いま中東では、パレスチナのガザ地区と、イスラエル・レバノン国境付近を中心に、イスラエルとイスラム武装組織による紛争が起きています。
イスラエルのバックには米国がおり、イスラム武装組織ハマスとヒズボラにはイランがバックについてます。核合意をめぐり米国とイランは対立しています。
イスラエル支持を表明しているのは、米国の他に英国、フランス、ドイツ、イタリアの欧州4カ国です。G7のうち日本とカナダを除く5カ国に一致します。
今春に中国を仲介にイランと外交関係を正常化したサウジアラビアを含むアラブ諸国はパレスチナ支持表明しています。ロシアと中国もイスラエルを批判し、パレスチナ寄りとなっています。
よって現在の中東での紛争をより広い視点で見ると、米欧vs拡大BRICSという構図が見えてきます。
対立関係をみるときの一つの重要な視点を、両者の共通点、言うなれば「コインのふち」を見ることです。
今回の対立構図における「コインのふち」は、「米欧側の親玉である米国も、ロシア、サウジ、イランをはじめとした拡大BRICS側の多くの国々も、エネルギー生産輸出国である」ことです。
イスラエルとイスラム武装組織の紛争が長引き、中東情勢が泥沼化すればするほど、世界のエネルギー供給網は不安定になりやすくなり、石油・ガス価格は値上がりしやすくなり、彼らの経済的利益は増していきます。
欧州の先進国が米国とともにイスラエル支持に回り紛争を煽る側に立つのは、愚行としか言いようがありません。
欧州はロシアのウクライナ侵攻を非難し、ロシアに経済制裁を科した結果、ロシアからの石油・ガス輸入が停止となり、代わりに中東産の石油・ガス調達を増やさざるを得なくなりました。
インドが大量に輸入したロシア産の安い原油をもとに生産した石油製品も、欧州に流れています。
こうした中東産やインドからの石油・ガスの大半はスエズ運河を経由して欧州に運ばれます。
スエズ運河を通行する石油タンカーをはじめとした船舶数は増え続けており、昨年は23,851隻と前年から15.5%増え過去最高を記録しました。
通過する船舶の増加と度重なる通行料金の値上げで、欧州に向かう石油・ガスの輸送コストは増え続けています。
そこにスエズ運河からほど近いガザでの紛争が加わり、通航に何らかの支障が生じるリスクがくすぶり始めています。
欧州の西側諸国はウクライナ戦争でも、今回の紛争でも、米国に追随してインフレを酷くすることばかりしています。そこに君臨するトップたちは売国奴集団としか言いようがありません。
その点、イスラエル支持を表明しない日本政府の方がまだマシです。とはいえ、日本にできることは一切ないという悲しい現実があります。
現在の中東での紛争はイスラエルvsイランという構図でもありますから、イランがホルムズ海峡の船舶の航行を制限したり封鎖するリスクがあります。
今年に入り複数回にわたり、ホルムズ海峡を通過中の石油タンカーがイランに拿捕されました。米国によるイラン石油貨物の拿捕や、対イラン経済制裁への報復としてです。
すでにホルムズ海峡界隈の情勢はよろしくないわけです。日本が調達する石油の8割以上はホルムズ海峡経由ですから、情勢次第で日本のエネルギー安全保障は呆気なく崩壊します。
ウクライナ戦争が始まってから、米国は国家備蓄を2億バレル以上放出したことで、世界の石油在庫は低迷が続いています。世界の産油国は油田開発のやる気ほぼゼロです。
第3次石油危機の舞台はほとんど整っています。あとは為政者たちのやる気次第です。
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