今後も日本にいながら未来永劫自由に海外投資を行え続けられるのだろうか...?
【最終更新日:2016年5月17日】
海外投資を行いたくても、国の状況によっては自由に海外投資を行えなく可能性は決して無視することはできません。
それでは日本はどうでしょうか。日本の現状、海外メディアのニュースの伝え方、過去の歴史的事実を踏まえると、どうやら明日は我が身であることを自覚しなくてはいけないように思えます。
日本人が一時的に自由に海外投資しにくくなる日はそう遠くないかもしれない
ショッキングかもしれませんが、現時点のように自由に米国証券口座を開いて資金を送金して海外投資を行うことは、今後一時的に自由に行えなくなるかもしれません。
既に米国証券口座を開いて投資を行っている人であれば、既に送金した分に関しては投資も出来るだろうし、アメリカから日本への資金移動も少なくとも生活資金を引き出す程度であれば大丈夫でしょう。
しかしまだ米国証券口座を開設していない、または開設しても投資資金の両替や送金を行っていない方は、現在がもしかしたらラストチャンスかもしれないのです。
何故こんなショッキングなことを申しているのかというと、日本から海外への資金移動の制限や円の価値の目減りによって投資資金を十分に確保できない環境が刻一刻と近づいているように思えるからです。
要は日本の危機の顕在化が現実的になりつつあるということです。
皆さんご存知のように日本の債務残高は1,000兆円を突破しており、対GDP比で230%と、第二次世界大戦末期の1944年に記録した、対GNP比204%の水準も超えてきました。
また国債の歴史的な低金利によって長期的には金利が上昇するしかないような状況になっていますが、金利が1%上昇しただけで税収を20%増やさないと財政を賄えない状況です。一向に改善が見込めない経済のデフレ環境や今後の人口減少社会を考えると、まさに崖っぷちです。
かねてから日本財政の危機的状況が言われ続けてきましたが、それでもなお危機が本格化せずに済んできたので、人によっては不安な状況は未来永劫続くだろうけど、危機が本格化することはないと信じているかもしれません。
しかし風向きはどんどん悪い方向に傾いています。2016年4月11日以降の海外メディアからのニュースで、今までにない直接的な表現で日本の今後の危機に対する警告が大々的に報じられるようになってきました。
→ヘリコプターマネーの誘惑、日本国民に大惨事招くとJPモルガン警告(米:ブルームバーグ)
→Olivier Blanchard eyes ugly 'end game' for Japan on debt spiral(英:Telegraph)
特に2番目の記事は2015年10月までIMFのチーフエコノミストだった世界的権威のある方の発言なので、世界に与える影響力は到底無視できるものではないと思われます。
どちらも言っていることは似たようなことで「今後近いうちに歯止めの効かない赤字国債の発行へと突き進み、5-10年以内に大惨事を迎える可能性が十分ある」ということです。
大惨事とは何でしょうか?私たち国民目線で考えれば、それは「事実上の資産没収」です。
超円安、高インフレ、デフォルト、預金封鎖、資産税、何が起こるかはわかりませんが、結局行きつく先は同じです。事実上資産の一部が没収され、国の借金返済の糧に使われるのです。この未来は歴史が教えてくれます(どの程度のダメージ規模になるのかはわかりませんが)。
本当に5-10年以内に大惨事を迎えるかどうかは意見にすぎませんが、「大惨事」「End game」といった強烈な言葉が見出しとして使われているニュースが、JPモルガンやIMFといった世界的権威のある機関に関わりのある人物へのインタビューの形で、遂に米英の大手メディアから報じられ始めた事実は重く受け止めなくてはならないのではないでしょうか。
※その後の財政・経済・金融に関する個人的に気になったニュースについてはこちらのページでリンクをまとめています。
現在の日本の金融政策は戦時中と似ている
現在まで日本では日銀が大量の国債を買い進める金融緩和が行われてきました。政府が発行する国債を日銀が市場から買い取ることで、政府・日銀の信用を維持しながらお金をどんどん市中に流す策ですね。
実はかつて大量に発行された赤字国債を日銀が政府から直接引き受ける政策が行われた歴史があるのです。今後の日本の行く末を考える大きな材料の一つとして、過去の歴史とそれが辿った経緯を簡単に振り返ることは意義のあることでしょう。
時は1931年、世界恐慌の波が日本にも押し寄せてきたときに、日本経済を再浮揚させることが喫緊の課題でした。そこで当時大蔵大臣に就任した高橋是清が輸出の拡大、生産と消費の均衡改善によって日本経済を復活させるために、1932年に日本で初めて赤字国債の日銀引受が行われました。
この金融政策による融資の低金利化と、既にいち早く実行していた金本位制の停止による円安によって、日本の消費額や輸出額が拡大し経済は回復していきます。
