プロスペクト理論をもっと理解する-グラフから見える3つの要旨-
プロスペクト理論3つの要旨
前回の記事で、プロスペクト理論に関する大まかな説明を行いました。 今回からはより深くプロスペクト理論を紹介していきます。
まず初めに結論を言うと、次の3点がプロスペクト理論の要旨となります:
- 参照点の存在
- 参照点から離れるに連れて感情の変化は緩やかになっていく
- HappyよりもSadの方が感じやすい
プロスペクト理論を理解する肝となるグラフ
この3つが何を表しているのかを説明するために、まず下のグラフをご覧ください。
プロスペクト理論のエッセンスはこのグラフに詰まっているといっても過言ではありません。
このグラフは私たちに損得が関わる出来事に起こった時に、どれだけの感情が生まれるのかを表したグラフです。 早速このグラフに関する基本的事項について説明しましょう。
まず初めに目に付くのはやはり原点にある参照点でしょう。 これがプロスペクト理論の1つ目の要点です。
参照点とは損得のプラスマイナスがゼロであるところを指します。 詳しい説明は次の記事に書きますので、まずはザックリと「±0」だという風に理解してください。
続いて横軸に「+/-」とありますね。 これは損得を表しています。
参照点(原点)の右側は「+」、例えば10000円のお金を手に入れるといった得を表しています。 右に行けばいくほどより得なことが私たちの身に起こったことを意味します。
一方で参照点の左側は「-」、具体的には5000円のお金を失うといった損を表しています。 左に行けば行くほど、より損を被る出来事が起こったことを意味します。
そして縦軸は私たちがお金を受け取る/失うといった損得に関わる出来事が起こった時に感じる感情がどの程度かを表しています。
横軸の上側はお金を受け取った時などに感じる「Happy」な気持ちを表しています。 上に行けばいくほどよりVery Happy!に感じられるわけです。
逆に横軸の下側は「Sad」、つまりお金を失ったときとかに感じる悲しみを表します。 下に行けばいくほど悲しい!Very Sad!と思うわけです。
例
例えば下図の点Aは、10000円をGetしたときの感情を表しています。 10000円をGetできることはもちろん嬉しいことなので、Happyなゾーンに点Aがありますよね。
逆に点Bは20000円損したときの感情を表しています。 20000円失うのはとっても悲しいことなのでVery Sadなゾーン、かなり下側のところに点Bがあるのがわかります。
グラフから見える3つの要旨
このグラフが何を表しているのかがわかったところで、ここからが本題です。 プロスペクト理論のエッセンスが詰まったこのグラフから、最初にあげたプロスペクト理論3つの要旨が見えてきます。 皆さんわかりますか?
初めの参照点の存在についてはグラフから明らかです。 しかし残りの二つの要旨はグラフ上でどのように表されているのでしょうか?
青色のグラフを見ると、グラフがS字カーブを描いていますよね。 このS字カーブというのが2番目の要旨である「参照点から離れるに連れて感情の変化は緩やかになっていく」を表しています。
最後に例で示したグラフがわかりやすいのですが、HappyよりもSadの方がグラフが何だか縦方向に急に見えないですか? このHappyよりもSadの方がグラフが急であるというのが、3番目の要旨である「HappyよりもSadの方が感じやすい」を表しています。
今回はグラフを使って視覚的にプロスペクト理論の肝となる3要素を説明しました。 以降の記事ではこの3つの特徴がそれぞれ具体的にどういったことを表すのか、例を交えながら説明を行っていきます。
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