カタール断交の陰にイスラエルあり

投資ブログへのリンク

カタール断交の陰にイスラエルあり

2017/06/08

 

 今週月曜日の6月5日、突然サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、エジプト、バーレーンがカタールとの外交関係を断ち切るという衝撃的な報道が飛び込んできました。陸海空の両国間の国境を越えた移動を禁止したり、カタールに対する食料輸出を禁止するなど、非常に厳しい措置が取られています。

 

 その後もイエメン、リビア、モルディブ、モーリタニア、セネガルもカタールとの断交を表明、ヨルダンはカタールとの関係格下げ措置を取っています。

 

 サウジやUAE等がカタールとの突然の断交措置をとった理由として、彼らはカタールがテロリストを支援し共謀していたことを挙げています。

 

 サウジ等はイラン、ムスリム同胞団、ヒズボラ、ハマスをテロリストやテロリスト支援国家だと見なしており、サウジはカタールに対し、ムスリム同胞団とハマスへの支援をやめろと述べています。
 【2017/06/06 TImes of Israel】Saudi Arabia: Qatar must stop supporting Hamas, Muslim Brotherhood

 

 そんなことを言うのであれば、サウジアラビアもカタール同様テロリストに資金援助していたではありませんか。
 【2017/06/06 スプートニク日本】ウィキリークス クリントン氏はカタールとサウジアラビアによるテロリスト支援を知っていた

 

 よって今回のカタールとの断交措置は、ならず者国家同士の仲間割れなのです。正義と悪との分断なのではなく、悪者同士の内紛ですのでそこは誤解しないでください。

 

 

 では何でこのような中東諸国同士の仲間割れが起こったのでしょうか。

 

 それはおそらく、外交上の極めて重要な情報のリークです。

 

 実はカタール断交措置が取られる前日の6月4日、今まで表面的にはほとんどつながりがないと思われていたUAEとイスラエルが、実は裏でズブズブな関係であることを、カタールの国営メディアアルジャジーラが報道したのです。
【2017/06/04 Aljazeera】Analysts: Leaks could threaten Emirati diplomacy

 

 アルジャジーラの報道の元ネタはこちらのインターセプトの記事です。
【2017/06/03 The Intercept】HACKED EMAILS SHOW TOP UAE DIPLOMAT COORDINATING WITH PRO-ISRAEL THINK TANK AGAINST IRAN

 

 "GlobalLeaks"と呼ばれるハッカー集団により、UAEとイスラエルのシンクタンクFoundation for Defense of Democracies(FDD)が裏でズブズブな関係にあり、対イランを初めとした中東情勢に関する陰謀を企んでいた事実が暴露されたのです。

 

 そのなかにはFDDの参与とUAEの駐米大使との今年4月のメールのやり取り等が書かれており、互いにカタールを嫌っている様子がわかります。

 

 FDDとUAE政府は直近6月11-14日に会議を控えており、そこでは"中東地域不安定化の道具としてのアルジャジーラ"に関する話し合いが行われる予定だったのです。

 

The agenda includes extensive discussion between the two on Qatar. They are scheduled to discuss, for instance, “Al Jazeera as an instrument of regional instability.” (Al Jazeera is based in Qatar.)

 

 FDDはトランプ政権が誕生して以来、中東戦略を計画してきたシンクタンクであり、UAE政府とのつながり等を見る限りは、中東情勢を背後で操ってきた中心組織のようです。よって上記会議は、カタール潰しのための話し合いである可能性が高そうです。

 

 つまり今回の湾岸諸国におけるカタールとの国交断絶措置は、UAE政府とイスラエルのシンクタンクとの裏のつながりが暴露され、カタールの弱体化まで企んでいたことを知り身を案じたカタールが報道に踏み切り、それに憤慨したUAEとその取り巻きのサウジ等がカタールとの関係断絶に踏みきったたものと見られます(断交の決定の背後にFDDの意向が反映されているのかどうかは不明)。

 

 カタール断交措置後の国際情勢の動きは、UAEとイスラエルの裏のつながりの暴露が今回の断交措置に大きな影響を与えたことを裏付けるかのように推移しています。

 

 サウジ、UAE、エジプト、バーレーン等の国々はカタールとの断交措置を取った一方で、イランやトルコ、クウェートはカタールに寄り添う姿勢を見せています。

 

 イランやトルコはカタールに対する食料支援を決定しましたし、トルコはカタールへの軍の派遣を議会で承認しています。またクウェートは断交措置を解除するよう、外交的な働きかけを行っています。

 

 FDDとUAEがイラン敵視していたことは上で述べた通りですが、それだけではなくFDDとUAEはクウェートの国際的信用を下げる陰謀を画策していました。さらに昨年夏にトルコで起こったクーデター未遂事件にも、FDDとUAEが関与しているようなのです。

 

They also appear to show clear collaboration between the FDD and the UAE on a campaign to downgrade the image and importance of Qatar as a regional and global power, including collusion with journalists who have published articles accusing Qatar and Kuwait of supporting "terrorism".(→ソース)

