Fedは「永久の」金融緩和継続を決めた?

[2021/02/23 ロイター]FRBは失業率より就業者数を重視、M2忘れるべき=議長

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日の上院公聴会で、新型コロナウイルス禍からの景気回復に向けた方策について語る中、時代遅れとなった経済学の定説を捨てるFRBの姿勢も垣間見せた。

パウエル氏は、FRBは失業率ではなく、就業者数に注目し、就業者の増加を目指すと説明。インフレについてはすぐには問題にならないと指摘した。

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また、FRBがかつて注目し、現金などの通貨供給量の重要指標とされたマネーサプライはもはや関係ないと発言。同じ60代後半の共和党のジョン・ケネディ上院議員に対し、「大昔にわれわれが経済学を勉強したころはM2と通貨供給量が経済成長に関係するとみられていた」とした上で「現在ではM2に重要な意味合いはない。この知識は忘れる必要がある」と述べた。

イエレン財務長官、パウエルFed議長の発言から、バイデン政権やFedの最重要経済課題は雇用の改善であることが明白です。

最近、景気拡大期待の過熱からインフレ期待が上昇し、銅や原油などのコモディティに資金が流れ、インフレ懸念がかなり強まっています。

インフレ高進を懸念し、いずれFedは金融引き締め政策に転換せざるを得ないのではないかとの声は強まっています。私もそうしたシナリオの可能性は考えていました。

しかし米国の雇用状況は、かなり厳しいものがあります。

失業率は、新型コロナウイルスの感染拡大で一時解雇が急増した昨年4月のピークから低下傾向が続き、今年1月時点で6.3%と2014年4月の水準です。

しかし米国人口に占める雇用者数の割合をみると、今年1月時点で57.5%にすぎません。これは40年近く前の1983年5-6月ごろに匹敵する低水準です。

失業率と雇用者数の割合に大きなギャップがあることは、雇用を諦めた人々が大量に存在することを示唆します。

バイデン政権の雇用政策は、現在のところ家計への現金給付や中小企業への資金繰り支援と、最低賃金の引き上げからなります。

しかし家計の貯蓄は増えていくばかりで、現金給付や失業保険の拡張を含む追加支援の影響を受けて小売売上高が大きく上昇した1月においても、貯蓄は増えました。

中小企業の資金需要は現在も大きいと思われますが、米国の商業銀行は融資の焦げ付きを防ぐために、昨年5月ごろから融資基準を厳格化し貸出に消極的になっています。

1950年以降、景気後退期またはその直前に最低賃金が引き上げられたケースは5つありますが、そのすべてにおいて雇用者数は大きく減りました。

景気後退期における最低賃金の引き上げが失業の抑制をもたらすことはないのです。むしろ、固定費を抑えるために首切りが増えると考える方が自然です。

これら雇用政策は、雇用状況を改善することはないのです。むしろ個人や企業を甘やかし堕落させることになり、雇用状況は悪化していきます。

公共投資を増やせば雇用創出につながるでしょう。

バイデン政権は2兆ドル規模のインフラ投資計画の実施を公約に掲げています。当初2月に具体的な中身が公表されるとみられていましたが、遅れています。

インフラ投資計画は裁量的歳出に分類されるとみられており、上院で60票の賛成が必要です。

共和党の協力が必要であり、1.9兆ドルの追加経済支援策でも規模が大きすぎ、インフレを招き得るとの懸念が出ましたから、インフラ投資計画の実施はより困難でしょう。

インフラ投資は風力発電等のグリーンエネルギーへの投資が中心とみられていますが、大寒波が襲ったテキサス州で大規模停電した最大の理由が、タービンの凍結で風力発電の生産容量が半減したことによるものだと判明したことは逆風です。

バイデン政権のもとで米国の雇用が元に戻る見通しはいまのところありません。その裏でロボット導入による自動化は本格化していきます。

Fedは「永久の」金融緩和継続に突き進むことになるかもしれません。

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