「努力は報われる」を考える-漠然を愛する考えの提案-

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「努力は報われる」を考える-漠然を愛する考えの提案-

   「努力すれば夢は叶う」、そういう言葉があります。 私はこの言葉は好きではありません。 何故なら努力しても夢が叶わない人が大勢いるからです。


   人によっては努力が足りないから夢が叶わないと言う人もいるかもしれませんが、例えばスポーツ選手や大学教授職などは就ける人数というパイが決まっているため、どうしても競争に敗れるものが出てきてしまいます。


   そう考えると、「努力すれば夢は叶う」という言葉はモチベーションを高めるための言葉に過ぎない、あまり根拠のない言葉のような気がします。


   似たような言葉で、私たちは「努力すれば報われる」と教わってきました。


   意外かもしれませんが、私はこの言葉は一理あると思います。 ただしその理由は皆さんが感じているニュアンスとは少し異なっているかもしれません。


   何故「努力すれば報われる」が一理あると考えているのか、それは何らかの形で報われるからです。

目標を達成できるとは言っていない

   努力すれば報われるという言葉を聞くと、「努力した結果、努力の対象とした目標が達成できる」という風にほとんどの人が思うことでしょう。 つまり「努力の対象=報われるもの」という同一視をしてしまいがちです。


   しかし努力が報われるという言葉だけを見ると、「努力の対象=報われるもの」なんて一言も言っていません。


   私が思うに、努力が報われるという言葉の真の意味は、努力すれば何かしらの形で自分に大きなリターンが返ってくるということではないでしょうか。


   例えば私は大学に入ってから大学院を卒業するまで、ずっと数学を勉強してきました。 通常の講義だけでなく講義で扱われない分野の勉強を独学で行うほど、数学に没頭していました。 一時は数学の研究者になることも考えたほどです。


   結局自分の実力を客観的に評価した上で、自分の能力不足から数学の研究者になることは諦め社会人になりました。 社会人になった後は数学なんてほとんど使わず、それこそ大学で学んだ数学の内容は無駄となりました。


   しかし現在、思いもよらないところで数学の勉強の経験が生かされていると思っています。 それは本サイトです。


   本サイトは私が読んだ本や論文、また私自信の経験や考えの中から皆さんが生活するうえでメリットになるようなちょっと意外情報、思考をお伝えして、枠にとらわれない思考、行動をして頂くためのヒントにしてもらえることを一つのコンセプトにしています。


   有益な本や論文の情報をお伝えできるのは、数学で培った知らぬ間に身に着けた能力のおかげであると思っています。


   何故なら数学の勉強で何時間の難しい証明を読んだりウンウン考えたりしてきたことで、どんなに難しい文章でも臆することなく読むことができ、さらにじっくり考えて文章の意味を紐解いていく行動を楽しく行えるからです。


   こうしてみると6年間熱心に数学を勉強した努力は、本サイトという別の形、意外な領域で報われていると私は考えています。 つまり努力は報われているのです。

報われたいものを漠然とすれば良い

   努力すれば報われるという言葉の信憑性が揺らいでいるのは「努力の対象=報われたいもの」という同一視だとすることだと言いました。 実はこの考えにはさらに根本となる問題が隠されています。


   それは報われたいものがあまりに具体的で狭いことです。


   私たちの目標は具体的で狭くなりがちです。 サッカー選手になる、医者になる、大学教授になるといった、職業という具体的な観点での目標を設定しがちです。 日本の社会は何かしらの専門的な職に就くことを念頭においた社会システムですから、こうした具体的で狭い目標を掲げてしまいがちになるのも無理はありません。


   しかしこうした目標は、最初にも話したように限られた人数というパイが決まっています。 また年齢制限や学歴といった問題もあります。 こういった社会的な制限が、努力が報われない現実を生み出してしまいます。


   それに専門的なレベルに達するには、針の穴に糸を通すような努力が求められます。


   例えば野球選手になりたければもちろん野球の練習が必要ですが、微妙な体の使い方によってバッティングやピッチング内容が大きく変わってしまうことから繊細な努力を行う必要があります。 努力の方法を少しでも間違えたら、目標から大きく遠ざかってしまう可能性があるのです。


   こういった繊細さが要求されることも、専門的な夢、目標を掲げたときに達成できる確率を減らすことにつながるでしょう。


   一方でもっと漠然とした目標、例えば不労所得を得るという目標を掲げたときにはどうでしょうか。 このときはビジネスを行う、投資を行うといったことをすれば良いわけですが、サッカー選手になるといった目標を立てたときとは次の2点で異なります。


   一つは具体的で狭い目標を掲げたときとは違って、時間制限、人数制限といった社会的な制限がないこと。


   そしてもう一つはいろんなオプションがあることです。


   数学者になりたいという目標を掲げて数学を目いっぱい勉強して、その結果数学者にはなれずに社会人として働いてバリバリ仕事をこなしたとしても、数学者になるという目標には報われなかったことになります。 確かに数学の勉強を通じて得た能力が社会に役立っているとは言えますが、数学者になれなかった失敗を「数学者になるため」に活かすことはできません。


   数学の研究をするという「たった一つのオプション」で成功しないと数学者にはなれません。


   しかし不労所得を得るという目標を掲げてアフィリエイトや株式投資を行ってもうまくいかず、最終的に失敗の経験を活かして不動産投資を行った結果毎月80万円の家賃収入が入るようになれば、努力が報われたことになります。


   目標を不労所得を得るといった、より漠然なものにすることによって、努力の失敗を失敗で終わらせずにその後の経験に活かせる。 様々なオプションをいろんな場面で使える。


   ここが目標を漠然と置くことによって「努力が報われる」が現実となることの大きなミソです。

喜びを感じたいから生きている

   私たちが本当に欲しいのはなんでしょうか。 喜びですよね。 何かを成し遂げたときに感じる喜びを感じたいからがんばれるわけです。


   これは具体的に定めた夢が叶わなくたって問題はありません。 私も大学院を卒業して数学から離れてしまったら楽しみが見つからないんじゃないかと思っていましたが、いまでは心理学、投資、生物学といったいろんな分野の勉強を行っていてとても楽しい毎日です。


   正直こんな風にいろんな分野の本や論文を読んでいる自分は数年前には想像できませんでしたが、この予期せぬライフスタイルはかなり気に入っています。


   だから目標を達成できなかったからってあまり悲観する必要はないです。 努力していれば私のように何かしらの形で結果が現れるものですから、そういった未来に起こる何かしらにワクワクしながら自分がいま熱中できることをコツコツ努力するのが一番大切なのではないでしょうか。


   どういう結果であれ、最終的に自分に取って楽しいと思え大きな利益を実感できればそれでいいじゃないですか。


   努力すればいつか何かしらの形で報われる、こういった漠然を愛する先に喜びが待っているという考えを提案します。

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