10年後、世界地図から消えているかもしれない国

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10年後、世界地図から消えているかもしれない国

2018/11/13

 

 今回は、最近話題の某国についてです。

 

 記事の最後には、某国の情勢が日本国民の生活に直結しかねないリスクがあることを話しています。

 

[アボマガNo.25]10年後、世界地図から消えているかもしれない国

の記事(一部)です。10月25日に配信しました。

 

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万策尽きた「サウード朝アラビア王国」。暴走機関車と化すのも時間の問題?

 サウジアラビアは2014年から原油価格が急落したことを期に、ひどい財政赤字を抱えるようになりました。2015年にはGDPの14.8%の財政赤字というとんでもない水準に達しました。

 

 その後GDPに占める財政赤字幅は少しずつ改善していますが、原油価格が上昇した2017年でさえもGDPの8.9%の財政赤字という酷い状況です。サウジ政府は2022年まで財政赤字が続くとの見通しを出しています。

 

画像ソース: TRADING ECONOMICS

 

 ただ、サウジ政府予算で前提となる原油価格(OPECバスケット価格)は低めに設定されており、2023年の財政黒字化における原油価格は1バレル75ドルを想定していますから、現在の原油相場と比較すれば一時的に2023年よりも早く財政が黒字化する可能性はあります。

 

 サウジアラビアは原油価格暴落に伴う巨額の財政赤字を計上して以降、税収の2/3弱を占める石油収入依存からの脱却を目指す動きを少しずつ強めてきました。

 

 2016年4月にサウジ政府は長期経済計画である「ビジョン2030」を公表し、脱石油依存経済、若年層の雇用の創出、産業構造の高度化を念頭に入れていることを示しました。

 

 インフラを整備し、最新テクノロジーを利用した産業の発展や人材の育成に努めるという、まぁよくある長期経済計画です。

 

 しかし外部者だけでなく、サウジ政府ですら、脱石油依存経済構築にはかなりの時間が掛かることを暗に認めています。

 

 2017年のサウジの歳入に占める石油収入の割合は63.2%でしたが、財政黒字化達成を目指す2023年は石油収入の割合が70.4%になると見込んでいます。中期的に石油収入割合が減るどころか、ますます増えるだろうとサウジ政府は考えているのです。

 

 サウジ政府は原油生産能力を日量1250万バレルに維持する方針、つまり生産量は増加しないのですから、石油収入の伸びは原油価格の上昇期待を反映したものです。

 

 2020年の経済成長見通しは、実質GDP成長率が2.8%であるのに対し、非石油部門の実質成長率は3.2%と、非石油収入の伸びにしばらく期待できないためです。

 

 しかも2017-23年までのあいだに公的債務残高は倍近く増え、一方でサウジアラビア通貨庁の外貨準備は半分以下に減るとサウジ政府は考えています。

 

 「財政赤字拡大」「政府系ファンドの資産売却」という大きな痛みを負ってもなお、中期的に「原油価格上昇」に期待せざるを得ないのが、サウジの財政状況なのです。

 

 サウジ政府ですら、ムハンマド皇太子(MbS)が主導する長期経済計画の実現には懐疑的であり、成功は非常に難しいと考えているのです。数字はそのように語っています。

 

画像ソース: 中東協力センター

 

 しかも、サウジ政府は短中期的に非石油収入を少しでも増やするために、サウジ国民への痛みを伴う政策と進めています。ガソリン価格の引き上げ、電気・水道などの公共料金の引き上げ、付加価値税の導入、外国人労働者に対する人頭税などです。

 

 一方で国民の痛みを緩和するために中低所得者層向けの現金支給を2017年12月21日から開始しましたが、サウジ国民の半数以上の1300万人が申し込んでいます。いかにサウジ国民が、生活に関わる政策に敏感であるかがわかるものです。

 

 つまり、サウジ政府は遅くとも2018年予算策定時の段階で、財政破綻の回避に後がない状況に追い込まれていたのです。

 

 バラマキ政策と原油価格増で内政や財政の問題深刻化をなんとか先送りしながら、ビジョン2030に沿った長期経済計画をギリギリのところで成功させ、脱石油依存経済構築を達成するという「奇跡」を起こさないかぎり、サウジアラビア、つまり「サウード朝アラビア王国」の崩壊はほぼ不可避なのです。

 

 脱石油依存経済構築に足踏みをしている時間は、サウジにはないのです。

 

 しかし、MbSが実権を握る「サウード朝アラビア王国」の長期経済計画の早期実行に逆風が吹き荒れています。実行の第一ステップである十分な資本獲得や海外からの技術供与を受けられるのか、微妙な状況となっているためです。

 

 一つはサウジアラムコのIPOの頓挫です。

 

 それだけではありません。サウジ人ジャーナリストがトルコにあるサウジ総領事館で殺害された事件(当時は疑惑)をきっかけに、西側諸国の企業のCEOや、政府機関の要人らはサウジの首都リヤドで今月23-25日に開かれる予定の国際経済会議「未来投資イニシアチブ」への参加見送りを相次いで表明しました。

