日本の国家崩壊すら考えざるを得なくなった、スノーデンファイルが公開された
2017/04/25
【2017/04/24 NHK】スノーデン文書の中に日本情報 ネットメディアが公開
4年前、アメリカのCIA=中央情報局のスノーデン元職員が持ち出した機密文書の中に安全保障の分野を中心に日本に関わる情報があることが明らかになりました。文書を保管・管理するアメリカのネットメディアが24日夜、公開を始め、国内でも検証を求める動きが出てくる可能性もあります。
持ち出した機密文書の中に安全保障の分野を中心に日本に関わる情報があることが明らかになり、アメリカのネットメディア「インターセプト」が日本時間の24日夕方6時ごろから保管・管理する13のファイルについてネット上で公開を始めました。
公開されたファイルのうち2004年の文書では、東京にある在日アメリカ軍の横田基地で通信機器の製造施設を作る際、ほとんど日本側が支払ったという記述があります。
さらに、製造された機器がアメリカの世界での諜報活動に使われ、「特筆すべきはアフガニスタンでのアルカイダ攻撃を支えたアンテナだ」と記載されています。
また、世界をしんかんさせた1983年にサハリン沖で大韓航空機が撃墜された事件についても記載がありました。それによりますとアメリカが旧ソ連の責任を追及するため、自衛隊が傍受したソビエト機の交信記録の音声データを渡すよう求めていたほか、その後、音声データが国連に持ち込まれたいきさつが書かれています。
さらに2013年の文書では、NSAが「XKEYSCORE」というネット上の電子メールや通話記録などを収集・検索できるとされる監視システムを日本側に提供したとする記述もあります。
防衛省は「問い合わせのあった未公開文書がどのような性格の文書であるか承知していないため、防衛省としてコメントすることは差し控えます」としています。いずれも内容の詳細はわかっていませんが、今後、国内でも検証を求める動きが出てくる可能性もあります。
※インターセプトの情報はこちらから見られます。英語が読める人は、文章は長いですがぜひ読まれることをおすすめします。戦後の日本の本当の姿とは何なのか、その一端を確認できます。
【2017/04/24 The Intercept】JAPAN MADE SECRET DEALS WITH THE NSA THAT EXPANDED GLOBAL SURVEILLANCE
・・・とんでもない情報が出てしまったな、というのが率直な感想です。
ここではその中身について、上のNHKの報道が触れていない箇所を中心に簡単に書いていきます。
2013年に、米国情報機関NSAの元職員であったエドワード・スノーデン氏が、NSAの内部文書を持ち出し、NSAや、米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの諜報機関による世界的監視活動の実態を世界中にリークし、世界を震撼させたことは周知の事実。
このときにスノーデン氏が持ち出したNSAの機密文書によると、日本とNSAは少なくとも1950年代から60年以上にわたって関係を続けてきました。NSA側がSIGINTと呼んでいた、日本のある諜報機関と緊密な関係を維持していたそうです(SIGINTが具体的にどの日本の機関を指すのは不明)。
NSAは六本木にある米軍基地、赤坂プレスセンターで長年活動を行い、その後少なくとも2007年までに活動拠点を米大使館近くに移して、日本での活動を行っていました。
しかしNSAは東京港区だけではなく、三沢基地、横田基地、キャンプ・ハンセンで活動を行い、世界的な諜報活動を行っていたようです。
その活動内容は驚くようなものばかりです。
諜報活動は世界的な規模で行われており、東アジア・太平洋地域のあらゆる通信を傍受したり、世界中で利用される監視活動用の機器の保守・製造を行っていたり、中東や北アフリカのインターネットにアクセスする人物の位置を特定してテロリストを特定するといった活動も行われていたようです。
こうした日本での活動に関わる費用は日本の税金からも支払われており、キャンプ・ハンセンの諜報施設建設費用5億ドルはすべて日本の税金で支払われたとか。また横田基地での監視用機器の保守・製造業務に携わっていた職員の給与もすべて日本の税金から支払われていました。
米国は2001年の同時多発テロ以降、中東などで国際法に違反する軍事活動を行ってきたり、数年前からは東アジア・太平洋地域にある南シナ海でも、中国を牽制するための軍事活動を行ってきました。
つまりこうした近年の米国による国際的な不当な軍事活動を裏から支える、諜報活動という最もコアな活動が、日本にある米軍施設から行われた可能性が極めて高いのです。場合によっては、こうした米国による対外戦争を支える核心的な活動において、日本が相当な地位にある可能性すらゼロではないのです。
米国の軍事活動の「アキレス腱」となる場所がリークにより特定されてしまったのですから、米国による覇権が著しく損なわれることは必至です。
4月24日に放送されたNHKのクローズ現代+で、今回の日本でのNSAの諜報活動に関する特集が放映されましたが、番組の内容は日本がNSAに利用されたという、あたかも日本が米国の被害者であるかのような側面ばかり映し出されていました。
果たしてそれが今回の歴史的なリークのすべてなのでしょうか?