 

Hannah and Otaiba are frequently chummy in the exchanges. On August 16 of last year, Hannah sent Otaiba an article claiming that the UAE and FDD were both responsible for the brief military coup in Turkey.(→ソース)

 

 そしてイスラエル情報省の長官は、カタールは以前からスンニ派の湾岸諸国たちから面倒な国家だと思われていると述べ、今回のカタールとの断交措置を賞賛しています。
 【2017/06/06 Times of Israel】Israeli official: Qatar a ‘pain in the ass’ for other Arab countries

 

 こうした事実から、今回のカタールとの断交措置の裏に、UAEとイスラエルとのリークが関わっている可能性は高そうです。

 

 イスラエルのシンクタンクFDD、これはユダヤ人資本家で世界的カジノ企業ラスベガス・サンズのCEOであるシェルドン・アデルソン氏のカネで支えられたシンクタンクです。

 

 アデルソン氏はパレスチナの地にイスラエル国家を再建することを目指す政治運動シオニズム(ユダヤ教とは一切関係ない)を支持するシオニストであり、これまでトランプに対して米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転するよう、トランプに直接ロビー活動を行ってきた中心人物です。昨年から今年にかけてトランプの団体や共和党系の団体に多額の献金も行ってきました。
 【2017/02/09 Washington Post】Post Politics Sheldon Adelson to have dinner with Trump, adviser says
 【2017/02/24 CNN】Adelson: Trump likely to be 'best president for Israel ever'
 【2017/04/19 DAILY CALLER】Sheldon Adelson Donated $5 Million To Donald Trump’s Inaugural Committee

 

 しかし今回のリークにより、FDDが中東情勢の戦略を担ってきていたことがバレてしまいました。さらにはFDD―UAEの駐米大使―クシュナー(トランプの娘イヴァンカの夫)という人的なつながりがバレてしまったのです。

 

Otaiba has also developed a close relationship with President Trump’s son-in-law and adviser Jared Kushner. The two first met last June at the behest of Thomas Barrack, a billionaire investor and Trump backer. A Politico article last February described Kushner as “in almost constant phone and email contact” with the ambassador.(→ソース)

 

 つまり大富豪シオニストが米国を裏で"買収"して、国際情勢を裏で操りながらイスラエルを陰謀的に拡大しようとしてきたことがバレてしまったのです(すでにそういった類の話はいろんな人から言われていましたが、裏の生々しい人的つながりの一端が、当事者同士のメールのやり取りというリアルな証拠によって光に照らされてしまったのです)。

 

 これはイスラエルにとっては痛いと思います。トランプは5月半ばにイスラエル米大使館のエルサレムへの移転を延期していますし、泣きっ面に蜂です。

 

 2017年はイスラエルにとって特別な年です。実は湾岸諸国がカタールとの断交を発表した6月5日は、ちょうど50年前に第三次中東戦争が勃発した年です。

 

 第三次中東戦争はイスラエルの大勝利に終わり、エジプトからシナイ半島、ガザ地区を、ヨルダンから東エルサレムを含むヨルダン川西岸を、シリアからゴラン高原を占領、イスラエルは領土を大きく拡大しました。

 

 70年前の1947年はイギリスのパレスチナ委任統治の終了が発表され、国連のパレスチナ分割決議案が賛成多数で採択された年です。翌年のイスラエルの独立宣言、その翌日の第一次中東戦争勃発につながり、イスラエルにとって新たなフェーズ突入への大きな転換期でした。

 

 またいまからちょうど100年前の1917年11月2日はイギリス政府がバルフォア宣言を発表、当時世界最大の帝国で世界覇権の末期にあったイギリス政府がパレスチナでのユダヤ人国家建設を正式に支持し、パレスチナの地にロシアや東欧などから多くのユダヤ人が流入する大きな原動力となりました。

 

 またバルフォア宣言から約1ヵ月後にはパレスチナのイギリス軍がトルコ軍をエルサレムから撃退し、翌年からのイギリスによるパレスチナ委任統治へとつながっています。

 

 つまりいまからちょうど100年前もまた、イスラエル国家建設への一里塚となった年なのです。そしてそれは当時の世界覇権国の末期だったイギリスの力を利用して行われたのです。

 

 今回、イスラエルの米国大使館をエルサレムに移転するという動きは、「末期状態にある世界覇権国家がイスラエルの国家拡大を正式に後押しする」という意味で、100年前とまるっきり同じような形で動いたように見えます。

 

 しかし100年前と異なるのは、イスラエルにとって非常に不都合な情報がリークされて逆風が吹いていること。現在の世界的な情報公開の流れから考えると、今後もイスラエルへの逆風はますます強まるかもしれません。

 

 将来のことはよくわかりませんが、今後はイスラエルの動きに要注目でしょう。一見関係なさそうなニュースに見えても、イスラエルが裏で関与しているのでは?との意識を頭に置いておくのが、世界の動きを読み解く上で大切な気がします。

