返報性を活かすには見返りを求めてはいけない
今回は返報性に関連して、見返りを求めないことの大切さについてです。
返報性を活かすのに大切なのは、いかに相手が「私のためにGiveしてくれた」と思ってもらうことです。 一旦私利私欲のためと思われると、効果がなくなる可能性があります。
見返りを求めないことが大切
返報性はどれだけ相手にGiveできるかが問題でした。 さらに一つ付け加えるべきことがあります。 それは見返りを求めないということです。 無償で相手にどれだけGiveできるか、それが返報性の肝となります。
例えば友達から夕食をおごってもらったときに、特に友達から何も言われずただ快くおごってくれれば、今度はこちらが友達に夕飯をおごってあげようという素直な気持ちが生まれます。
しかし友達が「今日はおごるから代わりに今度おごってよ」と言われたらどう思いますか。 ちょっと気持ち的にスッキリしないですよね。
返報性を最大限に生かすには、いかにして相手の意志で「お返ししたい」という気持ちを芽生えさせるかどうかです。 外部から茶々を入れるのはよくありません。 むしろこちらが相手に対してお返しを求める雰囲気を出すと、相手は「お返しが欲しいからくれたのかよ!」という風に逆に悪い感情を抱きかねません。
返報性が生じるのは、相手がこちらのGiveという行動を「私のためにしてくれた行為」として受け取ってくれているからです。 相手が「わざわざ私のためにしてくれた」と思ってくれることで、「じゃあこっちもお礼しなくちゃ」という気持ちを芽生えさせることが返報性の肝なのです。
相手が喜んでくれるかどうかで重要なのは、相手にCognitive Easeと呼ばれる心理的な快適さを感じさせることです。
相手にメリットとなる情報をわかりやすく伝えたり、連想を膨らませたりするとCognitive Easeが働いて快適になれます。 道を尋ねたときにイメージしやすいわかりやすい説明をしてくれると、何だか良い気分になれますよね。 これがCognitive Easeが働いたことによる快適さの一種です。
とにかく相手にメリットとなることを与え続けることで相手のCognitive Easeを働かせて良い気持ちにさせて、この良い気持ちが「お礼をしたい」という気持ちを生まれさせるようにする...これが返報性を活かすうえで一番大切なのです。
逆に責任感を感じるなど、人は負担を背負うと途端に無意識のうちにあれこれ考えることが出来なくなり、Cognitive Easeを感じにくくなります。 プレッシャーを感じたりちょっと鬱気味になったり笑えない状況のときには、楽しいことを連想できなかったり、アイデアが中々浮かび上がらないものですよね。
少しでも見返りをこちらから求めるような動きをすると、途端に相手に責任感が植え付けられてCognitive Easeが働きにくくなります。 こうなると相手の気持ちがそこで停滞してしまいます。
返報性のプロセスでは最終的に「相手にお返ししたいという責任感を自発的に植えさせる」ことになりますが、その前にこちらから相手に責任感を植え付けてはいけないのです。 あくまで相手が自発的に責任感を感じるようにならないといけません。
相手にいかに負担を感じさせずに心地よさを感じ続けてもらうか、ここが返報性を活かすときに最も大切になってくるのです。
マーケティングでも見返りを求めていないように見せることが大切
実際、マーケティングでも見返りを求めていないように見せることは大切です。
お客さんに情報や試供品をタダで与えることで、お客さんにメリットがあることをお客さん自信に理解させてもらうことが大切です。 逆に無理に売り込むとお客さんから逃げられてしまいます。
例えばネット上の個人サイト、ブログやメルマガ、動画配信サイトでも、あまりにも売り込みが激しいといくら無料で有用な情報やサービスを提供してくれていてもうんざりしてきますよね。
ページにむやみやたらと広告があるとウンザリしますし、有料会員登録をやたらと宣伝するような動画サイトを見ていると本当に嫌になってきますよね。
やっぱり広告や有料会員登録の宣伝をそこまで前面に押しすぎない、目立つところにはあってもそれ以上にメインコンテンツの方が目がいくつくりになっている方が好意が沸きますよね。
私が登録している経済・投資情報メルマガも、投資情報の有料会員登録に登録するよう強引に売り込むことは決してしていません。 あくまで無料の高品質経済情報を読者に与え続けているだけです。
もちろん有料会員登録の宣伝も、毎日配信される経済情報メールの下部にあります。
しかしこの宣伝も有料会員登録しろと言っているのではありません。 いかに投資による資産運用が将来の年金減等の観点から重要であるのか、有料会員登録することでそうした将来の不安を消すための資産運用のお手伝いをしますよといったことが書かれています。
このように宣伝されていると、宣伝だとはわかっていても単なる謳い文句というよりは「私のことを考えてくれている」と思いますよね。
またリアルの世界でも変に売り込まずないことは一つのマーケティング戦略として重要なようです。
20年間試食品売り場でお客さんに試食品を提供していた女性店員のブログを見たのですが、試食から商品を買ってもらうにはいかにして売り込まないかが重要と言っています。 売り込んでしまうとむしろお客さんに逃げられてしまうのだそう。
やはり試食品売りでも売り込まずに、いかにお客さんに「買いたい」と思わせるかが大切なのです。 商品購入という見返りを求めずに、タダで商品を食べてもらって相手においしいと思わせること、相手自身で買いたいと思わせること、それが大切なのです。
このように見返りをむやみに求めず、お客さんの立場にたったマーケティングを展開することは有効なのです。 しかもこうした返報性を利用した見返りを求めないマーケティングでは、マーケティング者本人も「相手のために仕事をしている」という自尊心を感じられるでしょうから、マーケティング者本人の幸福感を満たすという意味でも重要です。
最終的にお互いの気持ちをWin-Winにするためにも、見返りを求めないことは大切なのです。
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