プーチン「金正恩氏、朝鮮半島でゲームに勝利」(敗者:日本)
2018/01/14
【2018/01/11 産経ニュース】安倍晋三首相、平昌五輪の開会式欠席へ 慰安婦日韓合意めぐる韓国新方針で判断
安倍晋三首相は韓国で2月9日に行われる平昌五輪の開会式への出席を見送る方針を固めた。複数の政府関係者が10日、明らかにした。表向きは1月22日に召集予定の通常国会の日程があるためとするが、慰安婦問題の解決を確認した2015年12月の日韓合意をめぐり、文在寅政権が日本政府に新たな措置を求める姿勢を示したことを受けて判断した。
【2018/01/09 NHK】韓国 北朝鮮がピョンチャン五輪に代表団派遣などで合意
韓国と北朝鮮の閣僚級会談は9日午後9時前、共同報道文を採択して終了し、北朝鮮がピョンチャンオリンピックに代表団を派遣することなどで合意しました。
韓国と北朝鮮の閣僚級会談は、南北の軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)の韓国側の施設「平和の家」で9日午前10時から始まり、休憩を挟みながらおよそ11時間にわたって断続的に行われ、日本時間の9日午後9時前、共同報道文を採択して終了しました。
それによりますと、来月9日に開幕するピョンチャンオリンピックに北朝鮮が高位級の代表団と選手団、それに応援団などを派遣することで合意し、それに向けて実務者による会談を開くということです。
朝鮮半島情勢で日本は外交的大敗北を喫した。トランプにもはしごを外された日本。同じくトランプにはしごを外されたサウジアラビアは、現在内憂外患を抱えており今後も不幸が続きそうである。国際的な流れをみるかぎり、「日本だけは大丈夫」「神風が吹く」という幻想はとっとと取っ払わないとマズそうだぞ。
火星15の発射実験成功が韓国・北朝鮮融和のターニングポイント
今年に入ってから朝鮮半島情勢が急変していますね。こうした地政学的なニュースは細かい内容がわからなくても、その流れを追うだけでもいろいろと発見があるものです。
そこでまずは最近の朝鮮半島情勢に関するニュースの見出しを時系列で眺めて見ましょう。
【2017/11/30 ロイター】北朝鮮のミサイル、米全土が標的 数回の実験で実戦配備も=専門家
【2017/12/13 聯合ニュース】金正恩氏「核武力完成は歴史的勝利、核強国へ前進」 軍需工業大会で
【2017/12/27 時事通信】秘密協議、内容を公表=韓国作業部会「再燃不可避」-慰安婦合意の検証結果
【2018/01/03 BBC】「僕の核ボタンの方が大きい」 金委員長発言にトランプ氏反応
【2018/01/03 ロイター】北朝鮮、韓国とのホットライン再開
【2018/01/05 ハフィントンポスト】米韓軍事演習、平昌オリンピック中は実施せず
【2018/01/05 BBC】北朝鮮、南北会談の韓国提案を受け入れ
【2018/01/05 東京新聞】文大統領、元慰安婦に謝罪 意向を聴かず「日韓、公式合意」
【2018/01/09 産経ニュース】日本政府、北朝鮮の五輪参加歓迎も韓国の融和警戒
【2018/01/09 産経ニュース】河野太郎外相「北朝鮮には明るい未来はないと認識してもらいたい」
【2018/01/09 産経ニュース】「東京とソウルでただちに抗議」「10億円の扱い、説明聞きたい」…日韓合意の韓国新方針 河野太郎外相の発言詳報
【2018/01/11 ブルームバーグ】トランプ氏、南北対話中に米国は北朝鮮に軍事行動を取らない
【2018/01/11 産経ニュース】安倍晋三首相、平昌五輪の開会式欠席へ 慰安婦日韓合意めぐる韓国新方針で判断
【2018/01/12 産経ニュース】安倍晋三首相「全く受け入れられない」 公式表明は初めて
【2018/01/12 スプートニク】プーチン氏「金正恩氏、朝鮮半島でゲームに勝利」
