バブルとバイデン増税から目をそらしてきた市場

ウォール街による今年の相場予想は、基本的に、どこも強気です。

金融緩和策と財政出動の両輪による支えがありつつ、COVID-19ワクチンが今年半ばから後半にかけて普及し、経済が好転していくという楽観シナリオが目立ちます。

景気回復により良い意味でインフレ期待が高まり、景気敏感株、小型株、新興国株などにお金が流れ、ドル安が進むとの見方が多いです。

今月20日に誕生するバイデン政権は、上下両院で民主党が支配し、トリプルブルーの構図になりました。

これにより、ウォール街の強気の相場予想をさらに後押しするように見えますが、実際のところどうなのでしょう。

14日、バイデン次期大統領は1.9兆ドルの景気刺激策を発表しました。

1人当たり2000ドルの国民への現金給付、失業給付の上乗せは400ドルに引き上げて9月まで延長します。ワクチン接種などの新型コロナ対策に4150億ドルを充てます。

景気刺激策による国債増発懸念から米長期金利は上がりましたが、ドルは逆に上がりました。

1.9兆ドルの刺激策ではありますが、実際にこの規模になるかはどうかはわかりません。

多くの法案は上院で認められた議事妨害を阻止するために60票の賛成が必要であり、共和党議員が10名以上造反する必要があります。

税制など予算関連法案は単純過半数で可決できる条件つきの特例措置があるものの、民主党にとって1人の造反も許されません。

そのため、実際の景気刺激策の規模は1兆ドル前後になる可能性があります。これは市場にとって良い話ではありません。

これとは別に、再生可能エネルギーや電気自動車、水素利用の拡大など、クリーンエネルギーに軸足を置いた2兆ドル規模のインフラ投資計画を、来月の上下両院合同会議で公表するとしています。市場に織り込み済みでしょう。

ただ、この財源は、法人税率、高所得者の所得税率や投資課税率、相続税率の引き上げなど、一部増税によって賄われます。

下図のように、バイデン政権の税制改革は富裕層に結構な影響を与えるとみられます。

画像ソース: Zero Hedge

次期バイデン政権に対し、これまで市場は金融緩和、財政出動、国民への給付による消費の拡大、インフラ投資による経済成長率の押し上げという、明るい面ばかり焦点を合わせてきました。

一方で増税については目をそらしてきた印象があります。明るい面はほぼ市場に織り込まれていますが、暗い面はあまり織り込まれていないと思われます。

不正選挙に抗議したトランプ支持者らが連邦議会議事堂を占拠し、7日にフェイスブックがトランプ大統領のアカウントを停止し、8日にツイッターが同大統領のアカウントを永久停止して以来、これら企業の株価は下落傾向が続いています。

株価はバブル状態にあります。CAPEレシオは30倍を超えており、これは2001年にブッシュ氏が大統領に就任した以来の割高状態です。いずれもテクノロジー銘柄の株高がバブルを引き起こした点で共通しています。

ブッシュ氏のときはすでにインターネットバブルの崩壊は始まっていましたが、大統領就任後1年半程度、崩壊は続きました。

ブッシュ氏が大統領選で勝利した2000年の米議会選挙の結果議席は、上院が「共和党50:民主党50」、下院が「共和党221:民主党212」でした。

今回の結果議席は、上院が「民主党50:共和党50」、下院が「民主党222:共和党211」でした。お互い、極めて議席数の配分が似ています。なんたる偶然…

バイデン氏が大統領に就任したら、マーケットはどのように動くのでしょうか。俯瞰してみると、あまり良い風が吹いているようには見えませんが…