正しさを追い求めることの罠-正しさとFragile-
私たちは正しい、間違っているということにとても敏感です。 しかし正しい、間違っているで物事を判断することは自らをFragileにしてしまい兼ねません。
正しい、間違っているという浅い感情で物事を考えるのではなく、もっと多角的に見て冷静に判断できるようになることがAntifragileになるためには絶対に必要です。
今回は何故正しい、間違っているで物事を判断することによってFragileになってしまうのかについて話していきます。
何故正しいことを追い求めるとFragileになるのか
何故正しいことに固執してしまうとFragileになるのでしょうか。
理由は一瞬のうちにちゃぶ台を返す出来事が起こることが世の摂理だからです。
私たちは正しい、正しくないというのを感情的に判断します。 多くの人が賛同する行為、常識、最近の環境に適した行為、こういったものを感情的に正しいと判断するのです。
具体的に言えば次のような行為が正しいことに該当します:
- 節約して貯金することが一番安全な資産運用だ(多くの人が賛同する行為)
- サラリーマンとして安定した給料を得る(常識)
- 景気が良い時期に投資を行う(最近の環境に適した行為)
私たちは上のような考えや行動を取りがちです。 後で話しますが、正しい、正しくないの判断は心理的な要因です。 今まで生きてきた中で、各行為に対して無意識のうちに正しい、正しくないとジャッジしているのです。
確かにこうした行為はタイムスケールで見れば99%以上正しいのかもしれません。 しかし残りの1%以下の確率で正しくなくなるものです。
そして一度正しくないことが起こると、それが致命的なダメージを与えてしまい兼ねないのです。
例えば急な消費税増税やインフレ、株価の暴落などが起こると、いままで私たちが正しいと思っていた行為は一転して正しくなくなります。 こういったことは毎回毎回訪れるものではなりません。 中にはいままで数十年起こらないことだってあります。 しかし起こらない確率は100%と言い切れないものです。
この1%以下の出来事は私たちのこれまでの生活をガラッと一変させます。 コツコツ貯金していても、毎年3%のインフレが起こってしまっては毎年全資産の3%をドブに捨てることを意味します(貯金の金利を0%と仮定)。 23年後には半分以上の資産をドブに捨てる計算になります。
インフレが起こった後に貯蓄以外の資産運用を行おうとしても、非常に大変です。 それなりに経済、金融系の勉強をする必要がありますし、資産運用をするための時間や経験も必要となります。 焦って変な投資を行うと、むしろさらに損をすることになりかねません。
またみんながこぞって株に興味を示す景気の良い時期に株を買うことは、高値で株を購入することになりえます。 いままで3年間株が値上がっても、一度の暴落で一気に購入価格以下に下がったら結果損することになります。 暴落が起こる直前まであなたの行為は正しかったのですが、暴落が起こったことによって正しくなかったことになってしまうのです。
このように正しいと思っていた考えや行動に依存すると、Fragileな出来事をモロに喰らってしまうのです。
以前にも何回も話した通り、世の中は急に起こるFragile、Antifragileな出来事に支配されています。 私たちが行う正しい行為は、現在までの間で最も妥当だと思う行為を指してしまいます。
しかし今までの常識を覆す事例が起こる、それがこの世の中なのです。 そして常識を覆す行為は、いままで正しいと思っていた行為のプラス分をすべて掻き消して、大きなマイナスをもたらすものなのです。
正しいことに固執するとチャンスを潰す
さらに正しいことに固執すると、困ったことにチャンスを潰す可能性が高まります。
大きな利益を得るためには、それまでに土壌を確保する必要があります。 努力を重ねて大きな利益を得るための土壌を広げていく中で、いつの日か努力が実って大きな利益を得るのです。 つまりAntifragile的なのです。
しかし正しいことばっかり行っていたらこうしたAntifragileな大きな利益を得ることはできません。 何故なら正しいことに固執すると大きな利益を得るまでの行動を継続的に行えないからです。
Antifragile的な効果を得るためには、地道にサイトアフィリエイトの記事を作る、安いときに株を買うなど、そういった行為が必要となります。
しかしこういった行為は決してそのときは正しい行為とは思えないものばかりです。 地道にサイトアフィリエイトの記事を書いたって、それがすぐにお金を生み出すことはありません。 3ヶ月も記事を書いても全然儲けられないと人にいったら、時間の無駄だと思われてバカにされるかもしれません。
また安いときに株を買う行為も凡人からは決して正しい判断だと思われません。 本当に安いときに株を買うというのは、リーマンショックのような大暴落が起こって周りが悲観モードになっているときに行う行為です。 ネガティブニュースが溢れている中で株を買ったことを家族に言ったら、狂気の沙汰と思われることでしょう。
私たち人間は短期的に効果が出ない作業は無駄だと切り捨ててしまいがちです。 そうでなかったら英語の勉強だって、ダイエットだって、三日坊主で終わる人がこんなにいっぱいいるはずがありません。
よって正しいことを追い続けると、こうした大きな利益を得るための準備ができなくなるのです。
正しいかどうかの判断は現在までの判断
私たちが考えなければならないのは、正しいか正しくないかと言う判断は現時点までしか判断できないことです。
当たり前ですが私たちは未来を予見することができません。 よって現在行っている行動が未来に対して正しいか正しいくないかどうかなんてわかりません。
でも私たちの行動や目標は、現時点で判断されるべきものではありません。 普通、私たちの夢や目標に向かった行動は、未来のどこかで達成できればよい話です。
よって現時点で上手く行っていなくても、それが正しいか正しくないかなんて判断できません。 いま現時点で副業が全然収入を生み出していなくても、もし3年後に努力が実って副業が本業以上に収入をもたらすようになったらあなたの副業に対する行動は結果的に正しかったことになります。
しかしいくら未来に成功する可能性があったとしても、現時点で上手くいっていなければ周りからは間違っている、ダメな人という判断をされてしまうことでしょう。
こういうことを考えれば、現在の副業なり研究者の夢なりのために行っている行動を正しい、正しくないと判断することはほとんど無意味です。 自分の行動のタイムスケールと、正しい・正しくないの判断をするタイムスケールが違うわけですから。 お互いのタイムスケールが違うものを比較したって、何の意味もないのです。
結局正しい、正しくないの判断は現実を未来に当てはめるという、全く根拠のない判断なのです。
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