米国単独覇権終了へ―世界大激動の過渡期突入は確定―

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米国単独覇権終了へ―世界大激動の過渡期突入は確定―

2017/07/25

 

 6月28日、米国務省が報告書を公表しました。その中身を一言で表せば次のようになります。

 

 「米国単独覇権の時代は終わった」

 

 世界大激動の時代を迎える確率は、100%です。

 

米国は米国単独覇権を放棄することに決めた

 この報告書は、米国務省や、CSISといった民間シンクタンクの複数のメンバーからなるグループによって作成されたものです。

 

 この報告書には米国が他国に対して軍事的優位性を保ってきた時代は終わったとあり、米軍関係者に対して、軍事戦略の立て方から運用面、将来のリスク評価に至る、軍事的なあらゆる面で従来のやり方を根本から変えるよう促す内容となっています。

 

 報告書の内容はテクニカルな面も多いのですが、米国の軍事関係者が過去から現在までの世界の軍事面や政治面においてどのような変化が起こってきたのか、今後どのような時代に突入するかについても分析されており、これからどのような心構えで将来を乗り切るべきかについてのヒントが与えられているとも言えます。

 

 

 この報告書で一番重要なのは、米国が70年前に築き上げ、現在まで維持してきた、米国単独覇権の国際秩序が非常に大きなストレスに晒されており、これ以上維持し続けようとしても無理で、秩序の崩壊は避けられない旨を明確に述べていることです。

 

 戦後50年間は、米国単独覇権を前提に、米軍関係者は十分軍事的活動をこなせていたようですが、9.11を機に少しずつ米国単独覇権の秩序の維持が難しくなっていったと書かれています。

 

 9.11を機に現代の秩序の複雑性と本質的な危険性が少しずつ大きくなっていき、米軍関係者も段々とどう対処していいのかわからないくらい、不確実性が増したり、不安を掻き立てられるほどになってしまったというのです。

 

 要は軍産複合体、ネオコンがカネ目当てでアフガニスタンやイラン、リビア、シリア等で全く不要で不当な軍事作戦を展開し続けた結果、米国自身収拾がつかなくなっていったのです。

 

 そうした、米軍でさえもコントロールが難しくなった状況下において、ロシアや中国といった強国や、イランや北朝鮮といった中程度の規模の対米や反米の国々が台頭してきます。

 

 さらにはイスラム原理主義組織ネットワークやテロリストネットワークといった、国境なき、明確なリーダーが不在の、既存の国家の枠組みでは全く捉えられない新しい反米集団が勃興してきました。

 

 このようにより強力で、広範にわたる対米・反米グループがどんどん出てきており、さらにはいつ起こるかわからない有機的な反米組織でさえも出てきてしまい、内的にも外的にも米国は既存の米国覇権の枠組みを維持することがほとんど不可能な状況に追い込まれてしまったのです。

 

 ひとえに、米国単独覇権が生んだ「思い上がり」が、自分たちでも収拾がつけられない国際情勢を生み出してしまい、米国自身「投げ出す」しか方法がなくなってしまったのです。

 

 全く身勝手な話であります。

 

 

 また報告書では今後どのような国際情勢が待ち構えているかについても指摘されています。

 

 何と指摘されているか。

 

 「永続的争い」(persistent conflict)の時代がやってくると書かれているのです。

 

 永続的争いについては抽象的な文言を用いて説明されていますが、ここでは報告書を読んだ私自身の感想、見解について書きたいと思います。

 

 (詳しく知りたい方は実際の報告書を読んでください。セクション5に書かれています)

 

 要はロシアや中国、北朝鮮といった国々の枠組みでの対立や争いのみならず、共通の理念や現状への共通の不満等を持った、国家内のみならず国境を越えてまで様々なグループが乱立し、雑多で多種多様なグループ間の対立や争いが延々と続くだろうと述べているのです。

 

 例えば現在のEU離脱の是非、難民受け入れ可否、ポピュリズムとグローバリズムの対立といったものはそうでしょう。

 

 欧州のイスラム化に賛成するグループと、欧州のイスラム化には断固反対、キリスト教社会の維持を主張するグループ同士の対立や争いもあることでしょう。

 

