【Firstradeの使い方】アメリカ証券口座の明細書(Statement)の項目説明
今回は毎月一回発行されるアメリカ証券口座の明細書(Statement)の中身について説明します。
明細書は時折見慣れない手数料を取られていたりして「なんだこりゃ?」と首をかしげることも少なくありません。そこで明細書で特に重要だと思われる箇所や首をかしげてしまいやすい箇所について、私の知っている範囲内で説明を行います。
目次
Income And Expense Summary
まずはIncome And Expense Summaryです。明細書の最初の方のページに載っています。
Income And Expense Summaryでは配当といったインカム収入やキャピタルゲイン、税金や売買手数料といった手数料などのサマリーが記載されています。信用取引を行っている人は金利支払いも記載されます。
Income And Expense Summaryは、あとで説明するAccount Activityに記載されているインカム収入や手数料をまとめたものと思ってください。そのためIncome And Expense SummaryはAccount Activityと大いに関わりがあります。
サマリーは今月分のサマリーである「This Period」と、本年の現時点までの合計を表した「Year to Date」が並べられて表示されています。
配当や金利収入・所得について、Income And Expense Summaryに書かれている数字を使って、日本で確定申告することになります。
※譲渡損益に関しては、各取引ごとに私たち自身できちんと記録・計算して求める必要があります。
それでは各項目の解説です。解説する項目は私が現時点までに実際に確認できたもの(上図にある項目)に限ります。他にも項目が存在するはずですが、それらについては説明できないのでご了承ください。
項目 | 内容 |
---|---|
Taxable dividends | 配当収入(源泉徴収前)です。DRIPによって実際にキャッシュとして受け取っていない分の配当金も含みます。 |
Non-resident tax paid | 米国で源泉徴収された金額です。 |
Foreign tax paid | 海外(アメリカ国外)で掛かった税金です。主にADRに対する源泉徴収額です。一部銘柄の配当課税は「Non-resident tax paid」ではなくこちらに分類されます。 |
MLP distribution | MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)から受け取った分配金のことです。日本では配当収入の一種として扱います。 |
Investment expense | これまでにかかったすべての手数料です。売買手数料やADR保管料といったあらゆる手数料を含みます。 |
一部よくわからない事柄があるかもしれませんが、その一部については下でも説明します。
上の各項目は、日本の税申告書では次に対応します。
- 配当収入:Taxable dividends、MLP distribution
- 配当費用:Investment expense
- 配当所得:「配当収入ー配当費用」
- 外国所得税額:Non-resident tax paid、Foreign tax paid(外国税額控除で使用します)
Portfolio Summary
続いてPortfolio Summaryを説明します。こちらでは名前の通り、皆さんのポートフォリオの成績の概要が記載されています。
項目の解説です。
項目 | 内容 |
---|---|
Description | 銘柄の名称 |
Symbol/CUSIP | 銘柄のシンボル(または証券コード) |
Account Type | 口座タイプ。通常は「C」(キャッシュ口座)でしょう。「M」は信用取引用口座を意味します。 |
Quantity | 保有銘柄数 |
Price | 明細書の月の最後の日の終値 |
Market Value | 市場価格。Quantity×Priceの計算結果となります。 |
Last Period's Market Value | 前月の市場価格 |
%Change | Last Period's Market Valueと比較したときの、Market Valueの増減率 |
Est. Annual Income | 今年1年で受け取れる、配当といったインカム収入の見積もり額 |
% of Total Portfolio | ポートフォリオの全資産に占めるMarket Valueの割合 |
* | 各銘柄の一番左端にあるマーク。付いているとその銘柄にDRIPが適用されていることを意味します。 |
Account Activity
最後にAccount Activityについて説明します。ここでは明細書の該当月に行われた様々なアクションについての記録です。
皆さんの売買記録はもちろんのこと、配当の受け取りや配当再投資、その他ADR保管料といった様々なキャッシュの流入・流出を伴ったイベントが記録されています。
ここが明細書で一番訳わからないことが書かれている部分であると同時に、海外投資の勉強にも役立つ部分です。というのは今まで知らなかった手数料の種類を新たに学べますし、予想外に手痛い手数料を支払っている自分に気づけるからです。
早めに手数料のルールを知っておけば、今後投資をするときに無駄な手数料を取られないように気を付けるきっかけとなれるでしょう。
説明を開始する前に一つお断りです。ここでも私がいままでに実際に出会った項目についてのみ説明していきます。すべての項目を網羅しているわけではないことをあらかじめご了承ください。