見出しを眺めてみると、最近の朝鮮半島情勢は次のように見ることができます。
- 北朝鮮による火星15の打ち上げ実験成功により、朝鮮半島情勢が新フェーズに入ったようだ
- 新年に入り、北朝鮮と韓国の関係が急速に改善しているようだ。そのきっかけとなったのが1月3日に北朝鮮が韓国とのホットラインを再開したことにあるようだ
- ホットライン再開前後でトランプの北朝鮮対応が180度変化したようだ
- 北朝鮮と韓国との関係改善の兆候と、韓国と日本の関係悪化が同時進行しているようだ(特に1月9日に両方にとって重要な報道が相次いで流れている)
- 日本だけが朝鮮半島有事を望んでいるかのようだ
- 金正恩氏、朝鮮半島でゲームに勝利。敗者、日本
北朝鮮は昨年11月の終わりに大陸間弾道ミサイル火星15の発射実験を行いました。火星15は米国のミサイル防衛網を破るための装置を搭載しながら米国本土を攻撃できるとみられており、あと数回発射実験を行えば大気圏再突入技術も確立できると言われています。
もし北朝鮮が対米戦争に備えるのであれば、大気圏再突入技術を確立するために立て続けにミサイル発射してもおかしくないと思うものですが、金正恩氏はこの時点で「核武力完成は歴史的勝利」だとし、軍事力の増強を大々的に称えました。
そして新年に入り、一気に北朝鮮と韓国の外交関係が改善に向かっているのです。北朝鮮は平昌五輪・パラリンピックが終わるまでは核・ミサイル実験はおそらく行わない、行えないでしょう。
昨年まであれだけ核・ミサイル実験をやっておきながら、詰めの部分を行わないまま軍事から外交へとフォーカスを切り替えているように見えるのです。
韓国と北朝鮮は9日、南北軍事境界線がある板門店の韓国側施設「平和の家」で高官級会談を行い、共同報道文を採択しました。
金正恩氏が板門店で南北間を結ぶホットライン(直通電話回線)を再開するよう指示し、韓国とのホットラインが約2年ぶりに再開してから、わずか6日。爆速です。
高官級会談で採択された中身は以下の3つからなります。
【2018/01/09 聯合ニュース】南北高官級会談で採択した共同報道文全文
- 平昌冬季五輪・パラリンピックの成功に関する内容(スポーツ)
- 軍事的緊張状態の緩和に関する内容(軍事・安全保障)
- 朝鮮半島問題の外交的解決に関する内容(外交・安全保障)
さらに気になったのは、上記スポーツ、軍事、外交に関するすべての内容について「民族」という言葉が使われていることです。
五輪・パラリンピックを通じて「民族の地位を高め」、南北の軍事的緊張状態の緩和により「民族の和解と団結を図り」、「わが民族が朝鮮半島問題の当事者として」南北関係を巡るすべての問題について、対話と交渉を通じて解決していくとあります。
どうも、韓国と北朝鮮の関係改善は結構期待できるように思えます。
そもそも韓国と北朝鮮の国境分裂は欧米列強の東アジア進出による影響が大きく、日本が1910年に韓国を併合するまでは李氏朝鮮という一つの国家として、500年以上も朝鮮民族国家が形成されてきた歴史があるわけです。
トランプが世界の警察としての米国の役割を終わらせようとしているいま、つまり韓国と北朝鮮の分断の大きな原因となった欧米列強の東アジア進出とは真逆の流れが起こっているいま、韓国と北朝鮮が(国家を統一するかどうかはともかくとして)協調的外交関係を築くことは、歴史的必然とさえ言えるものです。
民族という、朝鮮半島に住む人々にとっての根本的なアイデンティティといえる概念が共同報道文の中身の基盤になっているわけです。これは朝鮮半島の歴史が良い方向に大きく動く気配を感じます。
4年前、ソチ五輪のときも、五輪後にクリミア危機、クリミア併合が起こり、結果的に当時の五輪開催国であるロシアが地政学的・外交的に勝利しました。
そして今年、今度は朝鮮半島でも五輪開催国の地政学的・外交的勝利が起こるのでしょうか?
