アリペイが九州・沖縄と中国・韓国との歴史的関係を再び深める
2018/07/24
【2018/07/23 乗りものニュース】JR九州、中国アリババと戦略的提携 送客100万人、経済効果1500億円以上へ
JR九州と、世界最大の流通総額を持つオンラインモバイルコマースカンパニーの中国・アリババグループが戦略的提携を発表。九州を『キャッシュレス観光アイランド』とし、中国からの訪問者100万人を目指します。
今後さらなる拡大が確実な中国人インバウンド需要。長い歴史のあいだに中国や朝鮮と経済や文化面で交流を続け、お互いの繁栄に努めてきた九州や沖縄は、観光客を呼び込んで地域経済を活性化するために何をすれば良いのかわかっている。
中国人観光客を呼び込め
少子高齢化が本格化する日本において、中国人観光客に沢山のお金を落としてもらうことは日本の経済活性化に重要です。
2017年の訪日観光客数は2869万人ほど。そのうち85%近くは中国、韓国、台湾、香港、東南アジア、インドが占めています。
※欧米人観光客ばかり放映する日本のテレビ番組は「フェイク」です。
画像ソース:日本政府観光局 JNTO ※PDFファイル
なかでも中国人観光客は、全訪日観光客数の1/4超にあたる735万人でトップです。2017年5月に訪日ビザの発給要件が緩和されたこともあり、前年比15.4%増でした。
また中国人観光客は一人当たりの平均消費額も23.2万円(2016年)と多く、単純な掛け算で中国人訪日観光客は一年間で1.7兆円ものお金を落としてくれたのです。
今後も中国人観光客は一人当たり所得増もあって大きく増えると見込まれています。2017年の中国人旅費総額は1150億ドル程度でしたが、2025年には2554億ドルに増えるとの予測もあります。
地理的に近く、歴史的な関係も深い中国ですから、日本はこうした優位点を活かして中国人観光客を呼び込み続けなくてはなりません。
アリペイが使えない地域に外国人観光客は来なくなる
中国人観光客は他国の観光客と異なり、海外渡航先の「決済手段」へのこだわりが強いという特徴があります。
現在の中国人観光客の海外渡航先での決済方法は、多い順に「現金>カード>モバイル」です。しかしモバイル決済が順調に伸びており、中国国内ではモバイル決済が一般的であることから、いずれは海外渡航先でもモバイル決済が中心となるでしょう。
中国人観光客の大半は、海外渡航先で店舗にモバイル決済が可能であるか尋ねた経験があります。また海外でモバイル決済が普及すれば、消費額をもっと増やしてもよいと中国人観光客の大半は考えています。
6億人の中国人が使っているアリペイを海外渡航先の決済手段として中国国内と同じように利用できることは、中国人観光客を呼び込み、リピーターを増やすために絶対条件となりつつあるのです。
※「アボカドまつりのメルマガ(アボマガ)」の特典記事では、この点について根拠となる画像つきで説明しています。気になる方は「アボマガ」に登録してください!特典記事の配信は2018年8月31日までです。登録はお早めに!
アリペイはインド、タイ、韓国、フィリピン、インドネシア、香港、マレーシア、パキスタン、バングラデシュに何らかの技術供与をしています。
今後、東アジア・東南アジア諸国を環状につなぐアリペイ決済ネットワークの構築を目指しているように思えます。
もしアリペイ決済ネットワークが構築されれば、東アジア・東南アジア諸国の人々は財布を持たず、スマートフォンさえ持っていれば気軽に海外旅行できるようになります。そうなったら、盗難の心配や決済・両替時の不便さのある財布なんて持たずに、スマホ片手に海外旅行を楽しむ人々が急増することは間違いないでしょう。
つまり将来、中国人のみならず、今後経済発展が見込める東アジアや東南アジア各国の観光客を呼び込みリピーターを増やすために、アリペイ決済の普及は絶対に必要なのです。
店舗での決済だけではありません。観光地、宿泊施設、公共交通機関(電車、バス、タクシー、飛行機)といった、観光に関わるすべての場所においてアリペイ決済を普及させる必要があります。
アリペイ決済に対応していない地域、つまり財布の所持が必須で両替といった手間が掛かるような地域に、観光客は訪れなくなるでしょう。
福岡は東京を超える先端都市になる?
