日本国債市場で存在感高まる海外勢と絶対に利上げできない植田日銀総裁

先週の日経新聞で、海外投資家の日本国債(国庫短期証券含む)保有額が今年3月末時点で邦銀を超えたとの報道が出ました。

日本国債の保有、海外投資家が邦銀超え 円安で投資有利
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2410E0U3A720C2000000/

最新の財務省の報告書によると、海外投資家の日本国債保有額は181.2兆円です。発行済み日本国債の総額1240兆円のうち14.6%を保有しており、比率13.0%の邦銀との差はますます広がっています。

海外投資家は日銀の大規模金融緩和政策のなかで日本国債の保有を増やしてきました。

量的金融緩和とマイナス金利政策により、円の調達コストが著しく下がりました。これにより海外勢は実質的に「高利の米ドルを貸して低利の日本円を借りる」取引である為替ヘッジを用いた、日本の短期国債(国庫短期証券)への投資を増やしてきました。

日銀のゼロ金利、マイナス金利政策で短期国債の利回りはゼロ、マイナスになりました。しかし為替ヘッジを通じて海外勢は高い上乗せ金利を得られたので、トータルでプラスの利回りで運用でき儲けられたのです。

日銀の大規模緩和政策とともに米ドルのヘッジコスト(海外勢が為替ヘッジで受け取れる金利)は上昇を続け、2018年には一時3%を超えました。

その後米ドルヘッジコストは2021年頃にかけて急落しましたが、2022年にFedが利上げを開始して日米金利差が拡大し始めたことで、米ドルヘッジコストは急騰し6%超にまで達してしまいました。

ユーロのヘッジコストも、ECBが利上げを続けて日本との金利差が開いてきたことから、4%台にまで急上昇しています。

いまは海外勢がますます為替ヘッジあり日本国債投資で安全に高い利回りを得られる状況にあるのです。

もし日銀が利上げに転じてしまえば、ヘッジコスト(海外勢にとっての上乗せ金利)が縮小するわけですから、海外勢は日本国債を売り浴びせてきます。

実際、昨年12月に当時の黒田総裁が金融緩和策を修正し、金融引き締め方向を強めるのではないかとの懸念が広がり、今年1月に外国人投資家は過去最大の4兆1190億円の日本国債を売り越しました。

海外勢は日本国債の現物を14.6%保有するだけではありません。海外勢の日本国債先物の買いポジションは市場全体の71.4%に達しています。

利上げに反応した海外勢が本気で日本国債を売り始めれば、円金利は急騰してしまいます。そんなことになれば日本の金融市場は大混乱に陥り、日本政府はデフォルトという断崖絶壁目掛けて爆走していきます。

だから植田日銀総裁はマイナス金利解除が精一杯、その先の利上げは絶対に出来ないのです。そんなことを決定したら日本政府の財政破綻、日本国消滅を引き起こした「戦犯」として歴史に名を残すことになりますから。

(ちなみに日銀の利上げは、日本の生保会社などによる大量の外債売りを引き起こし、欧米の金融市場を崩壊させる引き金にもなり得ます。)

為替ヘッジコストが急上昇していることで、日本の生保会社のなかにはヘッジなしでの外債運用を増やす方針を決めたところが出てきています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB207H20Q3A021C2000000/

ここ数年、海外証券を運用する投資ファンドの運用成績は為替ヘッジなしが為替ヘッジありを大きくアウトパフォームしており、今後ヘッジなしで運用するファンドの比率が増えるかもしれません。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00004_W3A021C2000000/

最近の円キャリートレードの加速は、為替ヘッジコストが急拡大していることのコインの裏に当たります。

為替ヘッジなしの外債運用の増加、円キャリートレードの加速、いずれも円安を進展させていきます。

円安の進展が財務省にとってメリットだらけであることは、「今日のつぶやき~79言目~」もしくはブログ記事で話したとおりです。

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