安全保障分野でも「国境なき組織」の弱体化が本格化している?

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安全保障分野でも「国境なき組織」の弱体化が本格化している?

【2018/04/12 BBC】ミサイル「やってくるぞ」 トランプ米大統領、ツイッターでシリア攻撃予告

 

ドナルド・トランプ米大統領は11日朝、化学兵器による攻撃が疑われるシリアにミサイルが「やってくるぞ」とツイッターに投稿し、近く軍事行動を起こすことを示唆した。

 

トランプ大統領は、「ロシアは準備しろよ。(ミサイルが)やってくるぞ。素晴らしくて新しくて『スマート』なやつだ!」とツイートした。

 

ロシア政府高官らは、米国から攻撃があった場合には対抗措置を取ると警告している。

 

 シリア情勢。一年前に見た「あの光景」が再びやってきた。しかし今回は一つ違うことがある。「アサド政権による化学兵器攻撃」というフェイク・ニュース「製作者」を、ロシアが暴露していることだ。

 

トランプの安全保障分野の考えに変わりはない

 米中は貿易戦争を通じて「反WTO的」で協調していることを以前の記事で話しました。西側が創設した、通商問題を取り扱う「国際(超国家)機関」の形骸化を図っていると見えなくもないわけです。
[2018/04/10]WTOを頭越しにすでに始まっている米中二国間交渉

 

 超国家機関や非政府組織という「国境なき組織」の弱体化を、通商だけではなく安全保障の分野でも図っているというのが、最近のシリア情勢における米国の動き...のように見えなくもありません。

 

 4月7日、まーたシリアで化学兵器攻撃。ダマスカス近郊の東グータ・ドゥマでアサド軍が民間人の居住地に化学兵器攻撃を行い、民間人数百人がガスの影響を受けたという報道が出ました。ソースは非政府組織「ホワイト・ヘルメット」。
【2018/04/08 TRT】【シリア】 東グータ・ドゥマで化学兵器攻撃、40人死亡

 

 3月の終わりにはアメリカ中央軍(CENTCOM)司令官がシリアでの軍事戦略の失敗を認め、その後トランプがオハイオ州での演説で「早期に(very soon)シリアから撤退する」と明言していました。
【2018/03/26 The American Conservative】CENTCOM Commander Admits Failure in Syria Strategy
【2018/03/29 RT】We're coming out of Syria very soon, let others take care of it - Trump

 

 しかし7日の「アサド政権がまーた化学兵器使用 according to ホワイト・ヘルメット」の報道が流れるや否や状況は一転。

 

 11日、トランプはシリアにミサイルが「やってくるぞ」とツイート。アサド政権を軍事的に支援するロシアに対し、「ロシアは準備しろよ。(ミサイルが)やってくるぞ。素晴らしくて新しくて『スマート』なやつだ!」ともツイート
【2018/04/12 BBC】ミサイル「やってくるぞ」 トランプ米大統領、ツイッターでシリア攻撃予告

 

 相変わらずトランプの「予期せぬ」行動が続いていますね。しかしそう感じるのは「見ているソースが悪い」から。

 

 最近のホワイトハウスのニュースを眺めていたらこんなの見つけましたよ。
【2018/04/09 White House】Readout of President Donald J. Trump’s Meeting with Defense and Military Leaders

 

 トランプは4月9日、米国の防衛・軍事のトップたちと会談。トランプは会談のなかで、次の2年間で1.4兆ドルを超える予算を投じて国防軍を強化するとの約束を繰り返しました。文章を見る限り、国家安全保障の強化をトランプは約束しています。

 

 さらにトランプは、「米国の」陸軍兵士・海軍兵士・空軍兵士・海兵隊・州兵・沿岸警備隊員によって毎日のように殺害されてきた、世界中の膨大な犠牲者について言及して会談を締めくくったとのことです。

 

Finally, President Trump highlighted the tremendous sacrifices made by our soldiers, sailors, airman, Marines, National Guardsmen, and Coast Guardsmen around the world each and every day.