こうしたことを考えれば、今回のJR九州のアリババグループとの戦略的提携、九州の「キャッシュレス観光アイランド」構想は良い動きだと言えそうです。
「JR九州のグループ会社を含む、地域企業へのアリペイ導入促進を支援」とあるので、JR九州の改札入出場はもちろんのこと、観光地や宿泊施設のアリペイ決済が今後普及していくものと思われます。
韓国もまた、中国と同じように日本にとって大切な観光客です。韓国も決済のほぼすべてがキャッシュレスで、韓国スマホ決済で最も利用者の多いサムスンペイは、2016年にアリペイと戦略提携しており、サムスンペイでアリペイ決済も可能です。
九州の「キャッシュレス観光アイランド化」は、中国人観光客のみならず、韓国人観光客も呼び込むことになります。
また1日平均1000万人が利用する、アリババの「フリギー」サービスを通じて、九州の観光地をアピールしたり、モデルルートの提案、モデルルートに沿ったパッケージ旅行商品や、交通チケット、宿泊などの商品も販売となります。
フリギーサービスで九州の魅力がアピールされ、テンセントのSNS「WeChat」を介した口コミで九州の魅力が広まれば、中国人観光客はおのずと増えていくことでしょう。
もちろん、アリババグループとの提携や「キャッシュレス観光アイランド」構想の実現だけで九州の観光事業が活性化するかどうかはわかりません。まだまだ観光客を呼び込むための問題もあります。
2017年の九州への中国人観光客は185万人でしたが、そのうちの162万人はクルーズ船による一時的な上陸にとどまります。九州に宿泊込みで長い間観光してくれる中国人が非常に少なく、リピーターも少ないのが現状です。
その背景には、九州の玄関口である福岡空港のキャパシティの問題もあるかと思います。
福岡空港は、接続する地下鉄利用で博多まで5分、天神まで11分という好立地にも関わらず、年間発着回数が定時発着が可能な「処理容量」を上回り、国際線の増便が非常に厳しいのが現状です。2024年度には2本目の滑走路が完成する予定ですが、まだまだ先です。
→ソース
よって、九州が中国人や韓国人をはじめとした外国人観光客を増やすには、もっと地方空港を活用して九州・アジア直行便を増やす必要があるでしょう。
特に長崎空港はアジア各国との距離が近く、海上空港のため騒音問題もなく24時間発着可能で、ハウステンボスにも近いことから、国際便を増やせばアジア観光客も増えるような気がするのですが。近くにカジノを併設できればなおよし(長崎はカジノ誘致に積極的な県の一つです)。
現在、九州の観光客は東京、千葉、大阪、京都などに押され気味ですが、キャッシュレス化を進め、玄関口となる空港の分散化を進めて国際便を増やせば、アジア各国から距離が近く地理的に有利な九州は、日本有数の観光地域に化けるかもしれません。
今後の九州のがんばり次第では、いち早くキャッシュレス化を進めた九州(福岡)こそ、中国や韓国を初めとした海外の人々にとって東京を超える日本の中心都市になるかもしれませんよ。
歴史は繰り返す
沖縄でも、那覇市内を走るモノレール「ゆいレール」で、アリペイ決済実験が今年6月22日から始まりました。
国内の鉄道改札機で海外の電子決済を使った実証実験を行うのは初めてとのことです。
【2018/06/22 琉球信奉】「アリペイ」ゆいレールで導入 決済実験、中国人の利用増にらむ
九州・沖縄という、昔から中国、朝鮮といったアジアの国々との付き合いの長かった地域が、アリペイを通じた中国人、韓国人、その他アジアの国々を中心とした観光客取り込みを少しずつ本格化させています。
日本の銀行は自らの事業領域を奪われまいと、アリペイ普及を妨害しているようです。
【2018/03/16 日本経済新聞】アリババ、日本版スマホ決済延期 情報流出に懸念の声
しかしいずれは、九州・沖縄、その他観光業に力を入れたい地域が、中国人等の観光客を呼び込むためにアリペイ決済を初めとしたモバイル決済の普及を進め、ボトムアップの形で徐々に日本全土にキャッシュレス決済が普及していくのではないでしょうか(日本でどの決済アプリが勝つのかはわかりませんが)。
そうそれは、縄文時代晩期に朝鮮半島や中国の江南地域から九州北部に稲作が伝わり、四国、本州へと稲作が普及し、日本社会が採集中心社会から農耕社会へと革命的に変化したように。
米国証券口座で長期投資。日本よりも圧倒的に安い手数料で世界中の株式に投資できます。中国株暴落後の優良中国銘柄を購入するためにも。
関連ページ
- コロナショックの大底から株価が2.5倍値上がりした石化会社
- 高配当利回りだがリスクも気になるタバコ銘柄
- シェブロンのノーブル・エナジー買収の意味
- COVID-19の拡大で様変わりしていくグローバルサプライチェーン
- ネットフリックスが経営破綻しかねない単純な理由
- 全米を席巻する電子タバコ「ジュール」の恐るべき潜在力、そして危険性
- FDAのメンソールタバコ禁止方針の意外な中身
- 現実世界の仕組みを「情け容赦なく」変えるICTの巨人_2
- 現実世界の仕組みを「情け容赦なく」変えるICTの巨人_1
- アリペイが九州・沖縄と中国・韓国との歴史的関係を再び深める
- 先端ハイテク技術発祥地としてのシリコンバレーは過去のもの
- AT&Tのタイムワーナー買収に冷ややかな市場
- [2018/05/26]中国の車載電池支配体制の準備が整いつつある
- [2018/05/03]アップルが手持ちの債券を減らし始めた
- [2018/04/30]中国のスマホ市場が飽和点に達した...だと?
- [2018/03/13]若い世代を取り囲み将来を見据えるアマゾン
- [2018/03/02]東京五輪を控えて次世代高速通信「5G」に浮かれすぎなニッポン
- [2018/02/24コバルト価格急騰は正当化できるものなのか...
- [2018/02/14]CATLが中国EV市場の心臓部を独占しようとしている?
- [2018/02/10]ICT×ヘルスケア×政府の財布事情→予防サービスの重要性
- [2017/12/20]EV・PHVシフトに慎重なトヨタの新チャレンジとその事情
- [2017/10/23]GEの大規模改革の先にある、IIoT企業への転身
- [2017/10/11]P&G委任状争奪戦の背後にチラつくウォーレン・バフェットの影