今月1日にシカゴ大学の金融政策を巡る会合に出席したFedのウォラー理事が、今後の量的金融政策の在り方について聞き捨てならない発言をしました。
彼の発言内容は次の通りです。
・バランスシートを巡る計画は流動性レベルを適切にするためのものである
・バランスシート縮小ペースを変更するタイミングは、政策金利のいかなる変更からも独立して決定される
・Fedによる住宅ローン担保証券(MBS)の保有がゼロになることを望んでいる
・Fedの保有資産について、短期米国債の比率を高める方向にシフトさせたい
→ソース
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重要な点は2つあります。
1つは、量的政策は金利政策と独立させ、量的政策は金融市場の流動性の調整を目的として行うべきだと述べている点です。
これまで、金利政策と量的政策の方向性は同じでした。量的政策を行う場合、利下げと量的緩和、利上げと量的引き締めがセットでした。
この考えだと、量的緩和はインフレ率が低く失業率が高いときに、量的引き締めはインフレ率が高く失業率が低いときに行わなければなりません。
量的緩和政策はこれまでもリーマン危機、コロナ危機のときに、金融市場に資金を流して市場の混乱を鎮めるために行われました。
当時はインフレ率が低く失業率が高かったので、金利政策とセットでもなんら差し支えありませんでした。
ところが現在はインフレが高止まりし、失業率が低く労働市場は逼迫しています。他方で、昨年のシリコンバレー銀行の破綻や今年のNYCBの巨額の引当金計上からみられるように、金融危機の火種が燻ぶっています。
ウォラー理事は、インフレが高く、失業率が低いときに金融市場が混乱しても、量的緩和政策を早急に取れるようにするべきだと言っているのです。
彼の考えだと、利上げと量的緩和(QE)の組み合わせもあり得ることになります。
2つ目のウォラー発言の重要な点は、今後Fedが再び量的緩和政策をする際には、米国の短期国債の購入を中心にするべきと主張している点です。
これまでの量的金融政策では満期が1年超10年未満のもの(Notes)を購入してきましたが、今後再開するときには満期1年以下のもの(T-Bills)を購入するべきだと言っています。
中央銀行が短期国債を買い支えるというのは、二度の世界大戦のときに戦費調達のために当事国が採用したものでした。
戦争終結後、当事国は満期の迫った巨額の公的債務の整理に長年にわたり苦労しました。ドイツはハイパーインフレにより公的債務をチャラにするしかありませんでした。
米国の対GDP比政府債務は、すでに第二次世界大戦中のピーク時よりも悪い水準です。
長期金利の上昇で、米国政府の利払い費は年間1兆ドル超に達し、いまなお急増は止まっていません。
高齢化の進展で、社会保障費は今後も増え続けるしかありません。
米国政府はいまでも高い水準の支出を続けており、いまのところ緊縮財政に舵を切るようには見えません。
現在、米国政府は短期国債への依存を急速に強めています。民間企業であれば、短期借入の急増は経営破綻の一歩手前の合図です。
Fedが短期国債を買い支えることになれば、米国政府の財政はこの買い支えなしには維持できなくなります。
もし買い支えが止まれば、たちまち米国政府は1年以内に返済しなければならない巨額の借金への対応が迫られます。
このとき米国政府の債務残高は歴史的水準に達しているでしょうから、信用を大きく失っています。一体どうやって巨額の短期債務を整理しようというのでしょうか。
ウォラー理事の意見がFedの金融政策に反映されることになれば、将来に大きな禍根を残すことになります。
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