税制改正大綱をざっとみた感想:使いやすい労働者がいれば十分
2017/12/15
【2017/12/14 日本経済新聞】個人軸に2800億円増税 法人税は増減ゼロ 27年ぶり新税創設 与党税制改正大綱
自民、公明両党は14日、2018年度の与党税制改正大綱を決定した。年収850万円超の会社員への所得増税やたばこ増税で、約2800億円の増税となる。森林保護や観光インフラ整備の財源とする27年ぶりの新たな国税も創設。個人の増税が際立つ一方、法人税は賃上げや設備投資を進める企業に減税するメニューが並び、増減はほぼゼロだった。
2018年度の与党税制改正大綱は大まかに次のようなものだそうです。
- 平年度ベースで2800億円規模の増税
- 国税1600億円、地方税1200億円
[増税]
- たばこ税→2400億円
- 所得税改革→900億円
- 国際観光旅客税→400億円
- 合計→3700億円
[減税]
- 事業承継税制→700億円
- 固定資産税→100億円
- 消費税の見直しなど→100億円
- 合計→900億円
ネット合計→2800億円増税
個人への増税が目立ちますね。
税制改正大綱のポイントをみると、次のようなことが書かれています。
- 高収入の会社員などは増税、フリーランスなどは減税(2020年1月~)
- 賃上げ等を行った企業は法人税の実質負担を最大20%程度まで引き下げ(2018年4月から3年間)
賃上げ等による法人税減税措置はたった3年間しか実施されない予定のようです。一方、高収入の会社員への増税やフリーランス減税は続けられるだけ続けたいようです。
これまで先進国で最も高い法人税率だった米国は、このまま税制改革が通れば実効法人税率が2018年から地方税を含めても28%程度となるようです。日本の実効法人税率は18年度から29.74%になる予定であり、早くも来年から米国と日本の実効法人税率が逆転しそうなのです。
経済産業省が今年8月に出した税制改正に関する要望をみると、そのトップに第4次産業革命に対応した経営・投資の強化を求めています。
日本企業による海外子会社の買収をしやすい環境づくりの整備、およびIoT、ビッグデータ、AI技術等のデータ連携・高度利活用を行い、新たな付加価値の創出や生産性の向上等を求めています。昨今のICT技術活用による生産性の向上は雇用のカットとリンクしていることは、言うまでもありません。
日本の将来の経済発展のためには、日本企業による海外展開のさらなる促進や、日本企業がAIやロボットを活用した、人間をあまり必要としない(必要なときだけ人間を短期的に雇えればよい)ようなビジネスに転換していくのが重要であるとの考えがにじみ出ています。早急に実現するか否かはともかくとして、お上の方々はそのように考えているようです。
法人税減税に消極的な姿勢、そして高収入の会社員への所得増税、フリーランスへの所得減税というムチとアメは、こうした道筋の実現を多少なりとも後押しするものです。少なくとも反するものではありません。
使いやすい(ただし有能な)労働者がいれば十分。税制改正大綱をみて、そんな大企業や政府の本音を改めて感じた次第です。
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