 中央政府に対する反対運動も今後世界で出ることでしょう。例えば将来の年金減額や社会保障サービス低下に対する抵抗運動もいずれ起こることでしょう。何の成果も出せないまま、借金だけが残り身動きが取れなくなった中央政府に愛想を尽かし、中央集権制度に反対するグループなんかも現れないとは言い切れません。

 

 イスラム原理主義に共鳴するもの同士の国境を越えた連携はますます広がっていくことでしょう。

 

 またテロリストグループがまた出現したり、テロリストとまではいかずとも過激派グループが出てきて、あらゆる国家に対立することも否定できないでしょう。大富豪から資金提供を受けた、民主主義や環境主義を標榜する無数のグループが現れ、国家を敵にしながら世界統一政府樹立に向けた運動も続くかもしれません。

 

 具体的にどのように推移するかはわかりませんが、インターネットという、国境を越えて情報を受発信できるいま、既存の国家という枠組みにとらわれない、民衆層から権力者層まで多種多様なグループが勃興して、敵対するグループ同士での収拾がすぐにつかない無数の争いが延々と続く、というわけです。

 

 もちろんそれは、既存の国家の枠組みが崩壊したり、国境が動くといったダイナミックな動きにまで発展する可能性も否定できないでしょう。

 

 こうした永続的な争いに、米国はもちろん、中東といった不安定な地域やいままで米国と連携していた国々、そしてロシアといった反米の国も巻き込まれるだろうとしています。

 

 つまり「全世界がカオス化する」と言っているのです。

 

 少なくとも多くの人々にはそう映るでしょう。一部の準備をしてきた人たちにとってはある意味でまたとないチャンスタイムかもしれません。また本当の民主主義を世界に根付かせるチャンスとも言えるかもしれません。

 

 結局は個人の捉え方次第でしょうが、大混乱が生じるのは避けられない、そう報告書は指摘しています。

 

 

 報告書では現行体制を「過去の時代の人工遺物(アーティファクト)」であると明言しています。すでに米国は新しい「ポスト米国単独覇権時代※」に入りつつある、もしくは過渡期であるとの認識に立っているのです。

 

 ※報告書では"post-U.S. primacy"や"post-primacy"という言葉が使われています。

 

 そして「ポスト米国単独覇権時代」とは、「永続的争い」の時代、すなわち「全世界カオス化」の時代なのです。

 

 少なくとも報告書では「米国はすでに、いままで理解されてきた"平和"ー暴力的争いが全く存在しない状態ーが、もはや当たり前ではない時代に突入した」と書かれています。

 

 米国自身がいままでの米国単独覇権の時代を「過去の人工遺物」であると切捨て、「平和が当たり前ではなくなった」と述べていることは、重く受け止めなければなりません。

 

 米国自身が「いままでの国際運営、や~めた!あとはしらん!」って、責任を放り投げるって明言しているようなものなのですから。

 

 そうなれば当然、世界は100%大混乱します。特に日米地位協定をはじめとした様々な協定や密約等により、事実上米軍の管理下に置かれていた日本への影響はかぎりなく大きいことが予想されます。

 

 皆さんはなんとなく現在や将来への不安や不満を抱えながらも、「現在のような状況が延々と続く」ような何かしらの考えに無意識に陥っているかもしれません。

 

 そうした無意識なイメージをお持ちであれば、出来るだけすぐにそれをすべて取り払ってください。

 

 「戦後の時代は終焉した」のです。

 

 私が言っているのでありません。アメリカがそういっているのです。

 

 頭の切り替えが、大切な時期に入っています。

 

大変動をチャンスに活かす

 米国単独覇権秩序が崩れれば、世界の経済・金融に大打撃が起こることが予想されます。

 

 しかし一体どのような大打撃が起こるのか...それを予見する一つの方法は、以前の大英帝国による世界覇権の崩壊の頃に何が起こったのかを見ればよいのです。

 

 以下は大英帝国の衰退~米国に覇権が移り変わっていった、1914年~戦後頃の大きな変化や出来事・背景と、通貨や為替に関する大きな変化や出来事について簡単にまとめたリストです。

 

 年代の色づけは、赤色がその後しばらく世界史的に見て世界情勢が良くなる(少なくともしばらく大幅に悪い影響が現れない)期間を表しており、青色がその後しばらく世界史的に悪い方向に進んでいくことを表現しています。