 

 トランプが世界中の米軍を撤退させ、その分国防を強化するという方針に、何の変化もないのです。

 

ホワイト・ヘルメットの「ヘルメットの中身」が露になるとき

 トランプのシリアへのミサイル発射予告、ロシアへの敵対姿勢は、これまたトランプとプーチンの演出だと思って悪くありません。

 

 11日、ロシア軍中将は、東グータ・ドゥマでのアサド政権化学兵器使用の映像は、ホワイト・ヘルメットによって準備・撮影された偽旗映像であると主張。
【2018/04/11 SOUTH FRONT】RUSSIAN MINISTRY OF DEFENSE: WHITE HELMETS STAGED “CHEMICAL WEAPONS ATTACK” IN DUMA

 

 同日、ロシアのEU大使は「ユーロニュース」に出演。ロシアの軍事専門家がドゥマの街を訪れ、周囲の散策や地元医との会話を実施。ドゥマ唯一の病院(死体を安置する地下室含む)を訪問したが、化学兵器による攻撃で負傷した地元住民は一人も居なかったと発言。ホワイト・ヘルメットによる偽旗作戦、プロパガンダ工作だと主張しました。
【2018/04/11 Zero Hedge】"There Wasn't A Single Corpse": Russia Claims 'White Helmets' Staged Syria Chemical Attack

 

 ホワイト・ヘルメットはシリアでテロ活動を行うグループの広報部隊とも言える非政府組織です。英国外務省のConflict Stability and Security Fund (CSSF)や、オバマ政権時代のUSAID/Chemonicsネットワークから資金提供を受けてきたとされます。「ディープ・ステート英米支部」が資金提供してきたようですね。
【2017/09/06 MINTPRESS】Investigation: White Helmets Committing Acts Of Terror Across Syria

 

 今年2月、シリア北西部のイドリブにある町で、テロリスト集団アル・ヌスラ戦線の複数のメンバーが20以上の塩素の入ったシリンダーと防具を運び込み、これらを利用してホワイトヘルメットが「応急処置のリハーサル」を行ったとのこと。

 

 「応急処置のリハーサル」とは、塩素を含んだ化学兵器の攻撃に遭った地元民を想定し、彼らに対する応急処置のリハーサルを行ったというのです。
【2018/02/13 RT】Tip-off received on Al-Nusra, White Helmets plotting chemical weapons provocation in Syria ? Moscow

 

 今年3月19日にもシリアで塩素を含む化学兵器の攻撃があったそうですが、上のRTの報道が事実であれば、ホワイト・ヘルメットが関与している可能性が高いです。

 

 またロシアは、昨年4月のシリアでの化学兵器での攻撃疑惑(報復として米軍はシリアに59発のトマホークを発射した)も、ホワイト・ヘルメットによる捏造だと疑っています。

 

 今月10日には、シリア政府軍が、東グータの小さな町サブカでホワイト・ヘルメットの活動していたとみられる場所を発見したそうです。少なくともいくつものカメラや動画作成機器が残されていたとのことです。
【2018/04/10 FARS】Syrian Army Finds White Helmets' Video Shooting Location

 

 こうした流れをみるかぎり、現在は戦争屋が追い詰められているフェーズと言えそうです。

 

 トランプは表向き「シリアに対する軍事攻撃」と言っておいて、ホワイト・ヘルメットやその他テロリストを軍事攻撃しやすい状況に見えます。

 

 ホワイト・ヘルメットをはじめとした戦争屋は表向き「アサド政権による化学兵器を使った攻撃」と言っておいて偽旗作戦を繰り返したとされるわけですから、仮にトランプに狙われても言い訳や非難できる立場にはありません。因果応報です。

 

 超国家組織や非政府組織は、ロシアやイランといった国家にシリア内戦を解決されると困るわけです。国際問題解決の手柄が「国境をもつ組織」に取られてしまうのですから。そりゃシリア内戦がなかなか完全収束しないのも無理はない。

 

