今年に入り、米長期金利の上昇が市場を動揺させてきました。
米長期金利の上昇は、ワクチン普及や景気刺激策による、インフレ期待の高まりと景気回復への期待によるものと言われてきました。
これが金利上昇の基底にあることは間違いないでしょうが、投資家の売買面からの金利上昇理由はよくわかっていませんでした。
最近、米長期金利の急上昇を招いた犯人が判明しました。日本の銀行です。
以前当ブログにて、2月26日までの2週間、日本人投資家は約3兆6000億円もの外債を売り越しことを書きました。
今年に入ってから3月に至るまで、米国債先物の下落は東京セッションに集中していたこと、米国債先物価格の累積下落の85%は夜間セッションで発生していたことが判明しました。
→Morgan Stanley Identifies The Source Of Massive Treasury Selling
長期金利が上昇し米国債価格が下がる中、年度末を控え、日本の銀行は損切りやポジション調整をしていた模様です。
米長期金利の推移をみると、3月19日をピークに下げはじめ、現在はおよそ1.6%です。

ヘッジ付き10年物米国債利回りは、米国債利回りの上昇で昨年夏にプラス圏に入り、現在は2015年以来の高い水準になっています。
日本人投資家によるヘッジ付き米国債投資妙味は高い状況となっています。
米長期金利の上昇に関して、もう一つ、Fedが補完的レバレッジ比率の規制緩和措置を3月末で終了することによる米国債売りの懸念がありました。
細かいことは省きますが、規制緩和措置を終了することで、米国大手銀行の補完的レバレッジ比率が規定された下限である5%を下回ってしまい、それを防ぐために米国債を売却せざるを得ないと心配されたのです。
しかし米国大手銀行の補完的レバレゥジ比率は昨年末時点でどこも7%程度ありました。規制緩和措置導入前には6%以上あり、下限を大きく上回っていました。
規制緩和措置の撤廃で仮に下限を下回っても、優先株の発行、配当や自社株買いの規模削減、貸付の抑制など、米国債売却以外の対応策はあります。
補完的レバレッジ比率をめぐる米国債の大量売却の可能性はどうも低そうです。
最後に、米国政府は昨年に必要以上の米国債を発行し手元現金を増やしたため、4-6月期の新発米国債発行額は昨年の四半期平均発行額の1/10未満になる見通しです。
米長期金利の急上昇は一服したようです。