※ちなみにこのときすでに対外資本規制が敷かれ、戦後まで資金を海外に移動させることは厳しい状況でした。
しかし経済へのお金の供給量ほど軍部にはお金が回されなかったため、軍部は決して是清の政策を良しとは思っていなかったように推察されます。さらに早々と金融緩和の出口戦略を取り始めたこともあり、1936年にあの有名な二・二六事件により高橋是清は命を落とします。
その後大蔵大臣に就任した馬場鍈一は金融緩和の出口戦略遂行への流れを断ち切り、一転して軍事費のための赤字国債発行を容認、日銀が引き受けることになります。その後は日中戦争や太平洋戦争の激化に伴い、戦費調達のための赤字国債乱発に歯止めが効かなくなり、1944年には対GNP比204%にまで政府の赤字幅は拡大していきます。
敗戦後、紙幣大量発行のツケはもちろんのこと、物資不足、いままで統制されて自由に回すことが出来なかったお金が市中で回り始めたこともあり、遂に日本にハイパーインフレの嵐が巻き起こったのです。
戦時国債のほとんどは日銀、民間銀行、大蔵省預金部といった日本の金融機関に保有されてきましたが、それでもハイパーインフレは起こりました(つまり国債の海外保有比率が低くてもハイパーインフレが起こらないとは言えないということ)。
1946年2月16日にインフレ鎮静化を目的とした、あの忌まわしき預金封鎖→新円切替によって、ほとんどすべての国民は全資産を没収されてしまうのです(インフレの沈静化には至らず、沈静化にはさらに数年を要しました)。
※余談ですがマイナス金利が導入された日は2016年2月16日(中途半端な火曜日)、奇しくも預金封鎖が行われた日のちょうど70年後なのです。
1947年、国の財政に関する基本法である財政法が施行されます。財政法第五条では、(特別な事由がない限り)赤字国債を日銀が引受けてはならないと述べられています。
つまり赤字国債の日銀引受は当時の日本崩壊の元凶の一つであり、歴史的にも法的にも「禁じ手」だということが認められたのです。
以上が当時の日銀による国債引受とそれにまつわる歴史の概観です。
現在までの金融緩和は日銀が国債を政府から直接購入する引受形式では行われていないので、国債購入プロセスは厳密には戦前・戦中とは異なります。また軍事目的ではなく、経済浮揚を名目とした国債の買入が行われているといった違いは確かにあります。
しかし現在の金融緩和はまったく出口戦略を考えていないとしか映らないですし、際限なく国債が買い進められています(FRBやECBをも凌駕する規模で)。
経済浮揚を名目としていることから現在の金融政策は高橋是清の政策を財政法に抵触しないような形で進めているように見えますが、実態は是清暗殺後の戦時中の無茶な金融政策に似ているように見えますがどうでしょうか?
一度皆さんも真剣に日本の未来を考えるために、現在の財政・金融政策と比較しながら戦時中の財政・金融に関する歴史を眺めてみるのは非常に意義深いことだと考えています。一度ご自身で学ばれてはいかがでしょうか。以下は私が参考にした本です。
→国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来
→日本経済史〈3〉両大戦間期
→日本経済史〈4〉戦時・戦後期
【追記:マイナス金利について】
マイナス金利政策(Negative Interest Rate Policy, NIRP)についてちょっただけ書きます。
まずマイナス金利政策はかつて歴史的に行われたことは一度もありません。日銀、ECBなどが実行中のマイナス金利政策は文字通り歴史的な政策で、後世に永遠に語り継がれる政策だと思って下さい。
マイナス金利の影響ですが、これは家計にも経済にも現在の金融システム全体にもかなりの悪影響を与えるでしょう。マイナス金利とは人為的に実質金利をマイナスにして貸し手にペナルティを与える政策ですから、預貯金として貸し出している私たちや企業や金融機関への貸出を行う銀行がペナルティを被ることになります。
こうなると短期的にはデフレ真っ逆さまです。私たちは預貯金から"見えない"手数料を取られるので支出を減らします。消費税や年金、社会保険料が増えると消費を抑えたくなることと一緒です。
→【参考】マイナス金利政策によりスイス、デンマーク、スウェーデンの貯蓄率が増加
また銀行はビジネスモデルが崩れます。貸しても手数料が取られる、資産運用しようとしても国債はマイナス金利なので国債を買い替えたり追加購入するとやっぱり手数料が取られます。こうして信用が収縮していきます。
日銀は「消費や投資を喚起する」ためにマイナス金利政策を発表しましたが、マイナス金利後も銀行の貸出率よりも預金率の方が上昇率が大きいですし、上のスイス等の事例も見る限り、当初の日銀の目論見とは真逆の成果です。
おそらくマイナス金利政策は今後もお金の巡りを悪くして深刻なデフレを招くでしょう。
