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人工知能向け個人情報取得に邁進するモディ首相

2017/08/05

 

 またインドのモディ首相の政策がインド社会を大きく揺らしているようです。

 

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新税制導入によってまたしてもモディはインド草の根社会を揺らしている

 インドでは昨年11月8日(米国大統領選挙当日)に突然モディ首相が、当時通貨流通額の86%を占めていた500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣を廃止し、500ルピーと2000ルピーの新紙幣に切り替えると発表し、インド国民は2ヶ月弱の短い切り替え期間内に2種類の紙幣の切り替え措置をとるはめになりました。

 

 切り替え期間中は連日のように銀行窓口には長蛇の列が並び、暴動も起こる中、新紙幣が十分用意されていないため半日で営業終了となる銀行も出てくるなど、インド社会は大混乱に陥りました。

 

 いままで現金決済を利用してきた小規模事業主や農家、小売業経営者等の経済活動にも大きな影響を与え、従業員や日雇い労働者にも現金不足で賃金がまともに支払えない状態を生むなど、インドの草の根経済にも影響を与えました。

 

 その後経済は再び持ち直し始め、高額紙幣廃止政策の余波も収束に向かいつつあるなか、今度は7月1日から導入された、間接税に関する新税制がインド社会や草の根経済にまたしても大きな衝撃を与えそうです。

 

 元々インドの間接税体系は複雑で、中央政府や州政府で課税対象が分かれ、州政府同士でも税率が異なっており、課税の重複も発生するなど、非効率な間接税体系でした。

 

 また主に小・中規模のビジネス事業主による売り上げや利益の過少申告も横行しており、税金の徴収が思うように出来ませんでした。

 

 そこで中央政府や州政府ごとに分かれていた複雑な間接税体系を、GST(物品・サービス税)という消費税に一本化したのです。GSTは7月1日から導入されました(→参考(PDF))。

 

 インド政府は新税制のもとで税収が14%増加すると見込んでいるようです。

 

 複雑な税体系の一本化と言われれば聞こえは良いかもしれませんが、問題はそこではありません。

 

 実は新制度により、いままで年二回の税申告で済んだのが、毎月3回の申告+毎年の確定申告、計37もの申告をしなければならなくなったのです。

 

 これによりアナログ的手法で申告書類を作成・提出することは困難になったと思われます。

 

 インドにはGSTNポータルという、政府系機関と民間金融機関がほぼ半々に出資している民間有限会社GSTNが提供している、オンライン税申告システムがありますが、おそらく今後はGSTNポータルを利用して申告しなければ本業に精を出せなくなる人が続出するものと思われます。

 

 税制改革導入以前にGSTNポータルの登録者は660万人いたとのことですが、インド国民の1/4はいまだに読み書きが出来ず、多くの仕事場にはGSTNポータルを利用した税申告書類を提出するための機器がありません。パソコンを上手く使えない人たちも大勢います。

 

 要は今回の税制改革はすべてのインド国民、特に地方の貧困層のインド国民に対して、オンライン税申告システムの利用を強要する目的も含まれているのです。

 

 上手くオンライン税申告が出来ないインド国民は多数発生するでしょうから、それまでは小規模事業主は毎月の税申告に追われてまともに本業を営めない期間が出てきそうです。

 

 さらには新制度により毎月の納税が義務付けられました(いままでは3ヶ月ごとだった)。季節ごとに運転資本にバラツキがあるようなビジネスの場合、キャッシュフローの管理が難しくなり、場合によっては期限までに納税分のキャッシュを用意できなくなってしまいます。

 

 これもまたインド事業主、特に十分なキャッシュを貧困層にとっては経営の見直しを迫られる可能性もありますから、彼らのビジネスを一時的に大きく停滞させることでしょう。

 

 高額紙幣廃止のときも一時インド経済成長率は弱まり、2年ぶりに中国の経済成長率を下回ることになりましたが、今回の税制改革でも同じように一時的に経済成長率は弱まることが予想されます。すでにPMI指数にその兆候は現れています

 

 特に今回の新税制措置は事業主の経営モデルの見直しを迫らせる可能性があることから、高額紙幣廃止よりも経済に与える悪影響は大きいかもしれません。まぁいずれ収束するでしょうが。

 

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人工知能利権・基盤づくりを目的にインド国民の個人情報をせっせと集めている?

 しかし何故モディ首相は、短期間のあいだに高額紙幣の切り替え措置や納税・申告制度の強烈な引き締め策といった、インド社会を大きく揺らすのがわかりきった政策を立て続けに実行するのでしょうか。

 

 それは今後グローバル経済において長期的発展が確実な、人工知能、ビッグデータ、IoTといった「膨大な個人情報を利用して莫大な金儲けと権限強化が期待される分野」の基盤づくりや利権づくりに大きなメリットがあるからです。

 

 人工知能等の発展には個人情報の提供、特に生体データ(顔写真、虹彩、指紋、DNAなど)という、生まれながらにして変更不能または変更が難しいデータや、金融取引データという、取引記録を通じてその人の趣味から性格、思想、人間関係といった、内面やつながりの状態や変遷が簡単に判明または推測できてしまうデータが不可欠のようです。

 

 人工知能業界の発展に必要不可欠な生体情報や金融情報を、急いでかき集めているのが、インドのモディ政権なのです。

 