 

 

 

 2016年にトランプが大統領に当選し、世界は激動の時代に突入しました。

 

 各国は返済が不可能なほど債務を積み重ね、先進国の中央銀行による量的緩和政策により最後の貸し手としての役割が低下したいま、先進国・新興国問わず経済的に共倒れする危険性が高まっています。

 

 本サイトでは皆さんにこうした不確かな未来に少しでも対処していただきたく、一つの選択肢としてブリオンボールトという金投資サービスを紹介しています。

 

 日本円でスイスのチューリッヒに保管されている金地金を購入できるので、有事の際の金投資のみならず、自然と資産を地理的に分散して資産集中化のリスクを抑えることが期待できます。

 

 私も2016年から利用継続中です。将来がどうなるのか、金投資が果たして最適解なのかはわかりませんが、一緒になんとか難事を切り抜けましょう。
 →関連記事一覧へ
 →口座開設はこちらから-コストが安く済むスポット取引コースが人気です

アボマガリンク


アボマガ・エッセンシャル(有料)の登録フォームこちら


アボマガお試し版(無料)の登録フォーム


このエントリーをはてなブックマークに追加   
 

関連ページ

インフレ時代の幕開けへ
MbSの大ばくち?
10年後、世界地図から消えているかもしれない国
トランプが「本当にやろうとしていること」を考える_2
トランプが「本当にやろうとしていること」を考える_1
フランス革命前後期との比較でわかる、「AIによる人間支配」のシナリオ
AIネットワーク化と智連社会
貿易戦争と中東情勢緊迫化をつなぐものとは??
米国のシェールオイル増産停滞のスキを見て原油増産を企てるサウジアラビア
[2018/04/12]安全保障分野でも「国境なき組織」の弱体化が本格化している?
[2018/04/10]WTOを頭越しにすでに始まっている米中二国間交渉
[2018/03/29]データ中心時代の秩序形成には「世界的カオス」が欠かせない?
[2018/03/21]中国政府の規制強化とブラックストーンとの関係
[2019/01/14]プーチン「金正恩氏、朝鮮半島でゲームに勝利」(敗者:日本)
[2017/12/14]現金バラマキ政策を決定したサウジはバッドシナリオ進行中?
[2017/11/09]サウジは戦争を「回避」するために「戦争行為」発言をした?
[2017/11/07]ヒラリー・クリントン、もう闇を隠し通すのは無理そうだ
[2017/10/31]ギュレン運動を巡る対立が背景にある?ドイツ・EUがトルコへの資金提供カットへ
[2017/10/09]中東でますます本格化する米国・米ドル離れ
[2017/08/14]「中国は北朝鮮問題を外交的に解決するしかない」という弱み
[2017/08/11]どこか阿吽の呼吸を感じさせる米国と北朝鮮の緊迫状況
[2017/08/05]人工知能向け個人情報取得に邁進するモディ首相
[2017/07/25]米国単独覇権終了へ―世界大激動の過渡期突入は確定―
[2017/07/15]トランプ政権にしてやられたサウジアラビア
[2017/06/27]いよいよトランプの逆襲が本格的にはじまる...?
[2017/06/24]シリア情勢の回復進展の陰で動きの慌しいサウジ・イスラエル
[2017/06/12]カタール断交がテロ関連情報暴露の流れを生んでいる
[2017/06/08]カタール断交の陰にイスラエルあり
[2017/05/16][世界あるある探検隊]北朝鮮による核・ミサイル実験の前にはよく情報(諜報)関連の重大な事実が明るみに出るあるある(特にNSA関連)
[2017/05/11]フランスがソフトランディングする道筋は見えない
[2017/04/14]中国も米国も本心では対北朝鮮の全面戦争を行うつもりはなさそう
[2017/04/09]米国のシリア攻撃は戦後秩序解体の狼煙?
[2017/03/28]オバマケア代替法案の成立断念。米国が崩壊する道はもはや避けられなさそう
[2017/03/21]近々北朝鮮有事が勃発するかもしれない~世界大動乱時代の幕開け~
[2017/03/13]生き残りに必死なサウジアラビア...国際的地位は確実に衰退してきている
[2017/02/22]世界情勢振り返り。北朝鮮、フランス、トルコ
[2017/02/01]世界の動向メモ。為替問題、ドイツの動き、移民入国制限措置の隠された意味
[2017/01/13]トランプ政権はNATOの自滅を狙っているのかもしれない
[2017/01/06]鏡よ、鏡、鏡さん… ウィキリークスの本気。2017年は現代版グラスノスチが加速するかも
[2016/11/17]大きなうねりが進行中:ブレグジット、トランプの次は欧州
[2016/11/04]米国単独覇権の終焉:世界の情勢が目に見える形で変化している

▲記事本文の終わりへ戻る▲

▲このページの先頭へ戻る▲