ここで少し話題を変えます。
The Economist誌の最新号(紙版:4月22日号)では、日本政府が今国会で法制化させようとしている共謀罪に関する、なかなか強烈な内容の記事が載っていました。
【2017/04/20 The Economist】A new bill reveals the Japanese government’s authoritarian streak
英語が読める人はぜひ一読してほしいのですが、次のようなことが書かれています:
- 日本政府は国家をテロリズムから守るために共謀罪(The Conspiracy Bill)の正当性を述べているが、犯罪件数が記録的に低下しており、地下鉄サリン事件以来20年以上も大規模テロ攻撃が起こっていない国で、共謀罪成立の正当性は弱弱しいものだとの意見を提起
- 野党議員からの、日本政府は憲法上の個人の権利を守ることよりも、国家に自由裁量を与えることにはるかに熱心であるという意見を紹介
- 自民党が日本国憲法の条文で定める戦争放棄、天皇の地位、基本的人権の尊重に関する断固とした宣言のいずれも嫌っており、リベラルな憲法を廃止したいと考えていることを明確に紹介
- 自民党の憲法草案が日本の民主主義の破棄につながる内容であることを紹介
- 2016年に国連の特別報告者が、放送法を楯にメディアを脅そうとした安倍政権への批判を行ったことを紹介
- 2013年に成立した特定秘密保護法に関する紹介
The Economist誌の記事がフェイクニュースか否かの判断は皆さんに任せますが、少なくともこうした日本に関する報道が海外メディアでなされていることは紛れもない事実なのです。
下はこのThe Economist誌の記事のトップ写真です。
画像ソース:The Economist
The Economistという権威のある海外メディアは、日本の共謀罪成立の先に待っているのは上の写真が暗示する社会であると考えているのです。
スノーデンファイルに話を戻すと、さらに重要なことが書かれています。
NSAは少なくとも2013年4月以前に、日本にXKEYSCOREという大量監視プログラムのインストーラを渡したようです。NSAいわく、XKEYSCOREは典型的なユーザーがインターネット上で行うほとんどすべてを監視できるという、非常に強力な監視プログラムとのことです。
またNSAは、日本の諜報職員に対してスパイの訓練までしてあげてたみたいです。
さらにNSAは2013年の文書で、日本の2つの組織と"堅固な"パートナーシップ関係を維持していることについて述べているそうです(維持ということは、2013年以前から付き合いがあったことを伺わせる)。2つの組織とは、前掲の日本の謎の諜報機関SIGINTと、警視庁です。
整理しましょう。
- NSAは大量監視プログラムを日本に渡した?
- NSAは警視庁と堅固な関係にある?
- 日本政府は共謀罪を成立させようとしている?
こうしたいくつかの点を線で結んだとき、今回のスノーデンファイルのリークを、日本がNSAに利用されてきたという被害者としての側面だけで捉えるのは果たして妥当なのでしょうか?
