専門家の意見を正しいと考えてしまう
私たちは権威性によって、自分よりも地位が高かったり圧倒的な専門知識をもつ人の意見、行動を正しいと認識してしまいます。 特に専門家の意見を何の疑いもなく信じてしまう傾向にあります。
しかし専門家の意見や行動は、私たちが感じているよりも正しくないのです。 時にはかなりの間違いを犯している場合だってあります。
例えば医療についてです。 実は日本における医療事故による死者数は3~5万人程度と推計されています。 ちなみに2012年の交通事故死者数は4400人くらいです。 つまり医療事故死者数は交通事故死者数の7~11倍もあるのです!
確かにニュースでたまに医療ミスによる死亡事故が報道されます。 血液型がA型の患者への輸血時に誤ってB型の血液を輸血して患者を死亡させてしまったとか、特定の病気を抱えている人に対して投与してはいけない薬剤を投与してしまい死亡させたといったことが報道されますね。
それでもなお私たちは医者に対して圧倒的な信頼を寄せています。 風邪を引いたり病気に掛かったら、ほとんどの人は医者に診てもらうことでしょう。 そして診療結果や、場合によっては手術をしたりするときに多くの人は信頼してしまうことでしょう。
また経済や金融の専門家の景気や株価予測も正しいには程遠いです。 じつは統計的な研究結果として、専門家たちの株価の予測値と実際の株価との間には、何も関係がないことがわかっているのです。 何も関係がないというのは「ランダム」だということです。 専門家が株価を予測する行為は、コイン投げでコインを投げる前に「表が出る」と賭けることと何ら変わりはないのです。
このような事実を知ってしまうと人によってはショッキングに思えるかもしれません。 しかしこれが現実なのです。 権威性によって専門家の意見や行動を無意識のうちに正しいと思ってしまいますが、現実は私たちの直感とかなり乖離しているのです。
ではもしこのような事実を知っていたとしたら、私たちは権威性を排除して事実に基づく理性的な判断が出来るでしょうか。 残念ながら、必ずしも事実に基づいた理性的な判断が出来るとは限らないでしょう。 理由は権威性のパワーの大きさです。
私たちは無意識のうちに瞬間的に、直感的に頭をよぎる考えにとても支配されやすいです。
例えば自分が大好きなゲームの続編が出ることがネット上で発表されたことを知った時、私たちはどう思うでしょうか。 自分でも制御できないくらい、そのゲームのことを考えてしまうでしょう。
勉強や仕事をしているときでも、嫌でも無意識のうちにゲームのことが頭をよぎってしまって勉強にも仕事にも集中できません。 ゲームという情報をトリガーとして、いつの間にか頭の中がゲームモードになってしまうのです。 これが無意識のうちに働く心理の強さです。
権威性も同様です。 ステータスの高い人が話しているときに、気づかないうちに相手の話を肯定的に聞くモードになっています。 そして何の疑いももたないまま、相手の意見や命令に従ってしまいます。 権威のある人をトリガーとして、いつの間にか無意識のうちに頭の中が相手の話をすべて信じてしまうモードになってしまうのです。
権威性は無意識のうちに発動し、無意識のうちに発動する心理は強いのです。 よって権威性を嫌でも働かせてしまうのです。
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