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はっきりしてると何となく起こりそうな気がする-Ellsbergのパラドックスと透明性-

   はっきりと会話が出来る人とボソボソっと話してどこか曖昧な感じな人、どちらが好きですか。 普通ははっきりと会話できる人の方が印象が良いですよね。 プラスに感じますよね。


   根拠のない自信をもって「将来俺は社長になる!」と豪語している人と、「将来のことなんてわからない」と懐疑的に思っている人、どちらの方が将来有望だと思いますか。 根拠なく「俺は社長になるぞ!」って言っている人の方が何となく将来有望な気がしませんか。


   私たちは曖昧なものではなく、はっきりと明確なものを好みます。 どんなに根拠がなかろうとも、はっきりとしているだけで良い印象を持ってしまいがちです。


   私たちの体感確率も同じです。 はっきりとしているものは体感確率が高くなるのです。


   クリアで透き通っているか、それとも曇っていてぼやけているか、それが私たちが捉える確率の印象を大きく変えます。 透明度と確率を知らぬ間にリンクさせているのです。

Ellsbergのパラドックス

   透明度と確率をリンクさせて考えてしまうことの例に、Ellsbergのパラドックスというものがあります。 これは次のようなものです:


   ツボに全部で90個の玉が入っています。 そのうち30個は赤玉、残り60個は黒玉と黄色玉です。 黒玉と黄色玉がツボに何個入っているのかはわかりません。


   あなたはこれからツボから球を1つ取り出します。 次の二つだったら、どちらを選択しますか?

  1. 赤玉を取り出したら10000万円をもらえる
  2. 黒玉を取り出したら10000万円をもらえる

   次に取り出した玉を一度ツボの中に戻してしっかりと玉を混ぜます。 そしてもう一回あなたにはツボの中から玉を取り出すチャンスが与えられます。 次の二つの選択肢が与えられたとき、どちらを選択しますか?

  1. 赤玉か黄色玉を取り出したら10000万円をもらえる
  2. 黒玉か黄色玉を取り出したら10000万円をもらえる

   あなたは二つの質問に対して、それぞれどちらを選択したでしょうか?


   実際にこの実験が行われたとき、「1、4」という組み合わせを選択した人が最も多かったのです。 あなたももしかしたら「1、4」を選択されてませんか?


   それでは何故「1、4」という選択する人が多いのでしょうか。 そのカギは透明性です。


   1番と2番を比べてみましょう。 1番の赤玉は、ツボの中に30個入っていることがもうわかっています。 赤玉の個数がクリアなわけです。 しかし2番の黒玉は、問題からは何個入っているかわかりません。 つまり黒玉の個数は不透明です。


   この赤玉が30個あるという透明性が、私たちの選択を1番へと駆り立てるのです。


   次に3番と4番を比べてみましょう。 3番は赤玉と黄色玉を引き当てればよくて、赤玉は30個入っていることがわかっていますが黄色は何個あるのかわかりません。 よって赤玉と黄色玉の合計個数はこちらにはわかりません。 不透明でぼんやりとしているのです。


   一方で4番は、黒玉も黄色玉も何個入っているのかがわかりません。 しかし黒玉と黄色玉の合計が60個だということはわかっています。 このため4番目の選択は透明、クリアになっています。


   こうして3番と4番を比較すると4番の方がはっきりとしているので、私たちは4番を選択することになります。


   こうした透明性という理由から私たちは「1、4」という組み合わせを最も好むのです。


   このように私たちは無意識のうちに、透明性が高い→確率が高いという勝手なイメージが出来上がってしまっているのです。

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