(ただし今後何が起こるかはわからないので、楽観視はしすぎないほうが良いとは思いますが)
日本・サウジ・イスラエル:トランプの罠に掛かった国際的負け組国家
今度はトランプ大統領の反応を見てみると、面白いことがわかります。次の2つの報道の見出しを見てください。
【2018/01/03 BBC】「僕の核ボタンの方が大きい」 金委員長発言にトランプ氏反応
ドナルド・トランプ米大統領は2日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が自分の机には常に核兵器発射のボタンがあると述べたことに対し、自分の核兵器ボタンの方が「はるかに大きく、強力だ」とツイッターに投稿した。
【2018/01/05 ハフィントンポスト】米韓軍事演習、平昌オリンピック中は実施せず
アメリカのトランプ大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1月4日夜に電話会談し、韓国・平昌で2月に開かれる冬季オリンピックの期間中は合同軍事演習をしない方針で合意した。
【2018/01/12 WSJ】トランプ氏、金正恩氏と「非常に良い関係」
「おそらく金正恩氏とは非常に良い関係にある」
「私は人々と関係を築ける。皆さんは驚いていると思うが」
1月4日から、トランプは北朝鮮への態度を180度変えたのです。それまでトランプは北朝鮮へ軍事的・経済的圧力を掛けるとの脅しを繰り返してきたわけですが、日本の正月休みが明けたとたん、トランプの北朝鮮への対応が様変わりしたのです。
はしごを外されたのが日本。あれだけ米韓と北朝鮮への最大限の圧力をかけることで合意していると言っておきながら、韓国、さらにはトランプに裏切られた格好です。
これにより、朝鮮半島有事を望んでいるのが日本だけであることが国際社会にバレてしまいました。プーチンは北朝鮮を朝鮮半島情勢における勝利者だと述べていますが、そうだとすれば日本が敗北者なのです。外交的な大敗北です。
(トランプは五輪後に態度を再度豹変する可能性がありますが、日本が朝鮮半島情勢で外交的敗北を喫した事実が覆ることはありません)
トランプにはしごを外されたのは日本だけではありません。昨年6月のカタール断交のときにサウジアラビアがトランプからはしごを外されました。
当初トランプはカタールへの強硬路線を取るサウジを支持していましたが、サウジ側がカタールにアルジャジーラを閉鎖せよといった無茶苦茶な要求をカタールに突きつけたあと、トランプはそれまでの態度を翻しました。
トランプは湾岸諸国に結束を呼びかけただけでなく、カタールとテロリズムへの資金提供を巡る対策を講じる覚書に署名し、サウジと戦争寸前に追い込まれたカタールとの協調的関係を結んだのです。
[2017/07/15]トランプ政権にしてやられたサウジアラビア
そんなサウジアラビアは、内政ではカネが足りない、市民に公共料金の値上げを迫る、政府と宗教指導者との軋轢といった問題があり、対外的にはイランやヒズボラとの関係悪化、イエメンのフーシ派との紛争泥沼化を抱えるなど、どうしようもない内憂外患状況にあります。
日本はサウジアラビアと、トランプからはしごを外された以外にも似ている点があります。例えば...
- 安全保障を米軍に頼ってきたこと
- 米国(米軍)が安全保障の大きな見返りを受けてきたこと(サウジ:ペトロダラーによる米ドル覇権維持、日本:米軍の治外法権を認める制度・法体系)
- 昔は輸出大国でカネも潤っていた(サウジ:原油輸出→ロシアに負け気味、日本:製品輸出→中国に負け気味)
- 財政赤字から抜け出せず、財政健全化目標を2020年度から先送りしたこと(サウジ:3年、日本:7年)
- 政権が若者からの支持に支えられていること
- 最近イスラエルとの関係を急速に強めてきたこと
どうも世界のニュースをみていると日本、サウジ、それにイスラエルは似たようなポジションにいるように見えます。トランプは軍事・安全保障面でイランと北朝鮮を国名をあげて敵視していますよね。そのイランと敵対するのがサウジ、イスラエルであり、北朝鮮と敵対するのが日本なのです。
トランプからはしごを外されたのが日本とサウジ。一方イスラエルに対しては、トランプはエルサレム首都認定により逆にイスラエルに表向き平伏、事実上寄生し、イスラエルの逃げ道を塞ぎながら国際的に孤立化させているように見えます。手法は違えど、この3国はトランプの罠に引っかかってしまったのではないでしょうか。
さて、今度は日本の内部を見ると...