 

 未来投資イニシアチブはMbSが主催者であり、ビジネス、政府、市民団体の分野で影響力の強い世界的な指導者たちを集め、「22世紀に向けての青写真」(注:21世紀じゃないですよ!)と称していかにサウジが投資対象として魅力的であるかを大々的にアピールする場です。

 

 2017年から毎年一回開催されることになり、初開催となった2017年は90を超える国から3800人超のビジネスリーダーなどが参加しました。

 

 が、今回の事件によりそれがすべてパーになったのです。ラガルドIMF専務理事、ムニューシン米財務長官、英国・フランス・オランダの首脳、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、フォードなどの幹部らは不参加を決めました。

 

 …

 

 世界的にESG投資が一大ブームになると考えられるなか、非人道的事件の解明に消極的な、王政を敷くサウジアラビアは投資対象として敬遠されやすくなるでしょう。

 

 総じて、サウジ政府は今回のサウジ人ジャーナリスト殺害疑惑で疑惑を契機に、外国からの資本や技術供与を十分に受けることが厳しい状況に追い込まれたと考えられるのです。

 

 以上、サウジアラムコのIPO頓挫と西側諸国のサウジへの投資敬遠の流れが生じたことで、サウジアラビアは財政健全化に必要不可欠である脱石油依存経済構築形成に必要な資本や技術を早期に獲得することが厳しくなってしまったと考えます。

 

 完全に詰んだとまではまだ言いきれません。サウジアラビア情勢は、外国資本や技術を早期に獲得できるか否か。この一点がキーポイントとなりそうです。要はカネ次第ってことです。

 

 これがダメになれば、サウジが財政的に生き残るには1バレル80ドル程度の原油価格が中長期的に続くしかありません。それが上手くいかなければ課税を大幅に強化してなんとか食いつなぐしかありませんが、そうすれば内政が悪化してクーデターのリスクが高まるでしょう。

 

 

 私は、サウジアラビアの財政はほぼ詰み状態にあると考えています。このままいけばサウジ政府は、衰弱死するか、生き残りをかけて暴走するかいずれかの可能性が高いと思っています。

 

 生き残りをかけて暴走するとは、例えば他国の油井を破壊したり、中東諸国を仲間割れさせてGCC加盟国同士での紛争を起こすなど、産油国の地政学リスクを意図的に顕在化させて原油価格を吊り上げ続ける「最後っ屁」を想定しています。

 

 現在の原油価格はOPEC加盟国・非加盟国の減産合意継続が前提として織り込まれています。また原油在庫も原油価格に直結します。

 

 もし今後減産合意の継続が更新されずに終了へと向かったり、世界経済成長の低迷で原油在庫が増えれば、一時的に原油価格は下がるでしょうから、サウジの精神状態は限界に達するかもしれません。

 

 そうなったら、サウジが何をしでかすか正直わかりません。MbSという、まだまだ血気盛んな33歳の若造が実権を握っているのだからなおさらです。

 

 短期的な原油価格の急落が起こると、中東で地政学リスクが顕在化し、それが中期的に続く可能性も考えなければなりません。

 

 最悪、10年後にはサウジアラビアという国は世界地図から消えているかもしれませんね。

 

日本で高まるインフレリスク

 最後に、日本もサウジアラビアの状況は他人事ではありません。

 

 サウジの動き次第では一時的に原油価格が急騰し、日本の石油製品の価格も高い状況が中期的に続くおそれがあります。

 

 さらに今回は世界的に為替ヘッジが流行っていることもあり、超円高になりにくい状況です。リーマンショック後のように、超円高による円建て石油価格の下落にはあまり期待できないのです。

 

 次の3つが立て続けに起こると、日本国民の生活にかなりの打撃を与える可能性がありますので気をつけてください。

 

  • 原油価格の急騰(サウジ等の地政学リスクの悪化に伴い)
  • 米国の中央銀行が金融緩和を再開
  • 日銀が金融引き締めを開始

 

 後ろの2つは超円安要因であり、日本の輸入インフレが加速する合図となりえます。

 

 それと、原油価格急騰と日銀の金融引き締めは関連性があることに気をつけてください。「原油価格急騰→日本のインフレ率が日銀の物価安定目標である2%を超える→日銀が金融引き締め開始」という一つの道がありますので。

 

 サウジの情勢は、原油価格上昇のみならず超円安の引き金になりかねない話、ということです。

 

 日本の潜在的インフレリスクが足元で高まっているので、ご注意下さい。

 

 対策がまだの方は、少しゴールドに投資するなどし、将来のインフレリスクへの保険をいまのうちに掛けておくことをおすすめします。

 

 上の3つが同時に発生すると、円建て金価格は大きく伸びていくと思います。

 

私が利用しているブリオンボールト。資産防衛に有効とされる海外のゴールドをネットで簡単に購入できます。金の購入・保有を怠り金価格上昇の波に乗り遅れても、私は知りません。

 

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