 しかし今回ばかりはホワイト・ヘルメットをはじめとした「国境なき組織」の、手柄獲得のための抵抗活動継続は難しそうです。トランプ・プーチンに命を握られているのですから。

 

 

 また、表向き米露はシリアを巡って対立しています。昨年に続いて米国はアサド政権の化学兵器使用という「フェイク・ニュース」をもとにシリアへのミサイル攻撃を正当化しようとしているので、米露が安全保障面で仲良くなるのは難しい情勢です。

 

 米露の安全保障を巡る対立は国連安全保障理事会をますます機能不全にし、国連安保理の存在意義をますます薄めることになりましょう。換言すれば超国家機関の弱体化です。

 

 ※国連安保理はすでに機能不全だけどね。2011年のシリア内戦以降、欧米主導の決議案にロシアは12回も拒否権を発動しているしね。

 

「グローバル」に傾きすぎた振り子が戻るとき

 トランプは最近も、中東の国や地域に結束を呼びかけています。

 

 今月8日のイラクのアバーディー首相との電話会談では、トランプは来月のイラク議会選挙を前に、イラク国内の結束を強めることが大事だと強調しました。
【2018/04/08 White House】Readout of President Donald J. Trump’s Call with Prime Minister Haider Al-Abadi of Iraq

 

 9日のカタールのタミーム・ビン・ハマド・アール・サーニー首長との会談では、互いにテロリストへの資金提供を停止することで意見が一致しています。またトランプ派湾岸協力会議(GCC)の結束を呼びかけています。昨年のカタール危機では、はじめトランプはサウジ側を支持していましたが、突然態度を豹変しカタールに味方し、サウジやUAE等カタール敵国側のはしごを外しました。
【2018/04/10 White House】https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/readout-president-donald-j-trumps-meeting-amir-tamim-bin-hamad-al-thani/

 

 トランプは中東におけるディープ・ステート(超国家秘密結社の一種)の影響力を弱め、中東地域の自立を促しているように見えます。

 

 

 トランプの最近のシリアでのやり方を見ていると、北朝鮮も似たような展開になるかもしれませんね。米朝関係が急転直下して、戦争一歩手前の状況に陥ることはあり得そうです。本当にミサイルをぶっ放すのかは知りませんが。

 

 予定より一年半早く横田基地にオスプレイが配備されることになりましたね。今夏にも配備されるとのことで。もちろん一つの理由は対北朝鮮。

 

 しかしそれだけではないでしょう。東京でオスプレイの事故を起こすことも目的の一つではないでしょうか。

 

 トランプは「口ではなく行動」で成果をあげてきた人物です。在日米軍撤退のために、外交的手段ではなく「もっと手っ取り早い行動」をとってくると考えるのは自然です。

 

 東京でオスプレイの大破事故が起こったらどうでしょうか。政治に無関心だった本土の人々も、否が応でも「米軍は出ていけ!」と思わざるを得なくなるのでは?

 

 早速、東京・羽村の中学校の校庭に米軍のパラシュートが落下してますよ。
【2018/04/10 毎日新聞】東京・羽村 中学校庭に米軍パラシュート落下 近くで訓練

 

 加計問題は首相案件と。日本の官僚統治機構が崩壊しているという声も、テレビのコメンテーターから飛び出す始末。

 

 こりゃ、日本は堕ちるところまで堕ちるでしょうね。米軍のパラシュート落下のようなソフトランディングで済むことは、ありえない。

 

 

 これまであまりにも強まりすぎていた超国家機関や基金、非政府組織といった国境なき組織の影響力が弱まり、弱まりすぎていた国家の影響力が多少は回復に向かっているのが、最近の世界での流れでしょう。

 

 グローバルとローカルという二極軸のバランスの変化が経済分野だけでなく、安全保障分野でも本格化している、ということです。

 

 「グローバルとローカルという二極軸のバランスの変化」というのは、日本で言えば「徳川幕府(ローカル)→明治政府(グローバル)」への移行という形で実現しましたね。

 

 えぇ、それは「歴史的大転換」を意味するのです。

 

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