石油供給を巡る状況が再び不透明になりつつあります。
原油価格は米国のシェールオイル生産量の拡大、OPECプラス協調減産の綻び、世界景気悪化の懸念から下落が続いていました。
ガザ地区でのイスラエル・パレスチナ戦争は地域紛争レベルであると市場は考え、原油価格には反映されてきませんでした。
ところが先週にイエメンの反政府勢力フーシ派によるドローン攻撃、ミサイル攻撃により、紅海を航行していた2隻の船舶が被害を受けました。
西側諸国の船会社は次々と紅海の航行の一時停止を発表し、国際物流の不安定化や輸送コスト上昇がにわかに心配される事態となっています。
米軍はミサイル駆逐艦「トーマス・ハドナー」を紅海に派遣していましたが、フーシ派の攻撃に対応し切れなかったことになります。
そこで米国は有志連合を結成し、紅海での軍事活動を強化すると言っています。いやいや、中東情勢はますますキナ臭くなってしまっています。
紅海の商船保護へ有志連合、10カ国超が参加 フーシ対処
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN190A80Z11C23A2000000/
イスラエル・パレスチナ戦争が紅海やスエズ運河を経由する輸送に影響を及ぼす可能性があることは以前に指摘しましたが、それが現実化しています。
第3次石油危機の舞台はほとんど整っている?
https://www.avocado-fes-thought.com/blog/20231024-oil/
紅海が危険な水域となったことで、欧州における石油を始めとした物資の輸送コストや輸送時間が増えることは必至です。
ウクライナ戦争でロシア産の石油・ガスを輸入できなくなぅた欧州は、インドからの輸入を増やしてきました。
インドが欧州に向かうはずだった石油・ガスをロシアから安値で大量購入し、現地で石油製品をつくり、それを欧州に輸出していたのです。
インドやサウジからの欧州への石油輸送が紅海・スエズ運河経由から喜望峰経由に切り替えられると、輸送距離は4割前後長くなります。
もし輸送コストや輸送時間の増加が嫌であれば、欧州は米国からのエネルギー輸入を増やすしかありません。
対米従属を続けた結果がこのザマです。欧州各国は本当に情けない。あっ、日本も同じか。
個人的に気になるのは、サウジアラビアに悪影響が飛び火しないかどうかです。
サウジアラビアは紅海に面しており、イスラエルとイエメンの間に位置し、紅海情勢が悪化するとサウジにも影響が出る恐れがあります。
サウジとフーシ派との関係は微妙です。昨年4月に暫定停戦で合意したものの、今年10月にフーシ派がイスラエルに向けてサウジの上空を通過するミサイルを発射し、うち一発をサウジ空軍が迎撃した事例があります。
イエメンとの国境付近でサウジ軍とフーシ派の戦闘が起こり、サウジ軍兵士4人が死亡した事例も起きています。
有志連合に湾岸諸国の一つであるバーレーンが入っていることも不気味です。バーレーンもまた今年9月、サウジ・イエメン国境付近でフーシ派のドローン攻撃を受けて軍人2名が死亡しました。
もし戦争が激化してイランが参戦する事態となり、ホムルズ海峡で紛争が勃発するようなら、サウジアラビアの周囲は戦地だらけになります。
サウジアラビアは戦争に巻き込まれず、自国の人々や油田・製油所を守り切ることができるでしょうか?
★石油銘柄への投資については、アボマガ・エッセンシャルのNo.275(10月23日配信)、No.282(12月18日配信)に書いています。アボマガ・エッセンシャルにご登録されるとお読みいただけます。
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