 

年代 世界情勢の出来事・変化 通貨・為替に関する出来事・変化
1816年~ 大英帝国による世界覇権が進展していく イギリスが金本位制を採用、英ポンドの価値がゴールドと同等に
1880年前後 植民地資本主義と結びついたグローバル自由経済が進展していく 国際金本位制の確立、世界各国の通貨価値が安定化
1914年 第一次世界大戦開始 国際金本位制の一時的な崩壊、英ポンドの価値下落、独マルクはやがて紙くずに
1920年代 第一次世界大戦の終結、戦勝国は疲弊し緊縮財政 各国が再び金本位制を採用、英ポンドの通貨価値も戦前の水準に復活
1930年代 世界大恐慌による、世界的な大デフレ。金融機関の破綻連鎖。ブロック経済に移行。 各国が金本位制を離脱、国際金本位制の完全崩壊。世界中の通貨の価値がゴールド比較で大幅下落
第二次世界大戦後 ブレトン・ウッズ体制での米国および国際機関による覇権が進展していく ドル金本位制の確立、世界各国の通貨価値の下落が食い止められ安定化

 

 特に重要なのは、年代が青色に塗られている部分です。よく見ると、今後世界情勢の大局が悪化するときには必ず各国の通貨の価値の大きな下落も同時に生じてきたのです。

 

 1914年の第一次世界大戦勃発、1930年代の世界恐慌による大デフレ、金融機関の破綻、そしてブロック経済への移行...

 

 大英帝国衰退時には世界的な政治、経済、金融の悪化または動乱化がある時期に起こり、その時に通貨価値の大きな下落が起こってきたのです。

 

 下図を見てください。下図は金価格を100としたときの各国の通貨価値の推移です。図を見ると明らかなように、英国の覇権が衰退している期間(1910-50年あたり)のある時期において、通貨価値がゴールドと比較して一気にズドーンと下落していますよね。

 

金価格と比較した先進国通貨の推移

画像ソース:World Gold Council

 

 このように、大英帝国の世界覇権衰退時には、少なくとも世界の通貨価値が下がり、相対的にゴールドの価値が上昇したのです。

 

 現在は当時と比較すると、グローバリゼーションのさらなる進展があり、さらには中央銀行の量的金融政策により異常に発行された膨大な紙幣が積み残されています。

 

 以前の何倍、何十倍、下手したらものレバレッジが掛かっていると言えるのです。

 

 つまり米国覇権衰退時には、少なくとも通貨に関して、過去の大英帝国の崩壊時に起こったことが、何倍、何十倍もパワーアップして起こるというのが、自然な見立てとなります。

 

 

 私がは一年以上前からゴールドを購入し、皆さんにもゴールドを勧めてきましたが、それにはちゃんと理由があるのです。

 

 今回の米国務省の報告書により、米国単独覇権の戦後秩序が解体されるのは確定だと思ってください。

 

 朗報なのは、まだゴールド価格はそこまで値上がりしていないことです。特に最近は先物ポジションの多くが売られたことにより、ゴールド価格は幾分値下がりしました。

 

 ただ最近は先物ポジションの少なさの割には、以前よりもやや価格は上がっています。米国で金貨や銀貨が好評など、現物のゴールドに対する需要が高いことが背景にあるものと思われます。

 

 準備をするのであれば、早目がおすすめです。

 

 今後、株式市場や不動産市場の暴落に伴う、借入返済用の現金需要の増加から、一時的に貴金属が売られるリスクはあります。

 

 しかし大英帝国衰退時の通貨に関する事実、現状の膨大なマネーの量、そして米国単独覇権の終了が確定したことを合わせれば、いずれゴールドの価格は上がるだろうと見るのが自然です。

 

 皆さんが何を信じ、何をもとに行動されるのかは皆さん自身に任せます。

 

 しかしぜひとも、未曾有の地殻変動が間近に迫っていることをご認識のうえ、できるかぎりの行動を早めにとられることをおすすめします。

 

 それが、大きな果実に結びつくかもしれないのですから。

 

私が利用しているゴールド購入サービスのブリオンボールト。大変動に備えたい方のみご覧ください。
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