失業給付金の積立金が今後大きく減少するリスクあり


ネットでらくらく日本語対応「海外⇔日本」双方向送金。
私も使ってみました。ユニオンバンクの口座保有者は必須かも!?→



メルマガ最新号
  • [アボマガ No.40 41]米国証券口座での投資と確定申告(配信日: 2019/01/15)
  • [金のメルマガ No.10]最終回:備えあれば憂いなし(配信日: 2018/12/07)

→登録はこちらから

失業給付金の積立金が今後大きく減少するリスクあり

2017/01/10

 

 今回は日本の失業給付に関わる雇用保険の財政事情について、どうも気になった点が見つかったのでざっと調べてまとめてみたという記事です。

 

スポンサーリンク

 

 平成29年度政府予算案で社会保障費の自然増を5,000億円以内に収めることができたという報道を目にしたので、具体的にどのような内容がカットされたのかを確認するために、実際の予算案を見てみました。

 

 すると目に飛び込んできたのは、雇用労災対策費が前年度予算額から992億円減に転じていたという数字です。実に73%のマイナスです(→ソース)。

 

 ニュースではほとんど触れられていないようですが、平成29年度政府予算案で社会保障費の増加抑制に最も寄与したのは雇用保険の国庫負担額の大幅な減少です。雇用保険国庫負担を平成29年度から平成31年度までの3年間の時限措置として、本則の55%から10%に減少させるとのこと。つまり従来よりも国庫負担が82%程度減少するわけです。

 

 今回の国庫負担引下げによる財政効果額は-1,080億円だそうです。

 

 これはアベノミクスの成果等により、雇用情勢が安定的に推移していること等を踏まえた措置の一環として、雇用保険料率の引き下げと合わせて行われます。保険料率の引き下げも同じ3年間の時限措置が取られる予定で、これによる29年度の保険料収入減は3,500億円にのぼると見込まれています。

 

 つまり今回の措置により、国庫負担と保険料から得られる収入は3年間で総額1兆3,740億円程度減少する計算になります。

 

 平成27年度の積立金は6兆4,260億円ありました。今後は雇用保険の剰余金の赤字となる趨勢は避けられない見込みで、不足分は積立金の取り崩しによって賄われます。

 

 2016年11月の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会の資料に載っている試算(リンク先の資料2)を見ると、平成33年度には積立金残高が4兆9,853億円と、5兆円を割り込む数字が見込まれています。

 

 しかしこの試算には平成29年度から3年間導入される2つの時限措置である、国庫負担の大幅な減額、および保険料率引き下げによる保険料収入減が含まれていません。

 

 これらを加えると、平成33年度までに積立金残高は3.6兆円程度にまで減少しそうです。つまり試算ベースで、平成27年度から6年間で44%程度の積立金が減少しそうなのです。

 

雇用保険の試算に潜むリスク

 怖いのは、上で触れた積立金残高の試算がかなり楽観的なシナリオを仮定していることです。

 

 何が楽観的なのかというと、雇用保険受給者が今後毎年43万人規模でキープすると仮定されているのです。これは受給者が最低水準である平成27年度の44万人と同程度です。

 

 そのため今後雇用情勢が悪化して失業者が増え、雇用保険受給者が増えてしまうと、積立金残高が試算よりも急速に減少する公算が大きいのです。

 

 つまり今後の雇用情勢によっては、上で計算した、時限措置込みで6年間で積立金が44%減少という減少幅では済まないリスクが十分考えられるのです。

 

 先例はあります。バブル崩壊以降、10年以上失業率が上昇傾向をたどった中、雇用保険受給者も大きく増えていきました。これにより平成5年度に4兆7,527億円あった積立金が、平成14年度には過去最低の4,064億円にまで減少してしまい、枯渇寸前にまで陥ったのです。

 

雇用保険積立金残高の推移

 

 ※その後何故積立金が急速に回復したのかを知りたい方は下のリンク先をご覧下さい。
 →【Business Journal】失業手当をもらえない!空前の黒字の雇用保険積立金、給付率カット&非正規労働者排除

 

 現在、完全失業率は低い水準、有効求人倍率もバブル景気以来の高い水準にあり、たしかに雇用情勢は良いです。

 

 しかし以前の記事で書いたように日本の企業は営業利益や設備投資、設備稼働率が減少傾向にあり(こちら)、金融機関も地域金融機関を中心に非常に苦しい経営を強いられています(こちら)。

 

 さらに法人税の不振の影響で、平成28年度の税収は55兆8600億円と当初予算の見積もりから1兆7440億円の下方修正がされています。

 

 こうした状況を踏まえると、どうやら日本はデフレに向かっているように見えます。そうなると当然雇用情勢の悪化、失業率の上昇につながるので、これから試算よりも早いスピードで雇用保険積立金が減少していくことは十分考えられるのです。

 