先例があります。
日本の歴史の教科書で私たちは、太平洋戦争による日本人の何百万もの犠牲者が、米軍による大空襲や原爆投下によって引き起こされたものだと教えられており、米国の被害者としての日本という側面が強調されてきました。
しかし日本の歴史をちょっとでもかじったことがある人はご存知でしょうが、太平洋戦争で日本国民の大量の犠牲者を生んだ大きな背景に、日本の為政者(特に陸軍)の暴走があったことは無視することはできません。
勝ち目が完全になくなってからも、日本の為政者は日本の敗戦を「米国が強すぎたから」という理由にして少しでも日本国民からの戦争責任を減らすために、大量の日本国民が米軍によって殺されるのをむしろ望んでいたような心境であったことすら、過去の様々な文書からほのめかされます。
太平洋戦争においては「米国の被害者としての日本」だけでなく「日本国民への加害者としての日本為政者」という面は決して否定できないのです。
こうした先例も頭に入れれば、今回のスノーデンファイルの問題は、「米国の被害者としての日本」という側面だけでは捉えることのできない、深刻な闇が含まれていると考えたほうが現実的です。
それにしても、朝鮮半島情勢が緊迫しており、北朝鮮が再び核実験を行うといわれている最中に、こうしたスノーデンファイルがリークされたというのは、我々日本人にとっては非常に深刻です。
今回、米国による軍事活動の核心部分である諜報活動の一端が丸裸にされてしまったわけですが、NSAは日本で東アジア地域の情報も傍受していたわけですから、当然、北朝鮮の軍事活動に関する情報も傍受していた可能性が高いです。
北朝鮮や中国、ロシア等の立場にたてば、横田、三沢、キャンプ・ハンセンというのは彼らにとって、安全保障上の脅威以外の何者でもないのです(というか、日本が世界中の情報傍受の拠点である以上、日米を除くすべての国にとって安全保障上の最大の脅威の一つ)。
いま、トランプは北朝鮮をかつてないほどの規模で軍事的に挑発しています。一方、金正恩も全く怯む様子はなく、むしろ発言をエスカレートさせています。
彼は20代で北朝鮮の最高指導者の地位について、現在まだ33歳。年齢的に必ずしも国際平衡感覚に優れているとは思えず、場合によっては暴発する可能性もなきにしもあらずなのです。
何が言いたいのかというと、今後北朝鮮による核弾頭ミサイルが在日米軍基地めがけて放たれる可能性が、今回のスノーデンファイルのリークによって高まったと思えるのです。
私はトランプは北朝鮮問題を利用して米軍を海外から引き上げる口実をつくりたいのではないかと見ていますが、もしこの見方が正しいとするならば、北朝鮮による在日米軍基地のミサイル攻撃はトランプの目的に沿うものです。
何故なら米国の軍事活動に大きなダメージを与え米軍を引き上げさせる格好の口実となりますし、米国本土は被害を受けないで済むのですから。残りは中国やロシアに任せてトンズラすればいいのです。
朝鮮人民軍創建記念日の前日にこうした「米軍の撤退をしやすくする」リークが出てきたことは、トランプが北朝鮮に対して何かリスキーなミッションを取る前触れである可能性もあります。
万が一ミッションが失敗して北朝鮮が報復措置として在日米軍基地へミサイルを発射させても、最低限のトランプの目的は果たせそうですし、米軍が撤退できる環境を作り出すことで全面戦争による泥沼化を回避しやすくなります。
とはいえ、日本にとって非常に切迫した状況であることには変わりありません。
仮に幸いにも北朝鮮の核ミサイルが日本に飛んでこなくても、米国の諜報活動に関する致命的なリークが出てしまった以上、日本が何かしらの代償を背負わされるのは不可避なように思えます。だって、強大な国が複数の国を植民地支配したり衛星国として取り込んで、その後支配国が撤退したときに、一番大きな被害を受けるのは植民地であり、衛星国ですから。
さらに今回の場合、在日米軍基地で少なくとも東アジア・太平洋地域の通信を傍受していたことから、この地域の安全保障の根幹に関わる情報を日本が握っている可能性があります。場合によっては世界中の各国安全保障に関わる膨大な情報が日本に存在するかもしれません。
つまり、世界各国の国家の命運の一部を日本が不当に握っている可能性があるのです。
今後の展開次第では、世界中の国々はNSAが日本で傍受した情報が日本でどの程度蓄積されているのか、それを日本は一体どのように管理・運用してきたのか等、日本が関与する傍受に関するすべての情報を公開するよう要求してくるかもしれません。この問題は世界各国の存亡にさえつながってくる話ですので、日本側が隠し通すことはできないでしょう。
もし特定秘密といった理由で隠し通そうとしたり、情報を捏造、ましてや破棄でもしたら、世界は絶対に日本を許さないでしょう。そんなことをしたら、日本はたちまち世界から歴史上最大級の敵国だとみなされ、日本は文字通り破滅するかもしれません。
それくらい、今回のスノーデンファイルのリークは日本にとって重い未来を突きつけるものだと考えます。
政権崩壊とか、そんな生ぬるい話ではありません。日本の国家体制が崩れ落ちる、そんな未来が「そう遠くないうちに」やってくることを現実的な将来のシナリオの一つとして考えなければならなくなったのです。
改めて言います。
戦後の時代は、すでに終焉しているのです。
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