【2018/01/08 毎日新聞】山梨の国有地 日本航空学園に格安売却 評価の8分の1 財務省
【2018/01/08 リテラ】加計学園に国民の血税投入の新疑惑! 新規補助金交付40校中2校が加計経営の大学、特区諮問会議の決定直後に
【2018/01/12 毎日新聞】JR東海 社長に金子氏 葛西氏は代表権外れる
通常国会の召集を控えて、また何か臭い報道が出てきていますね。このうちJR東海のニュースはあまり関係ないように見えますが、実は葛西氏は安倍首相と近い関係にあり、安倍政権を裏で支えてきた人物だと言われています。そんな葛西氏のJR東海での権限が大きく低下することになるのです。
日本の内部をみても、安倍政権にとっての内憂が日本を覆っているように見えます。
さてJR東海といえば最近リニア談合事件で世間を騒がせていますが、リニア事業は原発と関係があると言われており、実際リニア実験線で使われる電力は、主に柏崎刈羽原発からの日本初の超高圧送電線によって送られてきました。
柏崎刈羽原発の原子炉製造元は日立、東芝、ウェスチング・ハウスの3社です。このうち東芝がウェスチング・ハウスの原発事業を2006年に買収したことが引き金となり、奈落の底へ落ちているのは周知の事実です。
残るは日立ですが、そんな日立はいまだに原発が大好きです。
日立は英国で原発2基を建設する総事業費3.3兆円のプロジェクトを進める予定です。すごいのは、このうち日本側が負担する1.1兆円の融資はすべて政府保証な点です。つまり英国原発事業で損失が生じれば、税金で賄われるのです。
【2018/01/11 朝日新聞】日立の英原発事業、日英政府が支援 損失なら国民負担も
今月9日に経団連の次期会長への就任が発表されたのは日立の中西宏明会長。彼は原発を推進してきた人物で、安倍首相と近い関係にあるとされています。
【2018/01/12 ニュース屋台村】次期経団連会長は中西日立会長でいいのか? 政府丸抱えで英国へ原発輸出
流れをみるかぎり、日立の動きは「飛んで火にいる夏の虫」のように見えますが、どうなのでしょうか?特に論理的根拠があるわけではありませんが...
森友問題、加計問題、スパコン助成金不正受給、リニア談合事件、日本航空学園と安倍政権にとっては不幸続きです。メディアは報じませんが、こうした一連のスキャンダルのマグマは見えないところで着々とエネルギーを蓄えているように見えますし、日本の内政混乱の本番はこれからなのかもしれません。
いままでは安倍首相が窮地に立たされると北朝鮮がよくミサイルを発射してくれましたが、少なくとも平昌五輪・パラリンピックが閉幕するまでは期待できません。N○Kが国政のニュースもちゃんと十分な尺を使って伝えるのか、それとも過剰に五輪のニュースを流すのか、対応が楽しみですね。
**********
朝鮮半島情勢の流れからスタートしたら日本にたどり着きましたが、どうも日本はただ事ではない方向に向かう可能性も否定できないように見えます。
- 朝鮮半島問題で外交的大敗北を喫した
- トランプにもはしごを外された
- トランプにはしごを外されたサウジ政府は、トランプの呪いに掛かったかのごとく、内憂外患を抱えてどうしようもない状況
- サウジと日本は過度な米軍依存、財政黒字化目標を何年も先送りする苦しい財政状況、最近親イスラエル化しているなど結構似ている点がある
- そんな日本政府もサウジ同様、内憂外患を抱えている
いよいよ2018年は日本も大きな試練を迎えることになるのでしょうか...
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