事はこれだけでは収まりません。政府・日銀は「デフレ脱却」のために財政・金融政策を行ってきましたが、量的・質的金融緩和、マイナス金利という劇薬を使用したにも関わらずデフレに戻ってしまったと世界中、日本中に知れ渡ったらどうなってしまうでしょうか。
残るのは政府・日銀に対する信用の失墜と巨額の赤字国債です。この2つが組み合わさって化学反応を起こすとどうなるでしょうか?...上で戦中戦後の歴史を読んだ人ならもうお分かりですね。
こう考えると「大惨事」「Endgame」の意味がわかってくるのではないでしょうか。私たちは「短期のデフレ、長期のハイパーインフレーション」という可能性を真剣に考えなくてはいけない瀬戸際に来てしまっているのです。
現段階での海外投資の準備が危機への備えに繋がり得る
現在の状況や過去の歴史について話してきましたが、どうも日本の先行きは暗いと言わざるを得ません。
歴史に鑑みると、いずれは日本も最低でも超円安にはなるような気がしてなりません。さらに酷いときには高インフレ(もしくはハイパーインフレ)、最悪デフォルトや対外資本規制もないとは言えません(対外資本規制についてはグローバリゼーションの進展もあり導入は簡単ではないでしょうが、一応頭に入れておくと良いでしょう)。
いずれにしても何も対策をしないで資産を放置しておくと、将来大きな損害を被る可能性は決して無視できるものではないと考えます。
本記事をご覧になられている方の大多数は米国証券口座を用いた海外投資に興味があるものと思いますが、今のうちに口座を開設して投資資金だけでも送金しておけば、被害をある程度抑えることは出来るのではないでしょうか。
今のうちに口座開設、送金をしておけば、次のようなことを期待することができます:
- 事実上の資産没収の被害額を抑えられる
- 超円安が起これば大きな為替差益を得られる
資産分散によってすべての財産が没収されるリスクは減るでしょうし、もし日本で酷いインフレが進行したら超円安は免れないでしょうから、日本円換算時の資産価値が急上昇することに繋がります。
また先進国である日本が酷い状況に陥れば、その時は世界中の株価も下がっていると思いますから、優良企業の世界株を安値で購入できるチャンスと重なるかもしれません。
絶対的なことは言えませんが、いまのうちに海外投資の準備をしておけばいざというときに多少なりとも対策にはなるとは思いますし、自分なりに対策をしてそれでもダメであっても、座して死を待つよりかは後悔はまだ少ないと思います。
私も米国証券口座を利用した海外投資を始めた当初は危機への備えなど何も考えていませんでしたが、その後現状や歴史を知り日本の未来を考えた過程で、海外投資をしておいて良かったと実感しています。
もし海外投資に興味があれば、いまのうちに開設し、少額で良いので海外送金の練習も兼ねて口座に一部の投資資金を送金されてみてはいかがでしょうか。
海外投資の準備はどうしても1ヶ月以上という物理的な時間が掛かります。状況が悪化してあたふたする前に、大地震に備えるときと同じような発想で、余裕のある今のうちに準備をしておくと随分安心ではないでしょうか。
いますぐ慌てて資金をすべてドルに交換する必要は(おそらく)ないです。超円安になるような状況はもし起こったとしても中長期的に起こるでしょうし、短中期的には円高に進む可能性も十分あります。両替や送金は皆さんのタイミングで計画的に行ってもらえれば良いと思います。
※米ドルに外貨投資せよと言っているわけではないのでご注意ください。送金した米ドルは皆さんの運用計画に基づいて株式等別の資産に投資してくださいね。
いまのうちに準備の方法を体で学んでほしいのです。口座を開設し海外送金を一度でも経験しておけば、その後の送金はスムーズにできます。いざとなったときに慌てないための最低限の準備とスキルを今のうちに身につけること、これが一番大切です。
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繁栄の先に衰退が待つことは世の習わしです。かつてのローマ帝国、イタリアの都市国家、スペインの無敵艦隊、オランダ、フランス帝国、大英帝国、一度は世界の覇権を握った国家はみな衰退してきました。
日本も戦後70年以上、アジア先進国の代表としての地位を確立してきましたが、70年という長い年月の果てに衰退や逆境が待ち受けることは歴史の興亡のサイクルを見ても、決して不思議なことではありません。
海外投資の話を抜きにしても、一度戦時中の日本の財政・金融政策の歴史を、2013年以降の日本の財政・金融政策と比較しながら眺めてみる意義は非常に大きいと思います。
危機にどう備えて乗り越えていくか?こうしたことを考え、実行していかなくてはならない時期に突入してしまったのです。
米国証券口座を開いて米国株投資をスタートしたい方は、次の記事をご覧ください。
→米国証券口座を開いて米国株式投資を始める
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