エルドアン大統領はどこまでハト派なのか?

[2021/04/15 日本経済新聞]トルコ中銀が金利据え置き、新総裁の下で初会合-タカ派薄れリラ下落

トルコ中央銀行は15日、カブジュオール新総裁の下での初の金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを決めた。

金融政策委員会は1週間物レポ金利を19%で維持した。ブルームバーグの調査に答えたアナリストの大半が据え置きを見込んでいたが、HSBCとキャピタル・エコノミクスはそれぞれ0.5ポイントと2ポイントの利下げを予想していた。

予想以上の利上げに踏み切った前任者が更迭され、エルドアン大統領に指名されたカブジュオール総裁は利下げを迫る圧力にさらされているが、これまでのところ緩和を急がない姿勢を示していた。

エルドアン大統領は政策金利を下げればインフレ率も下がるという独特の理論を何年も固持するハト派とみなされており、近年、利上げを行ってきた中央銀行総裁を相次いで解任してきました。

先月22日、エルドアン大統領は就任からわずか4カ月でアーバル前総裁を解任しました。

アーバル前総裁は、インフレ率が14%超に急上昇した昨年11月に就任し、インフレ鎮静化と通貨防衛のため、4ヵ月のあいだ、政策金利を10.25%から19%に引き上げ、市場関係者から評価を勝ち取っていました。

解任により市場はインフレ懸念を急激に高め、対ドルでリラは10%超急落しました。

しかし本当にエルドアン大統領は市場が考えるようにハト派なのでしょうか。

2019年7月にエルドアン大統領が解任したチェティンカヤ氏は利下げに消極的でしたが、2020年11月に解任したウイサル総裁は利上げに消極的でした。

先月解任されたアーバル氏は、財務大臣時代の2018年に一度エルドアン大統領に解任された経験があります。緊縮財政を支持していたためです。

このとき、後任にはエルドアン大統領の義理の息子で、財政出動を支持するアルバイラク氏が、大統領により任命されました。

昨年11月、エルドアン大統領はタカ派であるとわかっているアーバル氏を中銀総裁に任命しました。同月、アルバイラク氏は健康問題を理由に財務大臣を辞任しました。

昨年11月はトルコのインフレ率が一段と強まり始めた月でした。

これら事実から、エルドアン大統領が根っからのハト派であるとは考えにくいのです。

トルコのインフレ率と政策金利の推移を見ると、近年、インフレ率の上昇に応じて政策金利が引き上げられた一方、インフレ率が下がり始めてもしばらく様子見をし、インフレ鎮静化を確信した時点で利下げをするという、健全な金融政策がとられてきました。

2018年にインフレ率が20%を超えた時、政策金利も一時20%超まで引き上げられました。米国の高インフレを止めたポール・ボルカー元Fed議長を彷彿とさせる強烈な利上げを敢行してきたのが実情です。

エルドアン大統領の金融政策をめぐる発言は、パフォーマンスも多分に含まれると考えています。

あれだけ表向き利下げを強調しているのは、最終的にトルコが高インフレ状況から抜け出し、経済が安定成長段階へと向かい始めた場合の成果を強調し、支持を集め、自身の権力基盤を強化するための布石だと思われます。