって、こうした当たり前の考えを無視してしまっているのです。

後知恵バイアスと結果論

   後知恵バイアスには大きな問題があります。 それは後知恵バイアスが、私たちが不当な評価をしてしまう一つの温床になっていることです。


   ここではそのうちの一端について説明しましょう。


   後知恵バイアスが引き起こす問題の代表例は、私たちが見えないプロセスを考慮せずに目に見える結果で物事の良し悪しを考えてしまいやすいことです(これは後知恵バイアスの中でも特に成果バイアス(Outcome Bias)と呼ばれています)。


   一言でいえば、人間は結果論を考えるのが大好きなのです。


   例えば芸能人や知り合いの夫婦が離婚したと聞いた時に、私たちは夫婦のうち一方を非難し、一方を擁護してしまいがちです。


   離婚の原因や夫婦の家庭での性格を知らないときは、比較的女性は奥さんを、男性は旦那さんを擁護する傾向にあるでしょうか。


   しかしニュースや友達から「旦那さんが1年間別の女性と浮気していたそうだよ」と聞かされると、私たちはついつい浮気性の旦那さんを非難して、旦那の浮気を耐えていた奥さんの味方になってしまうものです。


   離婚の原因を「旦那さんの浮気」だと聞かされたために奥さん側の味方に立ちやすくなることは、後知恵バイアスが引き起こす判断です。


   確かに浮気は悪いことでしょう。 しかし旦那さんが浮気をしたのは、一生懸命仕事をしている旦那さんの給料安さに、奥さんが日頃から罵声を浴びせていたために旦那さんのストレスが溜まって、別に心の拠り所を求めて浮気をしたとか、そういう可能性もあるわけです。


   こういった私たちが知らない隠れた事情、隠れたプロセスを考慮に入れずに、「浮気をした」という誰が見ても明らかな離婚要因にばかり目を向けて、第三者は非難対象、擁護対象を決めてしまう。 これが後知恵バイアスによる、「プロセスを考慮せずに目に見える結果で物事を判断する」の一例です。


   こういった後知恵バイアスに囚われた判断を下してしまうことは、他にもいろいろあります:


  • 仕事で失敗した部下を「そんなやり方で仕事したら失敗することくらい誰だってわかるだろ!」となりふり構わず罵倒する上司
  • ラスベガスのカジノで全財産を賭けた結果、見事賭けに勝って莫大な財産を築いた人物を「伝説のギャンブラー」と崇めるメディア
  • シーズンを通して打線を頻繁に変える巨人の監督の采配を、試合に勝ったり優勝したときは"名采配"と称える一方、負けが込んだり優勝を逃すと"迷采配"と揶揄する野球ファンやジャーナリスト、元プロ野球選手の評論家

   上の例に共通するのは、プロセスや戦略といった当事者の意思決定の是非以上に、結果を重視した判断を行ってしまっていることです。


   野球の采配の例を考えても、監督はチーム内でしかわからない選手の状態、モチベーション、相手投手への得手不得手、こういったあらゆる要素を考慮して監督なりに最善の戦略を考えた結果の采配でしょう。


   そういうことはどんな大人でもちょっと考えればわかることですし、実際頭では結果論で物事を考えるのが良くないと思っている人も沢山いるはずです。 しかしどんなに頭ではわかっていても、後知恵バイアスによる結果論的思考を制御することは難しいのです。


   実際、後知恵バイアスに関する数々の心理学の実験によって、後知恵バイアスがどんな人にも大きく働きやすいことが知られています。


   どんなに理性的な人でも、一度物事の是非を判断するのに重要そうな情報(例えば打線を頻繁に変える采配)を見るや否や、この情報が頭の中に鮮明に残ってしまいます。 その結果、後知恵バイアスによる結果論的思考に嫌でも陥りやすくなるのです。


   人への評価はときに不当になるものですが、その裏では後知恵バイアスが大きく関わっているのです。


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