現実世界の仕組みを「情け容赦なく」変えるICTの巨人_1

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現実世界の仕組みを「情け容赦なく」変えるICTの巨人_1

2018/08/30

 

 以前お問い合わせくださった方から、投資対象としてのアマゾンはどうかとの質問を受けました。そこで、今回は投資対象としてのアマゾンについてです。

 

[アボマガ No.9]現実世界の仕組みを「情け容赦なく」変えるICTの巨人_1

の記事(一部)です。

 

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営業利益を簡単に伸ばせるようになったアマゾン

 アマゾンの株価は今年に入り、ますます勢いを増しています。

 

 ここ1年でアマゾンの株価は2倍も増えており、Fedの金融引き締めといった投資環境の悪化をあざ笑うかのようにアマゾンの株価は上へ上へと向かっています。

 

 

 バリュエーションは現在のPERが170倍超、1年後の予想PERも76倍超あり、とてもいま手を出せる状況ではありません。

 

画像ソース: finviz

 

 アマゾンの株価上昇率が今年に入りますます勢いづいている一番の要因は、営業利益や純利益が2015年から急上昇しているためです。

 

 2011-14年は営業利益率がずっと2%未満であり、売上げの拡大に見合わない、冴えない営業利益や純利益が続いてきました。

 

 ECサイトで得た粗利益の多くを、アマゾンは倉庫やデータセンターの拡大、注文から配送に掛かる時間短縮化に必要な物流システムを構築するための投資(ロボット、専用の輸送機、AI等の開発・製造)に積極的に費やしてきたためです。

 

 しかし2015年以降は、クラウド事業であるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)からの営業利益の急拡大を筆頭に、プライム会員料からの収益や広告事業からの収益拡大により、営業利益や純利益が急拡大してきたのです。

 

 いずれも、利益率が高くキャッシュを簡単に生み出せる事業という点で共通しています。

 

 そして営業利益のFCF(フリー・キャッシュ・フロー)の伸びは、倉庫、配送、データセンターへの巨額の投資に加えてアマゾンが研究開発費にさらなる大金をつぎ込む余裕を与えています。

 

 アマゾンは年々、売上げに占める研究開発費を増やしてきており2017年に226億ドルもの研究開発費を投入しました。世界最大です。

 

 将来、ドローン配送やゼロクリック注文といった、とんでもないサービスや仕組みを生み出すための準備を着々と進めているのです。

 

 

 今後も、プライム会員料、AWS事業、広告事業からの収益はしばらく伸びていくと思われます。

 

 

 さらに、アマゾンは最近在庫管理の改善にも力を入れています。

 

 アマゾンは今年7月から、フルフィルメントサービス(FBA)を利用して商品の保管・注文処理・出荷・配送・返品をアマゾンに代行しているすべての出店者に対し、新しい在庫管理システムの運用を開始しました。

 

 昨年にアマゾンが独自に開発した「在庫パフォーマンス指数(IPI)」を使い、同指数が350を下回る出店者に対し、以下のペナルティを課すようになります。

 

  • 同指数が350を上回るまで、新たに商品をアマゾンの倉庫に配送できなくなる
  • 同指数が350を上回るまで、毎月、超過分の在庫スペース(平方フィート)×10ドルの
    手数料が発生する

 

 アマゾンはこの10年間、数十億ドルをつぎ込み、毎年平均35%のペースで倉庫面積を増やし、現在では1億平方フィートを超える倉庫スペースを抱えています。

 

 しかしあまりにもFBAサービスを通じたアマゾン上での商品販売を望む出店者が増えすぎて、倉庫面積の増加に追いついていません。

 

 そのため、アマゾンはFBA利用者に対して、ペナルティつきの在庫管理システムの運用を開始したわけです。
【2018/06/29 CNBC】Amazon’s new warehouse policy will penalize sellers for storing products too long
【2018/07/16 Deliverr】What is the Amazon Inventory Performance Index (IPI) and how can I prepare for it?

