権威性・トップダウン・ボトムアップ
前回の記事で権威・ハブ・効率化について話をしました。 こういう点で考えると私たちに権威性が備わっているのは良いことだとも言えます。 何故なら権威のある人に無意識のうちに従っているだけで、グループ内の活動を効率よく行えるからです。
しかしだからといって必ずしも権威性がプラスに働くと言っているわけではありません。 権威がハブとしてプラスに作用するためには次の二つが重要になってきます:
- 権威のある人/ものが優れていること
- ボトムアップが働いていること
一つ目は権威のある人/ものが優れていることです。 これはもはや言わずもがなです。 権威のある人が全然能力がなければ、権威のある人の意見に従っている人たちは悪影響を被ってしまいます。
景気が良くなると言い続け、リーマンショックを予測できなかった経済、金融の専門家。 医療過誤によって患者を死なせる医者。 このように最悪な結果を招く権威のある人に対して知らず知らずのうちに権威性を働かせてしまうと痛い目に遭います。
もう一つはボトムアップが働いているということです。 ボトムアップが働いているというのは、グループ内の下の者の意見が上の者に反映されることを意味します。 ハブの言葉でいえば、末端からハブに向かって意見や考えが渡ることを意味します。
権威というと普通はトップダウンを思い浮かべます。 権威のある人が命令を下し、下の者がその命令に従う、そうであることが普通なような気がします。 しかしトップダウンの逆、ボトムアップが働いていないといけないのです。
何故ボトムアップが働くことが重要なのかというと、権威のある者が間違いを犯す可能性を減らし、より優れた決断をすることにつながるからです。
どんなに優れた人でも、自分の考えだけに固執してしまえば誤るものです。 世の中はどんどん複雑化しています。 複雑なものを一人で対処しようとしても無理があります。 だからトップダウンではいけないのです。
しかし下の人の意見を取り入れることによって、自分の頭の中にはなかった考えを自分の考えと混ぜ込むことができます。 そうすればより間違いの少ない、洗練とされた考えが出来上がります。
医者の例を取れば、ボトムアップというのは患者の言葉から患者の気持ち等を汲み取って診断結果を下すことを指します。 ただ単に医者が患者の診察から機械的に診断結果を下して、患者の微妙な気持ちを配慮しないことはトップダウンであることを指します。
アメリカのコロンビア大学医学部では「物語医学」というカリキュラムがあります。 物語医学とは、患者の話す体調に関するストーリーの中に正しく診断をするヒントが隠されているとする考え方です。 患者の話から、患者のここ最近の体調の変化や患者の気持ち等を「人間的に」探るのです。
これはまさにボトムアップ的な考えです。 単純に患者を診断して診断結果を医学界の常識に機械的に当てはめると、患者の重病の予兆を察知できなくなることがあります。 しかし患者の気持ちも汲み取ることで、重病の予兆も察知して進行を防ぐための策を早めにとることができるようになるのです。
私たち一般人の意見が反映されるボトムアップの考えこそが、権威を正常に働かせるためのカギになるのです。
関連ページ
- 6種の心理
- 返報性とは
- 返報性を活かしたビジネス
- ネットと返報性-ネットビジネスで成功するためにはまず無料でGiveしまくろう-
- 返報性を活かすには見返りを求めてはいけない
- 返報性と不確かさ-世の中に不確かなものは当たり前のように存在する-
- コミットメントと一貫性とは
- コミットメントと一貫性を強く働かせるための4つの原則
- コミットメントと一貫性を活かすには最初が肝心
- 「出来ない」と言うことの大切さ
- 実行力があるだけではダメ
- 社会的証明とは
- 社会的証明が働く2つの原理-不確実性と類似性-
- ル・ボンの群衆心理と没個性化-おかしな群衆や集団には決して入ってはいけない-
- ネット上では真実よりもマーケティング力に優れた情報の方が伝播しやすい
- 社会的証明を働かせないためにノイズをシャットアウトすることの大切さ
- 知識は社会的証明への防御になる
- ゴールドラッシュ-社会的証明に従わないことがビジネスで成功する秘訣-
- 好意性とは
- Liking vs Ego
- 見た目がものをいう
- 権威性とは
- 専門家の意見を正しいと考えてしまう
- 連想により偽りの権威が生まれる
- 数と権威性その1
- 数と権威性その2
- 数と権威性その3
- 権威とハブと効率化
- 権威性・トップダウン・ボトムアップ
- 希少性とは
- 不自由への反抗を考える
- 主体的に行動するときこそ希少性を忘れない