 もし積立金が急速に減った場合は、例えば次のような措置をとらざるを得ません:

 

  • 保険料率を上げる
  • 国庫負担額を増やす(要は国債の増発)
  • 給付金を下げる
  • 給付金を受けるための規制を厳しくする
  • 雇用保険に加入できない非正規雇用等を増やす

 

 ただ現在の年金カット法案成立や高齢者の定義変更の意見が出たこと、それに雇用保険の積立金が減少趨勢であるとする見積もりが出たことを踏まえると、収入を増やすよりも支出を減らすことが中心となりそうです。下3つですね。

 

 一億総活躍社会と言われていますが、失業給付に関する数字を見ていると、どうやら一億総活躍を維持できないと財布事情的に問題がありそうです。一億総活躍が崩れたときのリスクはどうも考慮されていないようですから。

 

 いずれにせよ、もし今度日本にデフレの波が襲い掛かったとき、失業者たちは従来のデフレとはまた違った状況に置かれそうです。

 

→[PR]The Economistで一週間の世界の経済・金融・ビジネスニュースをじっくりまとめ読み。管理人アボカドまつりも購読5年目突入!

アボカドまつりのメルマガ、金のメルマガ

 あなたが知らない、「危機をチャンスに変えて経済サバイバルする」ための情報をメルマガでお教えします。


 登録は無料です。

メルマガ登録ページへ


当サイトの関連記事


スポンサーリンク
このエントリーをはてなブックマークに追加   

 

関連ページ

日中のお金の取り扱いは滅茶苦茶だ
米国ICT企業10社で日本企業全体の研究開発費を抜きさる
お金と個人情報、預ける意味は全然違う
変動型住宅ローンに飛びつく、思考停止状態の日本人たち
「日本銀行ホールディングス」の海外進出、というシナリオ
日本政府が「社会保障+国債費」を税収だけで支払えなくなる日
率先して悪事・非倫理的行為に手を染め続ける日本企業
[2018/04/19]日本はロシアを差し置いて米国からのガス輸入を急増させた
[2018/03/09]近視眼的にカネをドブに捨てる邦銀・日本企業
[2018/02/16]日銀大規模金融緩和が巡り巡って日本の米国債売却につながった?
[2018/01/09]日銀の総資産減少!量的金融引き締めの足音が聞こえてきた
[2018/01/05]金欠日本政府に水道事業を維持・管理するカネはない?
[2017/12/26]【賃上げ?】経済再生意欲が感じられない来年度予算政府案
[2017/12/15]税制改正大綱をざっとみた感想:使いやすい労働者がいれば十分
[2017/11/14]総裁任期満了を前に、さらなる予防線を張り出した黒田総裁
[2017/10/13]「貯蓄から投資へ」メリットがあるのは誰?
[2017/10/06]電気自動車の台頭×日本の財政・金融の潮流=長期「超円安」
[2017/09/16]安倍・黒田体制の終わりの兆しがチラチラ出てきているぞ
[2017/09/05]金利上昇、不動産価格下落リスクを考えなければいけないのに...
[2017/07/28]宅配業界の不気味な値上げの動き
[2017/07/07]主要3税すべて減収、晩秋列島経済に木枯らし1号が吹き荒れる
[2017/06/14]銭ゲバの日本企業のトップたち
[2017/06/06]日経の不思議な記事
[2017/06/03]「日本円:アウト、MUFGコイン:イン」の動きが胎動している?
[2017/04/25]日本の国家崩壊すら考えざるを得なくなった、スノーデンファイルが公開された
[2017/04/22]マイナス金利政策1年経過後初めての日銀金融システムレポートを読んでみた
[2017/03/15]日銀は絶賛テーパリング実行中のようです
[2017/02/07]日米首脳会談後の日本の財政・金融政策に生じる変化を見極めるのが大切そう
[2017/01/28]米国のTPP離脱による日本の迷走...試算が示す悲観的な未来はまだまだ楽観的。本当の底はもっと深いだろう
[2017/01/16]日本企業が相変わらず預金を貯めこんでいる...ただそれだけの話
[2017/01/10]失業給付金の積立金が今後大きく減少するリスクあり
[2016/12/26]日本株を支える日銀。私たちが直面するモラルと年金のあいだのジレンマ
[2016/12/07]金利上昇。政府・日銀のぬか喜び、民間企業の憂鬱
[2016/12/05]社会保障の国民負担増加への流れ...シャウプ勧告を葬ったツケがまわってきた
[2016/11/07]リーマン・ショック時よりも悪化している日本国民の貧困化
[2016/10/27]日銀の金融政策は地域金融機関をますます弱体化させた
[2016/09/22]日銀による総括的検証後の政策は国債市場を最終局面へと導く
[2016/09/17]社債発行ラッシュの裏に潜む日本企業の現状

▲記事本文の終わりへ戻る▲


▲このページの先頭へ戻る▲