それでは説明を開始します。Account Activityは各Transaction(購入、売却、配当支払いなど)ごとに発生したキャッシュの流入、流出が記録されています。
キャッシュの流入、流出などの情報を表しているのがDebit、Creditなどの列項目です。まずはこの列項目について説明しましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
Transaction | 取引種類のことです。購入、売却、配当、配当再投資などの取引の種類を表します。以下の項目は各取引に応じて意味合いが変わりますので気を付けてください。 |
Quantity | 銘柄数のことです。例えばTransactionが「BOUGHT」なら購入銘柄数、「SOLD」なら売却銘柄数、「REINVEST」なら配当再投資によって追加購入された銘柄数を意味します。 |
Price | 1株あたりの価格のことです。例えばTransactionが「BOUGHT」なら1株あたりの購入価格、「SOLD」なら1株あたりの売却価格、「DIVIDEND」なら1株あたり受取配当額を意味します。「WH」と書かれていれば源泉徴収を意味します(Withholdingの略) |
Debit | 各Transactionで発生した口座からの資金流出額を表します。例えば「BOUGHT」のときは売買手数料を含めたトータルの購入額を意味します。「WH」と書かれた行の場合は源泉徴収額を表します。 |
Credit |
各Transactionで発生した口座からの資金流入額を表します。例えば「SOLD」のときは売買手数料が引かれた後の売却額を意味します。 |
それでは各Transactionについての説明を行っていきます。下のリンクをクリックするとワープします。
BOUGHT
「BOUGHT」は購入アクションのことです。その月に購入した各銘柄に対して記載されます。見るべきポイントは次です。
項目 | 内容 |
---|---|
Quantity | 購入銘柄数のことです。 |
Price | 1株あたりの購入価格のことです。 |
Debit | 売買手数料を含めたトータルの購入額を意味します。 |
「BOUGHT」で生じた購入手数料は、最初に説明した「Income And Expense Summary」のInvestment expenseに計上されます。
SOLD
「SOLD」は売却アクションのことです。その月に売却した各銘柄に対して記載されます。見るべきポイントは次です。
項目 | 内容 |
---|---|
Quantity | 売却銘柄数のことです。 |
Price | 1株あたりの売却価格のことです。 |
Credit | 売買手数料を引いた後に残った売却総額を意味します。 |
「SOLD」で生じた売却手数料は、最初に説明した「Income And Expense Summary」のInvestment expenseに計上されます。
DIVIDEND
「DIVIDEND」は配当金の受け取りを意味します。見てほしいのは以下の項目です。
項目 | 内容 |
---|---|
Description | ここに書かれている「REC <日付>」は企業から配当金が支払われた日を、「PAY <日付>」は皆さんの口座に配当が実際に支払われた日を表します。 |
Price | 数字の場合は1株あたりの受取配当金額のことです。「WH」の場合はこいつが書かれている行が配当課税に関する説明であることを意味します。 |
Debit | 配当課税額を表します。Priceに「WH」と書かれた行に書かれています。 |
Credit | 配当課税の税引前受け取り配当金総額を表します。 |
「Credit」に書かれた配当金総額は、最初に説明した「Income And Expense Summary」のTaxable dividendsに計上されます。
「Debit」に書かれた配当課税額は、基本的には最初に説明した「Income And Expense Summary」のNon-resident tax paidに計上されます。ただし一部の銘柄は代わりにForeign tax paidに計上される場合があります。
REINVEST
「REINVEST」は配当再投資を意味します。DRIPの指定をしている銘柄に対して基本的に自動的で行われます。見てほしいのは以下の項目です。
項目 | 内容 |
---|---|
Description | 「REIN @~」に書かれている数字は配当再投資をしたときの購入単価を表します。ここに書かれている「REC <日付>」は企業から配当金が支払われた日を、「PAY <日付>」は皆さんの口座に配当が実際に支払われた日を表します。 |
Quantity | 配当再投資によって購入された銘柄数です。 |
Debit | 配当再投資の購入に使われた金額です。受取配当金から配当課税額やその他手数料(ADR保管料など)を除いて残った金額となっています。 |
本項目は最初に説明した「Income And Expense Summary」のどの項目にも計上されません。
ADR
「ADR」とはADR保管料(ADR custody fee)のことです。ADR保管料について説明する前に、まずはADRについて簡単に説明しましょう。
ADRとはNYSEといった米国市場で扱われている、米国以外の企業の証明書のことです。直感的には「数株分をまとめた証券」みたいなものです。
