市場バブルに陶酔する米国、崩壊に備える中国

ワクチン接種が進み、新規感染者数が大きく減少したことで、米国も中国に続いて大きな経済成長を享受できる状況になっています。
 
そんな両国ですが、金融面におけるスタンスが真逆であることにお気づきでしょうか。
 
米国は、今年に入り景気回復が目に見える形で現れたことで、かなり浮かれています。
 
急速な経済回復でインフレ懸念が続いています。金融緩和マネーが米国や世界の金融市場に流れ込み、市場バブルは現在も継続中です。
 
それにも関わらず、Fedはインフレは一時的だという見方を崩していません。
 
他方、いち早くパンデミックを収束させ、経済回復が進んできた中国は、今年に入り慎重さを増しています。
 
昨年、新型コロナパンデミックにより悪化した経済を下支えするために、中国政府は銀行に積極的な融資を要請し、年間で3兆ドルという記録的な貸し出しを行いました。
 
しかし経済が早期に回復し、今年は8%程度の経済成長が見込まれるなかで、今年に入り金融緩和縮小・引き締めに着手し始めています。
 
中国当局は不動産向け融資や個人向け住宅ローン、フィンテックによる融資に制限を設け始めました。
 
中国の融資ペースの鈍化は、クレジットインパルスが急減してマイナス圏に入ったことに現れています。
 
中国企業は今年から23年にかけ、満期を迎える発行済み社債の規模がピークを迎え、総額2.1兆ドルあります。
 
これまで中国では、利払いに窮した国有企業に対して中央・地方政府が全面的に資金支援してきました。
 
しかし今回習近平指導部は、支援を縮小し、ある程度のデフォルトや倒産を容認する構えです。
 
 
先月終わりに中国人民銀行は、約14年ぶりに外貨の預金準備率の引き上げを発表しました。米ドルの流通や融資を規制する動きです。
 
その前に中国当局は、中国の銀行や企業による、海外からの資金調達の上限額を引き下げました。
 
中国は米ドルの調達・供給の両方において、制限を強めたことになります。
 
その代わり、中国当局は、クロスボーダー取引における人民元融資の上限額を引き上げました。
 
中国の銀行はアジアやアフリカの新興国に米ドルを貸し出してきました。
 
正確な規模はわかりませんが、数千億ドル~1兆ドル規模の海外への米ドル融資残高が残っている可能性があります。
 
コロナ禍でアフリカの途上国で債務不履行が相次ぐなど、海外への米ドル融資が焦げ付くリスクが高まっています。
 
現在、中国はG7各国と共同で、年末まで新興国・途上国の債務返済猶予措置応じています。
 
しかし単なる先送りのため根本的な解決にはなりません。G7内には今年で返済猶予措置を打ち切るべきとの声もあります。
 
返済猶予措置打ち切り後、融資先の新興国・途上国の債務不履行が相次ぎ、融資元の中国の銀行がダメージを受け、中国経済に影響が波及する可能性はゼロではありません。
 
新興国・途上国への融資を抑制し、中国経済へのダメージを少しでも減らすという意味も込めて、預金準備率を引き上げたのでしょう。
 
それと同時に、新興国・途上国への人民元融資を増やし、既存の米ドル融資の一部を人民元融資に切り替え、世界における人民元の存在感を強めたいのでしょう。
 
 
今年3月、中国金融監督トップが、海外の金融資産バブルの崩壊を懸念する発言をしました。
 
銀行貸出の縮小、自国企業のデフォルト容認、米ドルの調達・融資制限は、この発言内容に沿うものです。
 
つまり、海外の金融バブルの崩壊は近く、それが訪れる前に、中国経済が好調なうちに、早めに将来の禍根を取り除き、ハードランディングを防ごうとしているのです。
 
いざ海外バブルが崩壊し、米国が大混乱に陥っている隙に、テクノロジー等の分野で世界的イニシアチブを取り、人民元の国際通貨としての地位を高め、米国を抜き世界最大の経済大国にのし上がろうとしているのでしょう。
 
中国は世界的な金融危機をテコに、大きな飛躍を遂げようと準備しているように見えます。まぁ、企業を中心に中国はGDPの270%の債務を抱えており、確実にソフトランディングできるかどうかはわかりませんが。
 
★ロシア政府系ファンドが、米ドル及びドル建て資産をすべて売却すると発表しましたね。
 
中露は本気で米国のバブル崩壊を懸念しており、アジア通貨危機のときのような被害を受けて共倒れすることだけは避けようと、事前に対策を講じているようです。