 

 いままでのアマゾンの在庫管理の改善は、ロボットの投入などアマゾン側のコスト負担を通じて行われました。

 

 しかし今回の新在庫管理システム運用開始は、出店企業に負担を求めるものですので、アマゾンの財務に与えるプラスの影響は結構大きいかもしれません。

 

 今後はアマゾンの売上げに占める在庫が減り、最大の売上げを誇る小売事業の利益率も改善し、アマゾンの利益をさらに押し上げていきそうです。

 

ファンダメンタルズと株価は短期では別である

 しかし、株価も同時にうなぎ上りを続けるかというと、そういうわけではないと思います。

 

 一つは米国株バブルの崩壊です。

 

 現在はアマゾン含むハイテク企業を中心に米国株がバブル状態にありますから、ちょっとしたネガティブな報道に市場が過剰反応することによる、アマゾン株暴落のリスクが存在します。

 

 現在の相場は、フェイスブックやネットフリックスの株価が一日で2割前後暴落した事例からもわかるように、例え利益を伸ばしても多少伸びが鈍化するだけで暴落するリスクがあります。

 

 もう一つはアマゾンに対する規制・課税強化や罰金支払いを求める動きが今後強まるリスクが存在することです。

 

 現在は撤回していますが、トランプ大統領は今年3月の終わりにアマゾンに対し、州政府や自治体に売上税をほとんど支払っていないこと、米国の小売業界を独占し、他の小売業者を次々と破綻させていることを非難するツイートをしました。
【2018/03/30 BUSINESS INSIDER】アマゾンとトランプ大統領の「戦い」は長期戦に? 大統領の選対責任者が示唆

 

 アマゾンによる小売市場の独占懸念は、米共和党・民主党両党の共通認識です。
【2017/08/29 Newsweek】アマゾンは独禁法違反? 「世界一」ベゾスにいよいよ迫る法の壁

 

 アマゾンによる租税回避は国際的な問題であり、今後G20の場で協議が進められていきそうです。
【2018/02/24 日本経済新聞】G20「アマゾン課税」協議へ EU案軸、売上高を対象

 

 さらに、トランプ大統領の選対責任者を務め、2016年の米大統領選でソーシャルメディアを使った選挙運動を統括しトランプ氏の当選の原動力になったと言われているパースケール氏は、「アマゾンはアメリカ人の個人情報をフェイスブックの10倍は持っているであろうことを忘れてはならない」と述べ、アマゾンへのデータ規制導入の可能性を示唆しました。

 

 データについて、現在米国のICT企業やデータブローカーたちは個人情報を好き勝手に収集し、他社に販売しているのが実情です。

 

 個人情報の取引は売買に関与している企業に多額の利益をもたらすのみならず、データが海外に流出することで安全保障上のリスクも高まります。

 

 米中貿易摩擦が貿易戦争に発展した大きな要因の一つは、中国のICT企業が米国に進出して米国民の個人情報や米政府・軍の機密情報を中国が握り、経済のみならず安全保障面でも中国が米国にとって大きな脅威となる認識が米国政府や軍にあることです。

 

 最近も対米外国投資委員会(CFIUS)の審査権限を強化する改正法案(FIRRMA)が成立しました。

 

 同法案により外国企業による米国企業の買収がより厳しくなるとみられ、これまで審査対象外だった外国企業による米国ベンチャー企業の買収も厳しくなるとみられています。
【2018/08/17 TechCrunch】A new foreign investment bill will impact venture capital and the US startup ecosystem

 

 FIRRMAはデータ・安全保障とも密接に絡んでおり、米国内の機密情報が外国企業による買収を通じて海外に流出することを防止する意味合いがあります。
【2018/01 Legal Wire】対米外国投資委員会(CFIUS)の審査権限を強化する改正法案に含まれる3 つの重要な側面

 

 こうした流れから、将来、アマゾンだけでなくその他米国ICT企業(グーグルなど)に対し規制が強まる可能性があります。

 

 

 まとめると、アマゾン(グーグル等のICT企業も同様)は次の3つの規制強化に直面する可能性があります。

 

  • 市場規模拡大に対する規制強化(独占禁止)
  • 課税強化
  • データ管理・流出規制の強化

 

 規制が強化されてアマゾンのビジネスが立ち行かなくなることは考えにくいですが、規制強化の懸念に市場が大きく反応し、アマゾンの株価が大きく下がる可能性はあり得ます。

 

 こうした規制強化の話し合い本格化や導入は、政治的に世界金融危機といった混乱時でアマゾン等巨大ICT企業の株価が下げトレンドにあるときに行いやすくなるでしょう。

 

 つまり、アマゾン株価の一寸先は闇なのです。

 

 →続きはこちら

 

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