日銀は絶賛テーパリング実行中のようです

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日銀は絶賛テーパリング実行中のようです

2017/03/15

 

 ここ最近の日銀の金融政策を見ていると、日銀は公言していませんがすでに隠れテーパリングを実行中といわざるを得ません。

 

 

 まずはブルームバーグの記事から。

 

【2017・03/13 ブルームバーグ】日銀の3月購入計画、1年間で18%のテーパリングを示唆-市場の見方

日本銀行が今月から適用した長期国債買い入れ運営方針を1年間継続すると、年間の購入目標を18%下回ることを意味する。このため、密かなテーパリング開始ではないかとの観測が投資家の間に浮上した。
2月28日公表の3月購入額をその後の11カ月も継続した場合、1年間での購入規模は純額66兆円となり、年間80兆円の保有拡大目標を18%下回る。

 

 個人的にも数字を計算してみました。2017年1-2月の購入額は実際に購入されば分の額面金額を利用し、3月-12月までの10ヶ月間は公表された当面の月間買入予定額を利用しています。

 

 2017年末までに満期を迎える日銀の保有銘柄総額は額面ベースで39兆3000億円程度なので、この分を除くと2017年の一年間に増えるベースマネーは大体45兆円~80兆円程度で、真ん中を取ると大体64兆円程度でした。

 

 広い幅を持たせているので実際には年間80兆円ペースの買入れ額が確実に減るとは言い切れないものの、同じく量的緩和継続中でマイナス金利政策も導入しているECBは4月から月間買入れ額を800億ユーロから600億ユーロに減らしテーパリングを実行することから、日銀も歩調を合わせることが予想されます。

 

 つまり国債購入に関する日銀のテーパリングは既定路線といえそうです。

 

 短期国債についてはすでに日銀はテーパリングどころか出口戦略を実行中です。

 

【2017/03/03 日本経済新聞】短期国債保有、外国人が5割 2月末

 短期国債市場の主役が日銀から外国人に交代した。2月末時点で外国人の保有比率は5割を超えたもようだ。日銀のマイナス金利政策を背景に短期国債の利回りも大幅に低下しており、円資金を割安に調達できる外国人しか買い手がいない。長引く異次元緩和のひずみが表れた格好だ。

 

 日銀が2日発表した統計によると、日銀の短期国債の保有額は2月末時点で約44兆円と昨年9月末から約12兆円減った。昨年9月末時点では短期国債の発行残高約120兆円のうち、日銀と外国人の保有割合が47%程度で拮抗していたが、2月末時点で日銀の割合は10%近く低下した。

 

 上のニュースと下図を見れば、短期国債市場のプレーヤーは外国人投資家だけであることがわかります。

 

日本の国債市場のプレーヤー

画像ソース:財務省

 

 外国人投資家は日本円需要の少なさを利用して「米ドル→日本円→短期国債」というルートによるトレード(ドルキャリートレード)で稼いでいるだけであり、日本円需要が高まり円を借りるコストが高まれば外国人投資家は短期国債市場から撤退するでしょう。そのとき短期金利が急騰する可能性があります。

 

 短期金利急騰のサインを示す指標は日本円のクロスカレンシーベーシススワップスプレッドというやつです。こいつのマイナス幅が縮小していったとき、日本の短期国債市場が非常に危険な状況に陥るリスクがあります。

 

日本円のスワップスプレッド

画像ソース:BIS

 

 もう一つ日銀のETF買いについてみてみると、日銀のETF買い入れペースも2016年12月は7700億円の買い越しでしたが、2017年に入って少しずつペースが落ちてきています(J-REITは除く)。

 

投資部門別ETF売買状況

ソース:日銀日本取引所グループ

 

 問題は日銀がETFの買入れをハイペースで続けていってくれないと、日本の株式市場が停滞して需給バランスが緩み、株価が下落するリスクがあることです。下図は投資家の株式購入額と日銀のETF購入額を表した図ですが、株式市場に活気がもはやないですよね。

 

 下の推移を見ると、何だか日銀のETF買い入れは株式市場の買い越し額をなんとかプラス圏に維持するために、そして株価を維持するために行われているようにも見えますがどうなのでしょうね。また2016年9月や12月を見ると投資家たちの売り越し額が大きいと日銀の買い入れにも限界があることがわかりますので、大きな売りが続くと株式市場は終焉を迎えそうですね。

 

 いずれにせよこうした状況はもちろんいつまでも続くはずはなく、いずれは終わりを迎えます。そうなると当然、我々の年金積立金の運用も大損を喰らうでしょうな...

 

投資部門別株式売買状況

ソース:日銀、日本取引所グループ

 

 そんなわけで、日本の金融緩和政策はすでに終わりを迎えており、テーパリングや一部出口戦略の実行に移っていることがわかります。今後は各人の発言内容にあまりとらわれることなく、金融引き締めがいつどのような形で加速していくのかという目線で見ていくのが良さそうです。

 

 そうそう、金利に関する金融引き締めといえば真っ先に利上げを思い浮かべると思いますが、いままでのマイナス金利政策という実験により、マイナス金利が金融引き締め効果を持つことがわかっています。「金融引き締め=利上げ」という常識は過去のもので、実はマイナス金利の深堀という形での利下げも金融引き締めにつながるのです。

 

 マイナス金利の深堀という形で金融引き締め政策が取られていく可能性も頭の片隅に入れておくと良いかもしれませんね。

 

※マイナス金利政策が続いたときの影響に関する個人的な見解を以下の記事で書いています。ご興味があればぜひご覧下さい。
→マイナス金利政策が私たちに与える深刻な影響とは...
→マイナス金利政策がゴールドに与える影響

 

**********

 

 最近は森友学園問題で日本は揺れていますが、本日15日はFRBの利上げが確実視されていますし、EU離脱で揺れる欧州ではいよいよ本日オランダの総選挙投票日です。日本の金融面でもそろそろ大きな動きが出てくるかもしれませんよ。

 

 大きな地殻変動が間近に迫っているように見えますが、皆さんは将来への対策はお済みですか?

 

 【追記:2017/03/24】
 森友学園籠池理事長の証人喚問に世間の注目が集中していた23日、日銀はシレっと3月中の短期国債の買入れを取りやめ、さらには保有国債の売却をすると発表しました。一時的措置とはいえ、金融引き締め策を実行することに変わりありません。

 

 日本の金融状況も慌しくなってきました。

 

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