NYSEなどではヨーロッパなど米国以外の企業の銘柄をそのまま販売しているわけではありません。アメリカの投資家が売買しやすいように、アメリカの預託銀行(BNYメロンなど)がADRの形でまとめて発行したもの(例えば2株を1ADRにまとめる)が販売されているのです。
私たち投資家は米国以外の企業の銘柄もアメリカの市場で、米国企業の銘柄とほとんど同じように自由に売買できますが、これが可能なのもADRという仕組みがあるからです。
→【参考】SEC Investor Bulletin: American Depositary Receipts
ADRは私たち投資家がコストを抑えて米国以外の企業の銘柄を売買できる仕組みを与えてくれています。しかしそれでも多少の手数料は発生してしまいます。その一つがADR保管料です。
ADR保管料は皆さんが保有するADRに対する配当が支払われるたびに支払われます。ADR保管料は保有しているADR1株につき1-3セント程度かかります(額は銘柄によって異なります)。
例えばあるイギリス企業のADRを100株持っていると、配当が支払われるたびに総額1ドル~3ドル程度のADR保管料(1~3セント×100)が取られる場合があります。場合によってはADR保管料が取られない場合もありますが、詳しい条件を私は知りません。
ADR保管料に対しては次の2つをぜひ記憶しておいてください:
- ADR保管料がかかる可能性があるのは米国以外の企業。米国企業の銘柄では掛からない。
- 通常の株価が1桁台の安い銘柄だとADR保管料は意外とバカにならない
特に2番目は重要で、例えば株価が3ドルとか4ドルといった安い銘柄に対して、配当が支払われるたびに受取配当額の1/10程度のADR保管料を支払う場合もあります。DRIPをしている人にとっては資産増加スピードに地味に大きな影響を与えるので注意が必要です。
株価の安いADRを購入する際は、ADR手数料が意外と掛かってしまう可能性を考えてから購入に踏み切ることをおすすめします。
なお本項目は最初に説明した「Income And Expense Summary」のInvestment expenseに計上されます。
MLP
「MLP」はMLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)から受け取った分配金(配当金)のことです。表の見方はDIVIDENDと同じです。
MLPは利益のほとんどを投資家(ユニットホールダー、Unitholders)に分配する傾向にあるため、一般的に分配金利回りが高くなる傾向にあります。
というのはMLPは利益に対する法人税を支払う必要がなく、代わりにユニットホールダーが利益に対する税金の肩代わりをするためです(これにより従来の「法人税+配当課税」の形での二重課税が回避できるのです)。
よって私たちがMLP銘柄を購入したときには、普通の配当と違って受け取った分配金に対して40%程度もの税金を徴収されます。つまり分配金利回りが5%でも、実際に受け取れる利回りは3%程度となるわけです。投資をする際にはくれぐれもご注意ください。
なお本項目は最初に説明した「Income And Expense Summary」のMLP distributionに計上されます。
CASH-LIEU
「CASH-LIEU」とは株式配当などを受け取った際の配当の端数部分です。「CASH-LIEU」に書かれた金額は皆さんの口座に追加されます。
企業によっては株式配当を行っている企業があります。株式配当という形で配当を受け取るときは、DRIPによる配当再投資とは違って1つずつ受け取る必要があります。DRIP時のように「9.112個の銘柄購入」といった小数点を含んだ数の購入は出来ないわけです。
この場合に株式配当を受け取ろうとすると「9つの株式配当」+「0.112個分の配当金」を受け取ることになります。この「0.112個分の配当金」が「CASH-LIEU」に該当するのです。
ちなみに株式配当を行っている銘柄を保有している場合は、Firstradeから「配当を現金 or 株式のどちらで受取りますか?」というメールが届くかもしれません。(私はFirstradeではなくSogoTradeで保有している銘柄に対して、こうしたメールが届いたことがあります)
DRIPを行っている長期投資家の方であれば、必ず「株式配当をお願いします」と返信しましょう。返信しないと現金で配当金を受け取ることになり、しかもこの場合配当再投資されなく可能性があるのでご注意ください。
また株式配当だと一般的に配当課税されないので、配当金がすぐさま必要ない場合は株式配当を受け取る方がお得かと思います。
NRA
「NRA」とは米国非居住者に対する特殊な収入が入った時に記載されます。私の場合はREIT関連銘柄に対してたまに記載されています。
NRAとは非居住外国人のことで「Non-Residential Alien」の略です。
我々日本在住のNRAは、口座開設時に「W-8BEN」というのを提出しました。W-8BENを提出することで、日米間の租税条約の内容が適用されて、米国で徴収される配当課税などの税率を減らせるといった恩恵を受けることができるわけです。
しかしインカム収入の中にはこうした税優遇が受けられない場合もあり、そうした税優遇を受けられないインカム収入があった場合に「NRA」に記載されるようです。明細を見るとわかるのですが、私の場合は受取金額の30%以上を源泉徴収されていました。
税金を除いて残った額は皆さんの口座に追加されています。
米国証券口座を開いて米国株投資をスタートしたい方は、次の記事をご覧ください。
→米国証券口座を開いて米国株式投資を始める
最終更新日:2023年03月05日
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