 インドにはアドハーという、日本で言うところのマイナンバー制度が2009年から導入されているのですが、2016年3月11日に議会で成立したアドハー法という法律によって、政府がインド国民の生体情報を収集し、アドハーのデータベースに保存する権限を法的に与えたのです。

 

 その後インド国民から生体情報を収集する権限を与えられた政府系機関UIDAIが6月に発足すると、虹彩と指紋のスキャンという生体情報は急速に集められていったようです(ただしプライバシーの権利に関する問題から、法的効力について現在最高裁の判断が待たれているところ)。

 

 現在アドハーの登録者数は11億9700万人で、18歳以上のインド国民のほぼ全員が登録している、世界最大の生体認証システムとなっています。

 

 生体情報の登録は任意なのですが、現在では福祉サービスのみならず、税申告、携帯電話購入時の個人の証明、電気・ガス・水道の接続、オンラインの金融取引で利用されており、もはや生体情報の登録は事実上義務化されているようなものです。

 

 ですので最近の高額紙幣切り替えや納税強化策は、人工知能システムを開発・運営したい多国籍企業等が喉から手が出るほど欲しい生体情報に加えて、金融情報までも政府が得られるようにして、政府の監視権限強化のみならず、人工知能関連企業等との関係構築や、彼らに対する強力な交渉道具を得ることが目的であると考えるのが自然です。

 

 最近の高額紙幣の切り替えや納税の強化といった政策も、政府の国民監視能力強化のみならず、人工知能業界を喜ばせて上手く取り込もうとする目的で、すべてのインド国民の金融取引をシステム内に組み込もうと考えて実行された可能性が高いです。

 

 実際、高額紙幣切り替え措置の導入後にモディ首相はキャッシュレス社会を目指すことを公言しています。

 

 現在、高額紙幣切り替えは収束に向かいそうですが、数字を確かめてみるとキャッシュレスには至らないにしても、高額紙幣の流通枚数は明らかに減少しています。

 

 いくつかの報道で出てきた数字で簡単に計算してみたところ、切り替え宣言発表前には約165億枚の旧500ルピー紙幣と約71.5億枚の旧1000ルピー紙幣、計15.4兆ルピーが流通していたようです。このうち期限までに銀行システムに預け入れられ切り替え対象となった紙幣は総額14.97兆ルピーです。

 

 これらは500ルピーと2000ルピーの新紙幣に切り替えられてきましたが、6月末の報道時点で500ルピー新紙幣の発行枚数は140億枚程度、2000ルピー新紙幣は37億枚程度の発行にとどまっていたようです。

 

 残りの不足分については、切り替え期限を迎えるまで全くアナウンスされていなかった200ルピー新紙幣の発行によって賄っていくようです。少なくとも2000ルピー紙幣のさらなる発行予定はないようです。

 

 高額紙幣の枚数は大体次のように変わったのです。

 

 切り替え前「500ルピー紙幣:165億枚、1000ルピー紙幣:71.5億枚」
 切り替え後「500ルピー紙幣:140億枚、2000ルピー紙幣:37億枚」

 

 500ルピー紙幣はもう少し増えるかもしれませんが、2000ルピー紙幣が増刷される見込みは薄いです。

 

 退蔵に適した高額紙幣の枚数が明らかに減少していることから、インド国民のマネーを銀行システムに組み込んで金融取引の補足をしやすくし、政府、銀行、IT企業などに都合のよい結果となりました。

 

 ちなみに高額紙幣切り替え政策は表向き、GDPの2-4割とも試算されるインド地下経済の隠し現金資産の撲滅だといわれましたが、地下経済の隠し資産は貴金属や土地、不動産といった実物資産で保有されているものなので、不正資産の撲滅にはなりえません。

 

 また新税制についてはインド国民の税申告をGSTNポータルというオンライン申告システムに移行させるなど、インド政府の課税強化という側面が一番大きいですが、GSTNポータルを運営しているGSTNの出資比率は政府系49%、民間金融機関51%ですから、金融機関に対するビジネス的メリットもありそうです。

 

 

 PwCの人工知能に関するレポートを読みましたが、今後2030年までに人工知能が生み出すといわれる15.4兆ドルのGDPのうち、大体2/3は中国と米国によるもので、今後の長期経済成長が期待されているインドに関する言及はありませんでした。

 

 一方でインドは2016年時点で全世界の約18%にあたる13.24億人の人口を擁しており、今後も増え続けいずれ中国を抜いて人口は世界最大となることから、人工知能関連サービスでカネを得られる人たちにとっては全インド人の個人情報はいますぐにでも喉から手が出るくらい欲しいはずです。

 

 よって現在のモディ政権の政策は、膨大な個人情報を得てさらなる人工知能技術やサービスの向上を図ってぼろ儲けしたい多国籍企業等や、情報を利権の構築や交渉道具に利用できるインド政府側には早くからメリットが現れるでしょうが、インド経済にいつ、どの程度の規模で大きなプラスの効果が現れるかは不明です。

 

 将来インド経済は発展するでしょうが、それはそれとして、ちょっといまのモディ政権のやり方はやりすぎに見えますね。支持率は8割近くあるようですが、このまま安定した政権を保ちながらうまくやれるのでしょうか?

 

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